グランダキシン錠・細粒(トフィソパム)の効果・効能

グランダキシンは1986年に発売された自律神経調整薬です。自律神経調整薬というのは聞き慣れない名称ですが、グランダキシンはベンゾジアゼピン系に属するお薬であるため、基本的には抗不安薬(不安を和らげるお薬)と同様のお薬です。

グランダキシンは抗不安薬の中でも、非常に穏やかな抗不安作用を持ち、その分副作用も非常に少なくなっています。

効果に物足りなさを感じることも多いですが、安全性は非常に高いお薬になります。

穏やかに不安を取ってくれるグランダキシンは、「お薬の副作用が心配だ」という患者さんにも使いやすいお薬になります。そのため、精神科・心療内科をはじめ内科や産婦人科・整形外科など多くの科で処方されています。

ここではグランダキシンの効果や特徴、また他の抗不安薬との比較などを紹介していきます。

1.グランダキシンの総評

まずはグランダキシン錠の総評を紹介します。

【効果】

  • 弱い抗不安作用
  • 非常に弱い筋弛緩作用
  • 非常に弱い催眠作用
  • 非常に弱い抗けいれん作用

グランダキシンをはじめとしたベンゾジアゼピン系と呼ばれるお薬には、抗不安作用(不安を取る作用)、筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)、催眠作用(眠くする)、抗けいれん作用(けいれんを抑える)の4つの作用があります。ベンゾジアゼピン系のお薬は全て、この4つの作用を持っています。この4つの作用のそれぞれの強さはお薬によって異なるため、各病状にあったものを選びます。

グランダキシンのそれぞれの効果の強さを表すと上のようになります(個人差があるため、あくまで目安です)。軽い抗不安作用は認めますが、その他の作用はかなり弱く、ほとんど感じられないという方がほとんどでしょう。

またグランダキシンは「自律神経症状のバランスを整える」というはたらきが認められており、自律神経のバランス異常で生じている諸症状に用いられることもあります。

自律神経症状といってもその症状は多岐に渡りますが、頭痛、胃痛、動悸、発汗など自律神経の異常で生じている症状は全てが該当します。ただし、これら自律神経症状に対する改善作用も非常に穏やかです。

グランダキシンの特徴を一言でいうと、「効果は弱い・でも副作用もほとんどなくて安全」というものになります。症状が非常に強い患者さんには十分に効かず、物足りなさもありますが、眠気・ふらつき・依存などの副作用はほとんど認めないため、安全性には優れます。

また薬価ですが、他の抗不安薬と比べるとやや高めになります。50mg錠で15.70円(2015年6月現在)ですので、1日47円ほどかかります。対して代表的な抗不安薬のデパス(エチゾラム)を見てみると0.5mg錠で9円ですので、標準的な量である1日1.5mgの使用であれば27円ほどです。ワイパックス(ロラゼパム)も0.5mg錠で6.1円であり、同様に1日1.5mgの使用であれば18円ほどです。

グランダキシンが驚くほど高い、というわけではありませんが、他の抗不安薬と比べるとやや高めです。

以上から、グランダキシンの特徴は次のように考えられます。

【良い特徴】

  • 効果が非常に穏やか。不安を穏やかに和らげてくれる
  • 自律神経症状にも有用
  • 眠気・ふらつき・依存性などの副作用はほとんど認めない

【悪い特徴】

  • 全体的に効果が弱く、物足りなさがある
  • 他の抗不安薬と比べてちょっと値段が高い

2.グランダキシンの強さはどのくらいか?

抗不安薬にはたくさんの種類があり、それぞれ強さや作用時間が異なります。そのため医師は患者さんの症状からどの抗不安薬を処方するかを決定します。

他の抗不安薬と比べて、グランダキシンの抗不安作用(不安を和らげる力)はどのくらいなのでしょうか。

主な抗不安薬の抗不安作用を比較すると下図のようになります。

抗不安薬作用時間(半減期)抗不安作用
グランダキシン短い(1時間未満)
リーゼ短い(約6時間)
デパス短い(約6時間)+++
ソラナックス/コンスタン普通(約14時間)++
ワイパックス普通(約12時間)+++
レキソタン/セニラン普通(約20時間)+++
セパゾン普通(11-21時間)++
セレナール長い(約56時間)
バランス/コントール長い(10-24時間)
セルシン/ホリゾン長い(約50時間)++
リボトリール/ランドセン長い(約27時間)+++
メイラックス非常に長い(60-200時間)++
レスタス非常に長い(約190時間)+++

