せせらぎメンタルクリニックではメール相談を設けており、日々多くの質問や相談を頂いております。
中でも「〇〇という薬が欲しいのですが、どこに行けば処方してもらえますか?」という質問がこの頃多くなっています。
最近では平成26年11月26日に、ベルソムラ(一般名スボレキサント)という新しい睡眠薬が発売されたため、この処方を希望されている方は多いようです。
不眠で苦しんでいる方は非常に多く、日本では国民の約20%を超えていると報告されています(平成19年の厚生労働省の報告より)。ベルソムラに関心がある方は多いのも当然でしょう。
今日は、「〇〇というおくすりはどこにいけば処方してもらえますか」に対する回答についてお話したいと思います。
1.〇〇というおくすりはどこで処方してもらえますか?に対する回答
おくすりは大きく分けると、
〇 医師が処方する「処方薬」
〇 薬局で購入できる「市販薬」
に分けることができます。
前者は「処方せん医薬品」「医療用医薬品」とも呼ばれます。
処方薬は、正しく使わないと危険な副作用が生じる可能性があるため医師の指示が必要であり、そのため医師に処方してもらわないと入手することができません。
後者は「一般用医薬品」とも呼ばれています。
市販薬は、効果も比較的弱いかわりに副作用も軽いものが多いため、薬局で自由に購入することができ、自己判断で服薬できるようになっています。
今回の質問は処方薬に対してのものです。ということは、医師に処方してもらなわいと入手することができません。
医師は、法律上は科に関係なくどんなおくすりでも処方できます。例えば先月発売されたベルソムラは睡眠薬ですが、精神科医だけしか処方できないということはなく、内科医でも整形外科医でも、眼科医でも、産婦人科医でも「医師」であれば誰でも処方はできます。
医師であれば誰でも処方できるので、法律上はどの病院、どの医師でも処方する権限は持っています。特別な病院にしかおいていない、特別な医師でないと処方できないおくすりではありません。
そのため、「ベルソムラはどこで処方してもらえますか?」という質問に対しては、「どの医師・どの病院でも処方はできますよ」というのが回答になります。
ただし、その患者さんにベルソムラが必要なのかは診察医の判断によります。診察医が「あなたにはベルソムラは必要ない」と判断すれば、処方しません。おくすりは患者さんの希望通りに出すものではなく、医学的にみて必要性がある時にのみ処方されるものだからです。
「どの医師・どの病院でも処方することは出来ますが、処方するかどうかは診察医の判断になります」というのがより正確な回答になるでしょう。
「この病院に行けば絶対もらえますよ」という病院はありません。しかしあなたにとってベルソムラが必要な状態なのでしたらどの病院を受診しても、処方してもらえるはずです。
「ベルソムラはどこの病院に行けばもらえますか?」と相談される方は、ベルソムラを試してみたい方だと思いますので、まずはかかりつけの主治医に相談してみるのがいいのではないでしょうか。主治医が必要な状態と判断すれば処方してくれるでしょう。
まった、ベルソムラは発売されたばかりですから、まだ置いていない薬局もあると思います。その場合は取り寄せてもらうことになりますので、処方はしてもらえたとしても、入荷まで待たないといけない可能性があります。
今回はベルソムラを例に出しましたが、他の処方薬でも同じです。
「〇〇という抗うつ剤を試したいのですが、どこにいけばもらえますか?」という質問に対しても、「どの医師・どの病院でも処方することは出来ますが、処方するかどうかは診察医の判断になります。」という同様の回答になります。
処方薬は、市販薬と比べて効果が強いのですが、その分適切に使わないと副作用の危険もあります。そのため、医学的に本当に必要な状態の患者さんにしか処方することはできません。患者さんの希望通りに簡単に出せる、というものではありません。
試してみたい処方薬がある場合は、まずは主治医に相談してみましょう。主治医に、その処方薬を使用する適応があるのかを判断してもらった上で検討してください。ある病院に行けば簡単に処方してもらえる、というものではありません。