エビリファイの半減期・効果時間とそこから分かる4つの事

エビリファイは抗精神病薬という種類に属し、統合失調症や双極性障害、うつ病・うつ状態の治療に用いられています。

エビリファイの半減期は約61時間ほどと報告されており、効果時間は長いお薬です。

半減期は、内服したお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、お薬の作用時間を知るひとつの目安になる値です。お薬の半減期が分かると、そこからお薬の様々な特徴を知ることが出来ます。

エビリファイの半減期から分かる事、また、他の抗精神病薬の半減期との違いについてなど、エビリファイの半減期について詳しくみていきましょう。

1.エビリファイの半減期はどのくらいか

半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。

血中濃度が半分まで落ちると、お薬の効果はある程度消失すると考えられいるため、半減期はそのお薬の効果時間・作用時間を知るひとつの目安になっています。厳密に言えば半減期と作用時間は異なるものですが、おおまかには「半減期」≒「作用時間」と考えてよいのでしょう。

お薬が身体から抜けていくスピードには個人差があるため、半減期はあくまでも一つの目安に過ぎません。しかし、お薬を選択する際の指標になる数値なのです。

エビリファイは、服薬してから3.5~4時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約61時間と報告されています

エビリファイの添付文書には、半減期について次のように書かれています。

【日本での報告】

エビリファイ6mgを空腹時に単回投与した時の半減期:約61時間
エビリファイ3mgを食後1回、14日間投与を続けた時の半減期:約64.59時間

【海外での報告】

エビリファイ15mgを空腹時に単回投与した時の半減期:約75時間
エビリファイ15mgを14日間投与を続けた時の半減期:約75時間

エビリファイの半減期は長く、2日以上です。そのため、エビリファイの作用時間は長く、1日1回の投与でも十分に効果が持続します。

2.抗精神病薬の半減期一覧

抗精神病薬はいくつかの種類があり、半減期もそれぞれ異なります。主な抗精神病薬の半減期を比較してみると下図のようになります。

抗精神病薬半減期
コントミン2.5時間(第1相)
12時間(第2相)
セレネース24時間
リスパダール4時間(主代謝物は21時間)
インヴェガ20時間
ロナセン12時間(反復投与で68時間)
ルーラン2時間(投与6時間まで)
6時間(投与6時間以降)
ジプレキサ28.5時間
セロクエル3.5~6時間
エビリファイ61時間

抗精神病薬によって、半減期が様々であることが分かります。

半減期の長いお薬、例えばインヴェガやジプレキサ・エビリファイなどは、長く効くため1日1回の服薬で充分に効果が持続します。

反対に半減期の短いお薬、ここではルーラン、セロクエルなどは作用時間も短いため1日2回や3回服薬しないといけません。

実際は半減期だけでお薬の作用時間が判断できないお薬もあり、2相性の半減期を持つもの(途中で血中濃度が落ちるスピードが変わる)、代謝物も活性を持っていてそれも効果に影響するものなどがあり、様々な条件が加わってお薬の作用時間は決まっていきます。

3.半減期から分かるエビリファイの特徴

エビリファイの半減期は約61時間です。ここから分かるエビリファイの特徴について紹介します。

半減期が分かると、

  • 何時間くらい効果が続くお薬なのか
  • どれくらいの服薬間隔で飲むべきお薬なのか
  • 何日くらい飲み続ければ、血中濃度が安定するのか
  • 離脱症状が起きやすい時期

といったお薬の情報がある程度分かります。ひとつずつ見ていきましょう。

Ⅰ.何時間くらい効果が続くお薬なのか

エビリファイの半減期は約61時間です。半減期は必ずしも作用時間と一致はしませんが、ある程度の相関性はあります。そのため、エビリファイの効果は1日1回の服薬でも1日は続くと考えられます。

エビリファイのように半減期が長いお薬は、服薬間隔が長くても良いため、一見メリットが多いように見えます。もちろん、服薬する回数が少なくて済むのはメリットなのですが、反対にデメリットもあります。それは、お薬がなかなか身体から抜けないという事です。