グランダキシンは不安を取る力が弱いお薬になります。ベンゾジアゼピン系の中で最弱、といっても過言ではないでしょう。

なお、お薬の効きは個人差も大きいため、この表はあくまでも目安としてご覧ください。

3.グランダキシンは使われるのはどんな疾患か

2015年6月現在のグランダキシンの添付文書を見ると、適応疾患としては次のように書かれています。

下記疾患における頭痛・頭重、倦怠感、心悸亢進、発汗等の自律神経症状

自律神経失調症、頭部・頸部損傷、更年期障害・卵巣欠落症状

主に自律神経失調症における諸症状の改善に対しての適応を持っています。また更年期障害や外傷後の自律神経症状にも効果を有するため、産婦人科や整形外科で処方されることもあります。

適応をみると、抗不安薬としての不安を和らげる作用ではなく、自律神経神経のバランスを整える作用に対しての適応が中心となっていますね。実際、ベンゾジアゼピン系ではありますが抗不安作用はかなり弱いため、「自律神経のバランスを整える」目的で処方されることが多いお薬です。

グランダキシンの使い方は、

通常、成人にはトフィソパムとして1回50mg、1日3回経口投与する。なお、年齢・症状により適宜増減する。

となっており、1日3回服薬する必要があります。グランダキシンは作用時間が短く、半減期は1時間未満と報告されていますので、1日を通して効果を安定させるためには複数回服薬する必要があるのです。

(半減期:お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、作用時間の目安のひとつになる値)

4.グランダキシンが向いている人は?

グランダキシンは、「効果は弱いけど、副作用(眠気、転倒、依存など)も非常に少ない」といった位置づけのお薬で、安全性に非常に優れるお薬です。

「グランダキシンは全く効かない」と言う患者さんも少なくありませんが、大きな副作用で困ってしまう患者さんもほとんどいません。

こういった特徴を踏まえると、症状が比較的軽度の方、安全性を重視してゆっくりと治療できる方に向いているお薬ではないかと思われます。また、自律神経症状に対する効果があるため、軽度の自律神経症状が前景にある患者さんも試してみる価値はあるお薬です。

反対に、症状が重い方に対してはオススメしずらいお薬になります。重い症状に対して、グランダキシンが十分に効くかというと力不足な感は否めないからです。

5.グランダキシンの作用機序

グランダキシンは「ベンゾジアゼピン系」という種類のお薬になります。グランダキシンに限らず、ほとんどの抗不安薬はベンゾジアゼピン系に属します。

ベンゾジアゼピン系は、GABA受容体という部位に作用することで、先ほど説明した抗不安作用、筋弛緩作用、催眠作用、抗けいれん作用の4つの作用を発揮します。ベンゾジアゼピン系のうち、抗不安作用が特に強いものが「ベンゾジアゼピン系抗不安薬」と呼ばれます。

グランダキシンは抗不安作用が強いわけではないので、正確には抗不安薬に属しておらず「自律神経調整薬」という種類になっていますが、作用機序としては基本的にベンゾジアゼピン系抗不安薬と同じです。

グランダキシンは、

  • 弱い抗不安作用
  • 非常に弱い筋弛緩作用
  • 非常に弱い催眠作用
  • 非常に弱い抗けいれん作用

を持っています。抗不安作用は多少感じられることはありますが、残り3つの作用は通常量の服薬であればほとんど自覚できない程度です。

またグランダキシンの特徴として、 自律神経のバランスを整えることで自律神経症状に効果があるということが挙げられます。中枢神経(視床下部)および末梢神経の自律神経系に作用して、交感神経(興奮の神経)と副交感神経(リラックスの神経)のバランスを改善します。

そのため、種々の自律神経症状(頭痛、動悸、腹痛、吐き気、倦怠感、発汗など)に対して改善させる作用も持ちます。