ヒステリー球(咽喉頭異常感症)は、喉の詰まり感・異物感・違和感といった症状を認めるものの、内視鏡などで喉の検査をしても何の異常も見つからないという疾患です。
その原因は食道の交感神経のバランスが崩れることで、それによって食道が締め付けられるためだと考えられています。
ヒステリー球以外でも喉の詰まりを感じる疾患はあります。喉や食道の疾患(喉頭癌・食道癌など)では喉に何らかの症状が出る可能性が高いでしょう。しかし、両者の症状に違いなどはあるのでしょうか。
ここではヒステリー球に特徴的な症状を紹介していきます。
両者の鑑別を正確に行うためには医師の診察を受けるしかありませんが、これからお話する症状に多く当てはまる場合はヒステリー球の可能性が高いと言えるでしょう。
1.喉の違和感・異物感・詰まり感
ヒステリー球の症状で最も多い訴えが、「喉の詰まった感じ」です。似たような訴えとして
「喉に何か異物感がある」
「喉に違和感を感じる」
「喉に何かがひっかかっている感じがする」
などと訴える方もいます。
「喉にアーモンドのようなものが詰まっているような感じ」、「喉に魚の骨がひっかかっている感じ」と訴える場合もあり、患者さんは実際に喉に何かが出来ているのではという感覚を持つようです。
この喉の違和感・異物感・詰まり感は、ヒステリー球に必ずと言っていいほど認められる症状です。
2.飲み込みずらさ
ヒステリー球の原因は、ストレスや葛藤によって食道に分布する自律神経のバランスが崩れる事です。それにより食道の筋肉が過剰に収縮するため、食道が締め付けられ、詰まり感などを感じるのです。
患者さんは「喉」に異常がある感覚を持って病院を受診しますが、実際は「食道」に異常があるため、症状は食道に出ます。
その中で代表的なものが飲み込みずらさ(嚥下困難)です。
食道に異物があるわけではないため、実際に飲み込めないということはありません。全く飲み込めないわけではないけれども、飲み込みづらい感じを認める場合、それはヒステリー球の症状である可能性があります。
3.息苦しさ
喉の詰まり感から、「息がしずらい感じ」「息苦しさ」を訴える患者さんもいます。
しかし前項で書いたように、ヒステリー球は喉ではなく食道に生じているため、呼吸には直接影響は与えません。そのため、あくまでも息苦しい「感じ」がするだけであって、実際に体内の酸素濃度が低下したりするという事はありません。
酸素濃度は正常なんだけども、何か息苦しい感じがする、息が吸いにくい感じがする、という場合はヒステリー球の可能性があります。
4.その他、時に認める症状
その他にも、次のような症状を認める事があります。
ヒステリー球は食道の自律神経の乱れが原因であるため、胃や食道に関連する症状が見られる事が多いようです。
げっぷが出そうな感じ
飲み込んだ後に、げっぷが出そうな感じが続くと言う患者さんもいます。げっぷが必ず出るわけではなく、「出そうな感じ」です。
中には飲み込みずらさから飲み込みが不自然になってしまい、空気を多く飲み込んでしまうために、げっぷが実際に多くなってしまう方もいます。
吐き気
飲み込みずらさ、飲み込む際の違和感などから、吐き気を感じる方もいます。これも必ず吐くというわけではなく、あくまでも「吐きそうな感じ」です。実際に嘔吐することはほとんどありません。
咳
喉の違和感から、咳が多くなる事があります。ただし、風邪などの感染症ではないため痰がらみになる事はなく、乾いた咳になります。
5.ストレスや葛藤で増悪する
喉の違和感が出現する疾患はヒステリー球だけではありません。そのため喉の違和感が出たかからと言って、全てヒステリー球の診断になるわけではありません。
例えば、喉に腫瘍が出来たら喉の違和感が出現する可能性がありますし、扁桃が晴れても喉の違和感を感じるでしょう。このように身体疾患でも喉の違和感は出現することがあります。
身体疾患による喉の症状とヒステリー球の喉の症状で異なる一番の点は、ヒステリー球は「ストレスや葛藤で悪化する」という点です。これは両者を鑑別する上で非常に大きなポイントになります。
喉の身体疾患であった場合、ストレスがあろうがなかろうか、喉の違和感は常にあるはずです。そこに実際に異物があるわけですから当然です。しかし、ヒステリー球の場合はストレスや精神状態によって喉の違和感の程度が変化します。
・仕事がある平日は喉の違和感があるけど、休日は無くなる
・緊張するイベント(発表や会議)の前に、喉の違和感が強くなる
・睡眠不足や過労の時に喉の違和感が強くなる
ヒステリー球はストレスが高い時に生じやすいため、このような傾向を認めます。
まとめ
ヒステリー球の主な症状は、喉の違和感・異物感・詰まり感であるが、それ以外にも、
・飲み込みずらさ
・息苦しさ
などを認める事もある。
また、中には「げっぷの出そうな感じ」「吐き気・吐きそうな感じ」「咳」などを認めることもある。
ヒステリー球の原因はストレスや葛藤であるため、ストレスや葛藤が強い時・精神状態が悪い時に悪化しやすい傾向があり、症状が変動性であるという特徴がある。