例えば、エビリファイを内服して何らかの副作用が出てしまった時、その副作用は長く続いてしまう可能性があるという事です。

Ⅱ.どれくらいの服薬間隔で飲むべきお薬なのか

エビリファイを服薬すると、薬の効果が61時間程度続くと聞くと、「じゃあ毎日飲まなくてもいいのか?」と疑問に思う方もいらっしゃるかもしれません。

薬物動態から見れば2日に1回の服薬でも安定した効果が得られる可能性は確かにあります。しかし実際に2日に1回の投与にすると、飲み忘れの頻度が多くなるため、添付文書的には1日1回投与となっています。

実際、お薬を減薬の際に

「2日に1回服薬してください」
「3日に1回服薬してください」

と患者さんに指導する事がありますが、1日1回よりも服薬間隔が長くなると、途端に服薬コンプライアンスが悪くなることが臨床をしている実感として感じます。

*服薬コンプライアンス:患者さんが指示通りにお薬を服薬してくれること。

ほとんどの人は、1日単位のリズムで生活をしているため、そのリズム内の服薬間隔でないと、飲み忘れが多くなってしまうのでしょう。飲み忘れが多くなれば薬効も不安定になり、病気の治りも悪くなってしまいます。そのため、1日1回服薬が現実的には一番良いと思われます。

Ⅲ.何日くらい飲み続ければ、血中濃度が安定するのか

一般的にお薬は、血中濃度が一定になるようなペースで5~6回の反復投与を続けると、血中濃度は安定すると言われています。この血中濃度が安定した状態を「定常状態」と呼びます。

エビリファイの半減期を約61時間をすると、半減期61時間のこの薬を5~6回飲み続けると定常状態に達するという事ですので、エビリファイの服薬を始めると305~366時間後に定常状態に達するという事が出来ます。

これは12日~15日後ということになります。実際、エビリファイが定常状態に達するには「約2週間」と添付文書にも記載されています。ここから、エビリファイの服薬を始めてから、しっかりとした効果を得る濃度に達するまでには約2週間かかるという事が分かります。

ただし、実際は61時間置きに服薬するわけではありませんので、もう少し早く定常状態に達する事もあります。

Ⅳ.離脱症状が起きやすい時期

エビリファイのような抗精神病薬は離脱症状はほとんど起こさないお薬ですが、お薬に対する感受性が高い方などでは離脱症状が出現してしまう事もあります。離脱症状というのは、お薬の血中濃度が急に低下する事に身体が対応できずに生じてしまう症状の事です。

離脱症状は、お薬の血中濃度が最大値の半分以下になると出やすくなると言われています。そのため、半減期が来る前に次のお薬の服薬を行う事が望ましいと考えられています。

エビリファイで考えると、服薬61時間後以内に再度お薬を投与して血中濃度を再上昇させないと、離脱症状が出やすいということです。

実際はエビリファイで離脱症状を経験することはほとんどありませんが、エビリファイの服薬を止めたり忘れたりして、2~3日後に不調を感じたり、今までにない症状を感じる場合は、それは離脱症状の可能性があります。

4.半減期とは?

せっかくなので「半減期」について勉強してみましょう。

半減期というのは「おくすりの血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。

半減期はお薬の作用時間とだいたい一致するため、半減期が分かれば作用時間がだいたい推測できます。例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。

半減期イメージ

だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、それから徐々に落ちていきます。

このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、このお薬の半減期は「10時間」です。そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。

正確には半減期と作用時間の長さは完全に一致するわけではありません。実際は、おくすりを飲むとまずは血中濃度は上がり最高血中濃度に到達してそれから下がっていきますので、厳密に言えば最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。

もっと言えば、すべての人が、血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいます。

更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、そうなると作用時間を数値化することは不可能になってしまいます。

でも、「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。

細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと「だいたい半減期が作用時間と同じくらいだ」と考えていいのではないかと思います。

半減期はあくまでも目安で、絶対的な値ではないという事は気を付けてください。個人差はおおいにあります。お薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいます。となれば当然、お薬の作用時間も人によって違いがあります。