ロナセンは抗精神病薬という種類に属し、主に統合失調症の治療に用いられているお薬です。
ロナセンの半減期は約10~16時間ほどだと報告されています。そのため1日1回服薬だと効果が安定せず、1日2回投与と決められています。
半減期とは、内服したお薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、お薬の作用時間とある程度の関連があることが知られています。半減期でお薬の作用時間が正確に分かるわけではありませんが、半減期からお薬の様々な特徴を知ることができるのです。
ここでは、ロナセンの半減期と他の抗精神病薬との比較、半減期から考えられるロナセンの使い方について紹介していきます。また、「半減期」の意味についても少し詳しくお話します。
1.ロナセンの半減期はどのくらいか
半減期とは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことです。血中濃度が半分まで減ると薬の効果がある程度消失してくるため、半減期はそのお薬の作用時間とある程度の関連があると考えられています。
そのため、厳密には半減期と作用時間は異なるものですが、おおまかには「半減期」≒「作用時間」と考えてよいのでしょう。
お薬が身体から抜けていくスピードには個人差があるため、半減期はあくまでも一つの目安に過ぎませんが、お薬を選択する際の指標になる数値です。
ロナセンは、服薬してから4時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は約10~16時間と報告されています(食後服薬の場合)。
1日は効果が持続せず、そのため1日2回に分けて服用する必要があります。
しかしロナセンは、服薬を続けていくと半減期が延長することが知られており、添付文書によると、10日間内服を継続すると半減期が約68時間に延長すると報告されています。
血中濃度が半分になるまでに68時間もあるのであれば、1日1回の服用でも大丈夫そうです。そのためロナセンは、反復投与を継続している方においては理論上は、1日1回服薬でも安定した効果が得られることが予測され、実際にこのような投与方法を取っている精神科医もいらっしゃいます。
1日2回よりも1日1回の方が飲み忘れも少なく、患者さんの負担も減るためです。
しかし、これは添付文書で推奨されている方法ではないため、独断では行わず、主治医の判断のもとで検討するようにしましょう。ロナセンの服薬方法は原則は「1日2回に分けて食後に服用」です。
2.抗精神病薬の半減期一覧
抗精神病薬はいくつかの種類があり、半減期もそれぞれ異なります。主な抗精神病薬の半減期を比較してみると下図のようになります。
抗精神病薬 | 半減期 |
---|---|
コントミン | 2.5時間(第1相) 12時間(第2相) |
セレネース | 24時間 |
リスパダール | 4時間(主代謝物は21時間) |
インヴェガ | 20時間 |
ロナセン | 12時間(反復投与で68時間) |
ルーラン | 2時間(投与6時間まで) 6時間(投与6時間以降) |
ジプレキサ | 28.5時間 |
セロクエル | 3.5~6時間 |
エビリファイ | 61時間 |
抗精神病薬によって、半減期が様々であることが分かります。
半減期の長いお薬、例えばここではインヴェガやジプレキサ・エビリファイなどは、長く効くため1日1回の服薬になっています。
反対に半減期の短いお薬、ここではルーラン、セロクエルなどは作用時間も短いため1日2回や3回服薬しないといけません。
実際は半減期だけでお薬の作用時間が判断できないお薬もあり、2相性の半減期を持つもの(途中で血中濃度が落ちるスピードが変わる)、代謝物も活性を持っていてそれも効果に影響するものなどがあり、これらはそういった条件も加わって作用時間が決まっていきます。
3.半減期とは?
せっかくなので「半減期」について勉強してみましょう。
半減期というのは「おくすりの血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。
半減期は、おくすりの作用時間とだいたい一致するため、半減期が分かれば作用時間がだいたい推測できます。例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。
だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、それから徐々に落ちていきます。
このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、このお薬の半減期は「10時間」です。そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。
正確には半減期と作用時間の長さは完全に一致するわけではありません。実際は、おくすりを飲むとまずは血中濃度は上がり最高血中濃度に到達してそれから下がっていきますので、厳密に言えば最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。
もっと言えば、すべての人が、血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいます。
更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、そうなると作用時間を数値化することは不可能です。
でも、「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。
細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと「だいたい半減期が作用時間と同じくらいだ」と考えていいのではないかと思います。
半減期はあくまでも目安で、絶対的な値ではないという事は気を付けてください。個人差はおおいにあります。お薬を分解する力が強い人もいれば弱い人もいます。となれば当然、お薬の作用時間は人によって違いがあります。