性別で異なる、抗うつ剤の「効き」

現在、抗うつ剤の中で最もよく使われているのはSSRIというお薬です。

SSRIは「選択的セロトニン再取り込み阻害薬」の略で、神経間のセロトニンの濃度を増やす事で抑うつ気分などを改善させてくれます。

日本では現在ルボックス、デプロメール、パキシル、ジェイゾロフト、レクサプロの5剤が発売されています。

実はこれらのお薬、どれもほとんど同じ「神経間のセロトニンを増やす」という 作用機序なのに、性別によって効果に差があるのです。

統計をとってみると「男性にはこのSSRIが効きやすい」 「女性にはこのSSRIが効きやすい」という特徴があります。

今日はSSRIの性別による効果の差を紹介させて頂きます。

1.男女で異なる、抗うつ剤の効き

森下茂先生の研究報告を紹介します。

抗うつ剤単剤で10週間治療された症例を対象にうつ病の改善率の男女差を見てみると、

ルボックス(テプロメール):男性68.3% 女性64.3%
パキシル         :男性60.4% 女性54.8%
ジェイゾロフト      :男性35.7% 女性95.0%
レクサプロ        :男性33.3% 女性81.8%

であった。

(Morisita S:女性うつ病へのSSRI選択.Depresseion Journal Vol.1 No.2(2013-7):29-31,2013)

ルボックスとデプロメールはどちらも「フルボキサミン」という物質であり、発売している会社が異なるだけの同じ成分の抗うつ剤ですので、ここでは同じものとして扱っています。

なお、対象患者数は、

ルボックス(テプロメール):男性41例 女性56例
パキシル         :男性48例 女性42例
ジェイゾロフト      :男性28例 女性20例
レクサプロ        :男性3例  女性11例

でした。

ルボックス(デプロメール)、パキシルでは改善率の男女差にに大きな違いはありませんでしたが、ジェイゾロフト、レクサプロは女性に有効率が高いという結果になりました。

2.考察・所感

抗うつ剤がなぜ男女で効果に差があるのか、その理由は分かっていません。

ただ、上記の報告だけでなくいくつかの海外の研究報告においても「ジェイゾロフト、レクサプロは女性で有効率が高い」という報告はいくつか出ています。

なんらかの理由により、 ジェイゾロフト、レクサプロは女性に効果を発現しやすいのでしょう。

私自身の臨床経験としても、それは合致している印象があります。確かに「ジェイゾロフト」「レクサプロ」は女性に良く効く印象があり、女性に処方する頻度の多い抗うつ剤です。

個人的には、これらの薬は女性が嫌がる「体重増加」の副作用が比較的少なめなので、そういう意味でも女性に処方しやすいのです。これらの抗うつ剤は「穏やかに効く」「副作用が少ない」という点もあるため、これも女性に受け入れられやすい一因なのかもしれませんえ。

また、この研究報告全体を通していえる事は、女性の方が男性よりもSSRIが全体的に効きやすい傾向があるようです。そのため、「女性にはSSRIが良い」「男性にはSNRIが良い」と指摘する先生もいらっしゃいます。

【SNRI】
セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬。セロトニンの他ノルアドレナリンも増やす作用がある抗うつ剤。代表的なものに、サインバルタ(一般名:デュロキセチン)、トレドミン(一般名:ミルナシプラン)がある。

もちろん、この結果のみから安易に処方を決める事はいけませんが、SSRIを処方する時、参考の1つとして、

  • 女性にはジェイゾロフト、レクサプロが効きやすい
  • 男性はパキシル、ルボックス(デプロメール)の効果が比較的良い

という事はお薬を決める時の一助としていいかもしれませんね。

<まとめ>

  • SSRIの効果には男女で差がある
  • 女性はジェイゾロフト、レクサプロが効きやすい傾向がある
  • 男性はパキシル、ルボックス(デプロメール)が効きやすい傾向がある
  • 全体的に見ると、女性の方が男性よりもSSRIが効きやすい傾向がある

コメント

  1. […] また研究報告では「男性より女性に有効性が高い」という報告がありますので、 女性には使う頻度の多い抗うつ剤です。 (参考:男女で異なる抗うつ剤の効き) […]