ソメリン錠の効果・特徴【医師が教える睡眠薬の全て】

ソメリン(一般名:ハロキサゾラム)は1981年に発売された睡眠薬で、ベンゾジアゼピン系という種類に属します。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、脳のGABA受容体をいう部分を増強することで催眠作用を発揮します。効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療によく使われるお薬です。

ここではソメリン錠の効果の強さや他の睡眠薬との比較などを紹介します。

1.ソメリンの特徴

睡眠薬にはたくさんの種類があり、それぞれ特徴が異なります。睡眠薬を選択する際は、主治医とよく相談して自分に合ったものを選ぶことが大切です。数ある睡眠薬の中で、ソメリンはどのような位置づけのお薬なのでしょうか。

ソメリンの最大の特徴は、その作用時間の長さにあります。

だいたいの睡眠薬は、人の睡眠時間に合わせて数時間~10時間前後の作用時間になっています。しかしソメリンは非常に長い作用時間を持っています。

作用時間を知る1つの目安に「半減期」という値があります。半減期はお薬の血中濃度が半分に落ちるまでにかかる時間の事です。半減期と作用時間は一致するわけではありませんが、半減期は作用時間を知る1つの目安になります。

ソメリンの半減期は42~123時間と報告されており、これはベンゾジアゼピン系睡眠薬の中でも最長クラスです。

作用時間が長いと日中にも眠気が残ってしまうデメリットがありますが、一方で長く効くお薬は依存になりにくい事が知られており、ソメリンは依存形成を起こしにくいというメリットもあります

また、即効性はあまりありません。即効性のある睡眠薬であれば、飲んでから1時間以内に血中濃度が最高値に達するものもありますが、ソメリンは血中濃度が最大値に達するまでに約4~12時間かかります。添付文書上は服用して1時間以内に効果が発現すると書かれていますが、臨床で使っている実感としては即効性がある印象はありません。

即効性は乏しく、ゆっくりと効き始め、長く効き続ける。依存性は少なめ。ソメリンはこのような睡眠薬なのです。

2.ソメリンの作用時間

睡眠薬は作用時間で4種類に分類されます。

超短時間型・・・半減期が2-4時間
短時間型 ・・・半減期が6-10時間
中時間型 ・・・半減期が12-24時間
長時間型 ・・・半減期が24時間以上

半減期というのは、お薬の血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、「おおよそのお薬の作用時間」を知る目安として使われています(作用時間と完全に一致する値ではありません)。

ソメリンは「長時間型」の睡眠薬に分類され、服薬してから約4~12時間ほどで血中濃度が最高値になり、半減期は42~123時間前後です。

実際はソメリンは体内に吸収後すぐに代謝されて活性代謝物になるため、上記の数値はこの活性代謝物の最大血中濃度到達時間や半減期になりますが、この記事ではお薬の特徴を分かりやすく説明する事を重視しているため、この点は割愛します。

ゆっくりと効き始め、非常に長く効き続けることがソメリンの特徴です。

飲んでから効果が最大となるまで時間かかるため、即効性は期待できませんので入眠障害には不適です。しかし作用時間が長いため、夜中に何度も起きてしまう方や長く眠りたいという方には効果が期待でき、中途覚醒や早朝覚醒には向いています。

一方でデメリットとしては、日中にまで眠気が残ってしまう可能性が挙げられます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬には多少の抗不安作用もあるため、上手く使えば夜はゆっくり眠れて、日中も多少の抗不安作用を発揮してくれるという事もありますが、日中の眠気によるふらつきや転倒には注意が必要なお薬です。

3.睡眠薬の半減期の比較

よく使われる睡眠薬の半減期を比較してみましょう。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

半減期が睡眠薬によって様々であることが分かります。

最高濃度到達時間が早いお薬は、「即効性がある」と言えます。ハルシオン、ルネスタ、マイスリー、アモバンなどの「超短時間型」は1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方に向いています。

しかし、3~4時間で効果が切れてしまいますから長くぐっすり眠りたい方には不適であることが分かります。

反対に7~8時間ぐっすり眠りたい場合は、リスミー、サイレース/ロヒプノールやデパス、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどの睡眠薬が適していることが分かります。

ソメリンは即効性は皆無ですので、寝付きの改善に用いるのは不適です。寝付きを改善したい場合は、超短時間型や短時間型を用いるべきでしょう。

しかし半減期が長いため、夜中に何度も起きてしまう方であったり長く眠りたい方には向いています。長く効きすぎて日中にも眠気が持ち越してしまう可能性がありますので、注意して使用しましょう。

睡眠薬はそれぞれ特徴が違いますので、主治医と相談して自分に合うものを選ぶことが大切です。

4.ソメリンの強さは?

