エビリファイのうつ病における4つの使い方

エビリファイは、統合失調症や双極性障害(躁うつ病)に対して使用されていますが、「うつ病・うつ状態」に対しても効果を認めるお薬です。

エビリファイは2006年に発売されましたが、「うつ病・うつ状態」に対しての適応を取得したのは2013年です。そのため、エビリファイがうつ病にも使えるお薬だというのはまだ広くは浸透していないようです。実際に「私はうつ病なのに、なぜエビリファイが処方されたのでしょうか?」という質問を頂くこともあります。

抗うつ剤の効果が不十分であった時、次の一手としてエビリファイを検討するのは有効な方法です。

今日はうつ病に対してエビリファイを使うことについて、お話したいと思います。

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1.うつ病におけるエビリファイの位置づけ

エビリファイの添付文書の「効能または効果」の項目を見ると、うつ病への使用については次のように記載されています。

うつ病・うつ状態(既存治療で十分な効果が認められない場合に限る)
選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)又はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害剤(SNRI)等による適切な治療を行っても、十分な効果が認められない場合に限り、本剤を併用して投与すること。

エビリファイは、2013年よりうつ病・うつ状態に対しての適応を取得しました。

しかし添付文書の記載の通り、「既存治療で充分な効果が認められない場合に限って」使用することが出来るという位置づけです。既存治療というのは、抗うつ剤による治療と言い換えても良いでしょう。

つまりSSRI・SNRI・NaSSAなど、うつ病治療の第1選択となっている抗うつ剤をまずは使用して、それでも効果不十分の場合は、エビリファイを検討しても良いですよ、という意味です。うつ病・うつ状態に対して、最初からエビリファイを使うことは認められていません。

SSRI:選択的セロトニン再取り込み阻害薬。商品名としてはルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロなど

SNRI:セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬。商品名としてはトレドミン、サインバルタなど

NaSSA:ノルアドレナリン作動性・特異的セロトニン作動性抗うつ薬。商品名としてはリフレックス、レメロンなど

また、その際は既存の抗うつ剤に対してエビリファイを「併用」することが原則になります。エビリファイを単剤でうつ病に用いても効果は望めますが、添付文書上認められているのは、既存治療薬への「併用」になっています。

うつ病・うつ状態におけるエビリファイの位置づけというのは、

抗うつ剤で効果が不十分であった時に追加を検討する第2選択薬

ということになります。

2.エビリファイはなぜうつ病に効くのか?

エビリファイは元々は統合失調症や双極性障害に使われていたお薬です。このお薬がうつ病・うつ状態にも効くというのは、どういうことでしょうか。

一体どのような機序でエビリファイはうつ病を改善させるのでしょうか。

まずは添付文書をみてみましょう。

作用機序

アリピプラゾール(エビリファイ)は、ドパミンD2受容体部分アゴニスト作用、ドパミンD3受容体部分アゴニスト作用、セロトニン5-HT1A受容体部分アゴニスト作用及びセロトニン5-HT2A受容体アンタゴニスト作用を併せ持つ薬剤である。明確な機序は不明であるが、これらの薬理作用が臨床における有用性に寄与しているものと考えられている。

明確な機序はなんと「不明」と書かれてしまっています。むむむ・・・。

しかしこれで何の説明にもなりませんので、「こういった機序が抗うつ作用をもたらしているのではないか」と現時点で考えられているものについて紹介させて頂きます。

Ⅰ.ドーパミンを増やしてくれる

エビリファイの特徴は、ドーパミン受容体に対する部分アゴニストであるということです。これは分かりやすく言うと、

ドーパミンが多いときにはドーパミンを減らしてくれ、ドーパミンが少ない時にはドーパミンを増やしてくれる

という作用です。

うつ病・うつ状態では、ドーパミンは少なくなっていると言われており、そのためエビリファイは脳のドーパミンを増やす方向にはたらきます。

脳におけるドーパミンの役割には様々なものがありますが、気分に関係する点でいうと、ドーパミンは意欲や楽しみに関係すると考えられています。

うつ病では、ドーパミンをはじめとしたモノアミンが減少していると考えられています。特に、ドーパミンが減少していると、意欲低下や楽しむ力が低下していることが考えられるため、エビリファイでドーパミンを増やしてあげると、意欲改善、楽しむ力の改善が期待できます。

Ⅱ.セロトニンを増やしてくれる

エビリファイにはセロトニン(5-HT)1A受容体部分アゴニスト作用というものがあります。

これはセロトニン受容体を部分的に刺激してくれるというものです。セロトニン1A受容体の刺激は、抗うつ作用・抗不安作用があることが報告されており、うつや不安の改善に役立ちます。

エビリファイのこの作用も、うつや不安を改善させていると考えられます。

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3.エビリファイをうつ病に処方するのはどんな時?

