ソラナックス錠は1984年に発売された抗不安薬です。抗不安薬は文字通り、不安感を和らげるお薬で、「安定剤」「精神安定剤」とも呼ばれます。
ソラナックスは抗不安薬の中で、バランスの取れたお薬という位置づけです。抗不安作用もまずまずしっかりあり、即効性もあり、ふらつきなどの副作用も多くはありません。
そのため処方される頻度も多く、実際にアメリカでは一番多く処方されている抗不安薬となっています(2010年度)。
ここではソラナックスの効果や特徴、また他の抗不安薬との比較などを紹介していきます。
1.ソラナックスの総評
まずはソラナックス錠の総評を紹介します。
【効果】
- 中等度の抗不安作用
- 弱い筋弛緩作用
- 弱い~中等度の催眠作用
- 弱い抗けいれん作用
ソラナックスをはじめとしたベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬には、不安を取る作用以外にも、筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)、催眠作用(眠くする)、抗けいれん作用(けいれんを抑える)があります。
ソラナックスのそれぞれの効果の強さを表すと上のようになります(個人差があるため、あくまで目安になります)。
ソラナックスは抗不安作用がしっかりある割に筋弛緩作用が軽いので、ふらつきなどを起こしにくくバランスの取れた抗不安薬だという事が出来ます。
【良い特徴】
- 抗不安作用がしっかりある割には、副作用は全体的に軽め
- 特に筋弛緩作用が軽いため、ふらつきや転倒を起こしにくい
【悪い特徴】
- 眠気が強く出てしまう人がいる
- 依存形成はやや多めという報告もある
バランス型の抗不安薬であるソラナックスには、大きなデメリットはありません。依存形成はやや多めだと言う専門家もいますが、抗不安薬はどれも依存形成のリスクがあり、私の印象としてはソラナックスが特別に依存性が強い抗不安薬だとは感じません。
人気があるため処方される頻度が多いので、それで結果的に依存になってしまう総数が多いというだけで、依存になる率として他と大差ないのではないかと思われます。
しかし、使い勝手の良さから気軽に頼ってしまいやすい、という可能性は否めません。必要以上に多く服薬してしまうと、副作用などの害が多くなってしまいますので、医師と相談しながら必要な量だけの服薬にとどめるように注意してください。
2.ソラナックスの抗不安作用の強さ
抗不安薬には、たくさんの種類があります。
それぞれ強さや作用時間が異なるため、患者さんの状態によって、どの抗不安薬を処方するかが異なってきます。
ソラナックスは、不安を改善する作用(抗不安作用)は中等度です。
主な抗不安薬の「抗不安作用」の強さを比較すると下図のようになります。
抗不安薬 | 作用時間(半減期) | 抗不安作用 |
---|---|---|
グランダキシン | 短い(1時間未満) | + |
リーゼ | 短い(約6時間) | + |
デパス | 短い(約6時間) | +++ |
ソラナックス/コンスタン | 普通(約14時間) | ++ |
ワイパックス | 普通(約12時間) | +++ |
レキソタン/セニラン | 普通(約20時間) | +++ |
セパゾン | 普通(11-21時間) | ++ |
セレナール | 長い(約56時間) | + |
バランス/コントール | 長い(10-24時間) | + |
セルシン/ホリゾン | 長い(約50時間) | ++ |
リボトリール/ランドセン | 長い(約27時間) | +++ |
メイラックス | 非常に長い(60-200時間) | ++ |
レスタス | 非常に長い(約190時間) | +++ |
ソラナックスは特別に不安を取る力が強いお薬だというわけではありません。しかし、ある程度の効果は有しているため、不安を抑えるために十分頼れるお薬です。
3.ソラナックスを使う疾患は?
添付文書を見るとソラナックスは、
心身症(胃・十二指腸潰瘍、過敏性腸症候群、自律神経失調症)における身体症候ならびに不安・緊張・抑うつ・睡眠障害
に適応があると書かれています。
心身症とは、身体の異常の主な原因が「こころ」にある病気の群です。例えば食生活が悪くて胃潰瘍になるのは心身症ではありませんが、ストレスで胃潰瘍になるのは心身症になります。同じようにタバコで血圧が上がるのは心身症ではありませんが、ストレスで血圧が上がってしまうのも心身症になります。
臨床では、心身症に限らず、様々な不安感に対して使用することがほとんどです。
ストレスで不安感が強くなったり、気分の落ち込みが出てきたり、緊張が取れなくなってしまう場合などですね。
正常な人にでも不安はありますが、そういった「正常範囲内の不安」には用いません。正常範囲内の不安にも効果は示しますが、健常者に使っても副作用などのデメリットの方が大きいからです。
不安感があり、医師が「抗不安薬による治療が必要なレベルである」と判断された場合にソラナックスなどの抗不安薬が使われます。
疾患で言えば、パニック障害や社交不安障害などの不安障害圏、強迫性障害などの疾患に用いることがあります。また、うつ病や統合失調症などで不安が強い場合も補助的に使用されます。
4.ソラナックスが向いている人は?
ソラナックスは、「強すぎず弱すぎず」といったバランスの良い抗不安作用を持ちますので、不安、緊張がある方で薬物治療が必要な方の第一選択薬として向いています。
まずはバランスの取れたソラナックスを服薬してみて、それでちょうどよければそのまま、弱すぎればもう一段階強い抗不安薬へ、強すぎればもう一段階弱い抗不安薬へ、このような、初期評価に用いるお薬としても適しています。
また筋弛緩作用が弱いことから、以前、別の抗不安薬を使ったらふらつきが強く出てしまって服薬を中断してしまった方なども試してみる価値があります。
飲んでから血中濃度が最大になるまでは約2時間かかりますが、体感としては内服後20~30分ほどで効果を感じられますので、ある程度即効性にも優れます。そのため不安なイベントや緊張するイベントの前に飲むといった頓服的な使い方もできます。ワンポイントで不安を抑えたい、という方にも向いているでしょう。
5.ソラナックスの作用機序
ソラナックスは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬になります。ソラナックスに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。ベンゾジアゼピン系はGABA受容体という部位に作用することで、先ほど説明した抗不安作用、催眠作用、筋弛緩作用、抗けいれん作用を発揮します。
ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」になり、ソラナックスもそのひとつです。
ちなみに睡眠薬にもベンゾジアゼピン系がありますが、これはベンゾジアゼピン系のうち、催眠作用が特に強いもののことです。
ベンゾジアゼピン系は、基本的には先に書いた4つの効果が全てあります。
ただ、それぞれの強さはお薬によって違いがあり、抗不安作用は強いけど抗けいれん作用は弱いベンゾジアゼピン系もあれば、抗不安作用は弱いけど催眠作用が強いベンゾジアゼピン系もあります。
ソラナックスは、先ほども書いた通り、
- 中等度の抗不安作用
- 弱い筋弛緩作用
- 弱い~中等度の催眠作用
- 弱い抗けいれん作用
を持っています。