ソメリンの睡眠薬としての強さはどのくらいなのでしょうか?

お薬の効きは個人差が大きいため一概には言えませんが、一般的には睡眠薬の中で「中等度(普通)」くらい強さであることが多いようです。

現在の不眠治療は、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピン系睡眠薬が主流となっていますが、これらの睡眠薬はどれも薬効の強さには大きな差はないと言われています。

睡眠薬は強さはどれも同じくらいで、「強さがピークになる時間帯」や「効果が続く時間」が違うだけです。

sleepdrugこの図のように、睡眠薬はどれもピーク時の強さには大きな差はありません。強さがピークになる時間帯が違うのです。

そのため、もし睡眠薬の効果を強めたい場合は、睡眠薬の種類を変えるよりも「量を増やす」方が効果的です。ソメリンは5~10mgまでの量の間で使いますが、量を増やせばそれだけ効果は強くなります。

ただし量を増やせば効果も強くなりますが、副作用も現れやすくなります。そのため、まずは少量から開始し、効果が不十分な場合に限り増量するようにして下さい。

5.ソメリンが向いている人は?

ソメリンを使うケースは主に次の3つが考えられます。

Ⅰ.中途覚醒の改善のため
Ⅱ.中途覚醒の改善+日中の不安軽減のため
Ⅲ.依存予防のため

もちろんこれ以外の使い方もあり得るため、詳しくは主治医の指示に従って頂きたいのですが、ここでは主にこの3つの使い方について説明します。

Ⅰ.中途覚醒の改善のため

不眠には2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない事」で、これは「入眠障害」とも呼ばれます。そして二つ目は「寝てもすぐに起きてしまう事」で、これは「中途覚醒」と呼ばれます。

一般的には、

  • 入眠障害には超短時間、短時間型
  • 中途覚醒には中時間型、長時間型

の睡眠薬が適していると言われています。

ソメリンは長時間型ですから、セオリー通りに考えると、「夜中に何回も起きてしまう」という中途覚醒タイプの不眠に向いていることになります。

実際もその通りで、即効性はないため入眠障害に使っても効果はほとんど期待できません。中途覚醒の改善に用いられる場合がほとんどです。

しかしソメリンは睡眠薬の中でトップクラスに長い半減期を持ちます。ただしお薬が長く効くという事は、お薬の効果が日中にも持ち越しやすいということでもあります。

夜は眠れるようになったけど、日中も眠くて仕方ない。これでは困ります。

そのため、一般的な中途覚醒の治療をする場合は、まずはもう少し半減期の短いものを試してみて、それでも「効きが短い」と感じる場合に、ソメリンを検討することが一般的です。

例えばまずは半減期が10時間前後のリスミーやロラメット/エバミールなどからはじめて、それでも「このお薬では効果がまだ短い」と感じるのであれば、ソメリンが役立つかもしれません。

半減期が非常に長いソメリンは、不眠の薬物治療を行う際、まず最初に使うお薬というよりは、他の睡眠薬で不十分であったときの二番手として使われることが多い睡眠薬になります。

Ⅱ.中途覚醒の改善+日中の不安軽減のため

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は抗不安作用(不安を和らげる作用)を多少持っています。もちろんソメリンにも軽い抗不安作用があります。そのため、日中の不安も少し抑えたいという場合にはソメリンは試す価値はあります。

上手く効けば、夜は催眠作用で中途覚醒を改善し、日中は抗不安作用で不安を改善してくれるということが期待できるからです。 

Ⅲ.依存予防のため

一般的に半減期の長いベンゾジアゼピン系は依存形成を起こしにくいと言われています。睡眠薬の中で最長クラスの半減期を持つソメリンは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中で依存を起こしにくいと言えます。

睡眠薬の使用が長期に渡ってしまい、依存形成などが心配である場合は、ソメリンなどの半減期の長い睡眠薬に切り替えることがあります。