基本的にエビリファイは、うつ病に対して最初から用いるお薬ではありません。

厳密に言えば、ドーパミン系の症状が目立つ方には最初から投与を検討することもありますが、少なくとも添付文書上は認められてはいません。

そのため、うつ病の患者さんに対していきなりエビリファイを処方する、ということはほとんどありません。

しかし、うつ病にエビリファイが用いられるケースは少なくありません。エビリファイをうつ病に用いる判断は、医師によってそれぞれ考え方があるため、「こういったうつ病にはエビリファイが効く!」と明確に決まったものはありませんが、ここでは私見も含めてになりますが「エビリファイを処方されるのはこんな時」というものを紹介します。

Ⅰ.抗うつ剤のみでは改善が不十分

うつ病に対して、用いられるおくすりはやはり抗うつ剤が基本です。

抗うつ剤にも色々な種類があります。

新規抗うつ剤と呼ばれる、SSRIやSNRI、NaSSA。そして比較的古い抗うつ剤である三環系抗うつ剤や四環系抗うつ剤などが代表的な抗うつ剤です。

うつ病に対しての薬物療法を行う場合は、まずはこのような抗うつ剤から始めるのが原則です。

しかし、抗うつ剤をいくつか試してみても十分な効果が得られない場合もあります。

この場合、「増強療法(Augmentation therapy)」と言って、抗うつ剤に少量の抗精神病薬や気分安定薬、甲状腺ホルモン剤などを併用する方法があります。

エビリファイは抗精神病薬ですので、この増強療法に使われます。

エビリファイは抗精神病薬には属しますが、うつ病に対しての適応を持っていますから、増強療法として使いやすいお薬です。

抗うつ剤だけでは十分な改善が得られない場合は、増強療法としてエビリファイも検討されます。

Ⅱ.快楽・楽しみなどの改善が乏しい

エビリファイの一番の特徴は、ドーパミン受容体に対する部分アゴニストであり、「ドーパミンを調整する作用がある」ことです。

かんたんに言うと、脳のドーパミンが少ない部位ではドーパミンを増やしてくれ、ドーパミンが多い部位ではドーパミンを減らしてくれます。うつ病では脳のドーパミンが少なくなっていると考えられているため、ドーパミンを増やす方向に働いてくれます。

ドーパミンは、意欲や楽しむ力の改善に効果があると考えられています。そのため、

・楽しみが感じられない
・興味が持てない
・やる気が出ない

などの症状が目立つうつ病の方にはエビリファイが効果を示す可能性があります。

Ⅲ.非定型うつ病・新型うつ病

非定型うつ病や「新型うつ病」と呼ばれる疾患は、一般的なうつ病と比べてドーパミン系の問題が大きいと指摘されています。

実際にこれらのうつ病にはSSRIなどのセロトニン系を増やすお薬があまり効果がないことが知られており、MAO阻害剤などのドーパミン系も増やしてくれるお薬が効くことが報告されています。

(MAO阻害剤は副作用の問題で、日本ではうつ病に対して使用できません)

実は抗うつ剤の中で、ドーパミン系に作用するお薬というのは少ないのです。セロトニンを増やしたり、ノルアドレナリンを増やす抗うつ剤はたくさんあるのですが、ドーパミンを主に増やしてくれる抗うつ剤は、現在の日本には無いと言ってもいいでしょう。

抗うつ剤の中に、多少ドーパミンを増やす作用を持つと報告されているものがないわけではありませんが、あくまでも「多少」です。

エビリファイは主にドーパミンに作用するお薬という点で、ドーパミン系に問題があると考えられている病態には心強いお薬です。

Ⅳ.双極性障害や統合失調症の疑いもある

精神疾患は、血液検査などの明確に診断できるツールに乏しいため、最初のうちは診断が確定できないということがあります。

一見落ち込んでいて、うつ病のように見えていたけど、経過中に急に躁状態になって双極性障害だと分かった。こういうことは精神科医なら誰もが一度は経験することです。

現在はうつ病として診断しているけども、双極性障害や統合失調症の可能性もありうる、というケースでは抗精神病薬を併用するケースがあります。

エビリファイは使用する用量によって、統合失調症・双極性障害・うつ病に対してそれぞれ効果を認めますので、診断ははっきりと確定できない場合には使いやすいといえます。

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