偏頭痛(片頭痛)の治し方と治療法。偏頭痛はどのように治すのか

偏頭痛(片頭痛)を持っている方は、日本国内でも800万人以上もいると報告されています。

多くの方が偏頭痛で苦しんでいるのが現状ですが、その治し方というのはいまだ十分に知られていません。

頭痛はとてもつらい症状なのですが、耐えればさしあたっては何とか生活できてしまいます。そのため、つい頭痛を我慢し続け、なかなか病院を受診しないという方も少なくないようです。

しかし、頭痛の弊害はみなさんが思っている以上に大きいことを知っておかなければいけません。

頭痛は仕事や家事、学業などの作業効率を低下させてしまいます。また、せっかくの楽しい時間もその時に頭痛が生じてしまえば台無しです。このように頭痛というのは生活の質を大きく低下させてしまうものなのです。

偏頭痛が生じたら、さしあたっては我慢すればいいと放置することはやめ、適切な対処を取るようにしましょう。頭痛の中でも特に偏頭痛は、原因を特定して適切な治療を行えば改善する可能性も十分ある疾患です。

今日は片頭痛の治療・治し方についてお話しさせて頂きます。

1.まずは原因に応じた対策を

偏頭痛は、様々な原因で生じます。原因がはっきりと特定できないこともありますが、偏頭痛の70~80%は原因があると言われているため、出来る限り原因を突き止めることは重要なことです。原因が分かれば、それを避けるだけで偏頭痛の改善が得られるからです。

偏頭痛(片頭痛)の原因」という記事で偏頭痛を生じやすい原因について紹介しました。

復習すると、

【精神的な要因】

● 精神的ストレス
● 不眠や過眠など睡眠の異常
● 疲労
● 生理などのホルモンバランスの変化

【環境要因】

● 天候や気圧の変化
● 温度変化
● まぶしい光
● 音(騒音)
● 臭い

【食事や嗜好品】

● 空腹
● 喫煙
● アルコール
● カフェイン
● チーズ
● ナッツ
●柑橘系(ミカン、レモンなど)
● チョコレート
● 経口避妊薬(ピル)などの薬

などでしたね。

これらの原因のうち、自分の偏頭痛に当てはまりそうなものがあれば、まずはそれを避けることが一番の治療になります。

例えば、睡眠不足が続いているのであれば、まずは睡眠をしっかり取るように生活を工夫して下さい。喫煙をすると頭痛が悪化する感じがあるのであれば、まずはタバコを減らすことからです。またアルコールや食べ物が原因であれば、それらをなるべく避けるようにしましょう。

中には、偏頭痛の原因だと分かってはいても避けられないものもあるでしょう。例えば、仕事による精神的ストレスが原因、という場合は、それが原因だと分かってはいても簡単には避けることはできません。しかし、「適度に休憩を取る」「職場の上司に相談してみる」など、避けられる範囲で避けることを工夫してみることは大切なことです。

2.規則正しい生活がやっぱり大切

前項で書いた偏頭痛の原因を見ると、生活習慣の乱れが原因となることがとても多いことに気づきます。

ということは、規則正しい生活を送ることが、偏頭痛予防の基本だということでが言えます。あらゆる疾患の予防・治療において、「規則正しい生活」というのは大切なのですが、偏頭痛でもそれは同じです。

● しっかりご飯を食べる
● しっかり寝る
● ストレスは抱え込みすぎない
● 適度に運動をする
● アルコール、タバコはなるべく控える

このような一般的に健康的と言われるような生活は、やはり偏頭痛の改善にも良いのです。規則正しい生活を心がけましょう。

3.薬物療法(発作時)

偏頭痛のお薬は、使う状況によって大きく2種類に分けることができます。

● 偏頭痛が起きた時に使うお薬
● 偏頭痛が起きないように予防するお薬

偏頭痛の薬物療法では、この2種類のお薬を状況によって使い分けていきます。

この記事では、主に頭痛が起きた時に使う発作止めのお薬について紹介します(予防薬は別の記事に書きますので、そちらをご覧ください)。

Ⅰ.アセトアミノフェン

アセトアミノフェンは、いわゆる「熱さまし」「解熱鎮痛剤」と呼ばれているものです。風邪で熱が出た時などによく処方されるお薬です。

その名の通り、解熱作用(熱を下げる)と鎮痛作用(痛みを取る)があります。

偏頭痛に特化したお薬ではなく、あらゆる痛みに対して使われているお薬で、市販の風邪薬にもよく配合されています。

後述するNSAIDsと似ていますが、NSAIDsよりも効果は弱いけど安全性は高いという特徴があります。作用機序もNSAIDsと似ています。アセトアミノフェンは、選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)2を阻害することで痛みを感じにくくさせ、鎮痛効果を発揮します。

【商品名】カロナール、アンヒバなど
【メリット】副作用が少なめ、安い
【デメリット】鎮痛効果は穏やか

Ⅱ.NSAIDs

これもアセトアミノフェンと同様に一般的には「解熱鎮痛剤」と呼ばれているお薬です。選択的シクロオキシゲナーゼ(COX)2の阻害作用を持ち、これが「痛み」を感じにくくさせる作用を持ちます。

アセトアミノフェンと同じく、偏頭痛に特異的な治療薬ではなく、「痛み全体に」効くお薬です。

アセトアミノフェンよりも強い鎮痛作用を持ちますが、長期間・大量に使い続けると胃潰瘍や胃出血などの副作用の危険もあるため、注意が必要です。また妊娠末期に使用することは禁じられていますので注意してください。

【商品名】バファリン、ボルタレン、ハイペン、ブルフェン、ロキソニン、セレコックスなど
【メリット】アセトアミノフェンよりも強い鎮痛効果、安い
【デメリット】長期使用で胃潰瘍などの副作用

Ⅲ.トリプタン製剤

偏頭痛に一番良く効くのは、このトリプタン製剤と呼ばれるお薬です。偏頭痛に対して非常に有効で、満足度も高いお薬です。

トリプタン製剤は、脳血管のセロトニン1B受容体という部分に作用することで、血管を収縮させるはたらきがあります。また、三叉神経のセロトニン1D受容体に作用することで神経ペプチドの分泌を抑え、血管を拡張させないようにします。

このお薬のデメリットは、とても高いことです。1錠900円くらいします(3割負担でも300円ほど)。

また、偏頭痛が起き始める初期に服薬しないと効果が少なくなってしまう、というのもデメリットで服薬するタイミングが非常に重要になります。

心臓疾患(狭心症や心筋梗塞など)、脳血管障害(脳梗塞など)、コントロールされていない高血圧、重度の肝障害の方は原則禁忌ですので、使用しないよう気を付けてください。

日本で現在処方できるトリプタン製剤には次の5つがあります。

それぞれ即効性や持続時間などがやや異なりますので、自分の偏頭痛の性状にあったものを主治医の先生に選んでもらってください。

商品名最高血中濃度到達時間半減期
イミグラン1.8時間2.2時間
ゾーミッグ3.0時間2.4時間
レルパックス1.0時間3.2時間
マクサルト1.0時間1.6時間
アマージ2.7時間5.1時間

(*最高血中濃度到達時間:お薬を飲んでから血中濃度が最大になるまでにかかる時間で、理論上は短いほど即効性がある)
(*半減期:血中濃度が最大になってから半分になるまでにかかる時間で、理論上は持続時間とある程度関連する)

【商品名】イミグラン、ゾーミッグ、レルパックス、マクサルト、アマージ
【メリット】偏頭痛に非常に有効
【デメリット】高い、発作初期に飲まないと効果がない

Ⅳ.制吐剤

本来は、胃炎などで使われる「吐き気止め」です。ドーパミン2受容体をブロックするはたらきがあります。直接、頭痛を抑える効果はありませんが、偏頭痛の随伴症状として多い悪心・嘔吐を防ぐことに優れます。

そのため、単独で使うというよりは、他の偏頭痛治療薬の補助薬として使うことが多いお薬です。

【商品名】プリンペラン、ナウゼリンなど
【メリット】吐き気を抑える効果に優れる
【デメリット】頭痛を直接抑える効果はない。あくまでも補助薬

Ⅴ.エルゴタミン製剤

以前は偏頭痛発作の治療薬としてよく使われていましたが、トリプタン製剤が発売されてからは使われる頻度が減ってきたお薬です。

血管収縮作用を持ち、これが偏頭痛に効果を示すと考えられています。

使われることが減ってきた理由はトリプタン製剤と比べて、効果がそこまで高くないこと、副作用が多めであることです。副作用としては嘔吐が多く、これは偏頭痛の症状としての嘔吐も増悪させてしまうこともあります。

現在ではⅠ~Ⅳの治療薬が効かなかった時に試されるという位置づけです。一緒に使う事が禁忌となっているお薬も多いため、使い勝手は悪めです。特にトリプタン製剤との併用や妊娠・授乳中の使用が禁忌(絶対ダメ)というのは要注意です。

【商品名】クリアミン、ジヒデルゴッド
【メリット】安い
【デメリット】併用禁忌のお薬や、使用禁忌の病気が多い。副作用も多め

3.偏頭痛発作時のお薬の選び方

偏頭痛発作が起こった時にどのお薬を使うかは、主治医が患者さん個々の状態を診て判断しますので一概に言うことはできません。

ここでは一般的な選び方を紹介しますが、個々のケースにおけるお薬の選択は主治医の指示に従ってください。

まず、軽度の頭痛であれば、アセトアミノフェンかNSAIDsが使われることが多いようです。これは何故かというと、これらのお薬は安定した鎮痛効果があり、とても安価で使い勝手が良いからです。トリプタン製剤より有効性は落ちるものの、トリプタン製剤と違っていつ飲んでも鎮痛効果がしっかり出るというのは、とても助かります(トリプタン製剤は偏頭痛発作の初期に飲まないと効果が弱まってしまいます)。

吐き気などの合併症状も辛い場合は、制吐剤を併用することもあります。

頭痛の程度が強い場合や、アセトアミノフェン・NSAIDsでは効果が十分でなかった場合には、トリプタン製剤が検討されます。

トリプタン製剤は、偏頭痛への有効率はNo.1なのですが、薬価が非常に高いことと、発作が起こったらすぐ飲まないといけないというデメリットがあります。偏頭痛が生じてからある程度経過してから服薬しても、あまり効果が出ないのです。

そのため、飲むタイミングには少し慣れが必要で、そういう意味ではやや使い勝手は悪いお薬になります。また1回の頭痛を抑えるのに900円(3割負担なら300円)かかる、というのはなかなか高価な治療になりますので、そういう意味でも使い勝手は良いとは言えません。

エルゴタミンは現在ではあまり使われませんが、偏頭痛のお薬を一通り試して、どれも効果不十分な時には試してもよいかもしれません。ただし、トリプタン製剤との併用は禁忌(絶対ダメ!)になってますので、注意してください。