ロゼレムの半減期・作用時間【医師が教える睡眠薬のすべて】

ロゼレムはメラトニン受容体作動薬と呼ばれる睡眠薬です。

メラトニンは眠りを促すホルモンであり、ロゼレムはメラトニンと似たような作用をすることで自然な眠りを促します。

ロゼレムは、その特徴のひとつに半減期が非常に短いことがあります。

半減期とは、内服したおくすりの血中濃度が半分になるまでの時間のことで、くすりの作用時間とある程度相関するを言われています。

ここでは、ロゼレムの半減期や他睡眠薬との比較、そこから考えられるロゼレムの効果的な使い方について紹介していきます。

また、「半減期」の定義についても詳しくお話します。

1.ロゼレムの半減期

ロゼレムは、空腹時に服薬した場合、
内服後1時間未満(0.75時間)で最高血中濃度に達し、
半減期は約1時間(0.94±0.18時間)です。

半減期は、おくすりの血中濃度が半分になるまでにかかる時間のことで、
この値はおくすりの作用時間とある程度相関します。

おくすりが身体がから抜けていくスピードは個人差があるため、
半減期はあくまでも目安に過ぎませんが、どのおくすりを使うべきかの大きな指標になる数値です。

おおまかには「半減期」≒「おくすりのおおよその作用時間」と考えてよいでしょう。

ロゼレムの半減期は約1時間前後ですので、作用時間は非常に短いおくすりであることが分かります。

2.睡眠薬の半減期一覧

ロゼレムはメラトニン受容体作動薬という種類の睡眠薬ですが、
同種の睡眠薬は現時点では他にありません。

他の睡眠薬となると、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系になりますが、
これらの主な半減期を比較してみると下図のようになります。

睡眠薬最高濃度到達時間作用時間(半減期)
ハルシオン1.2時間2.9時間
マイスリー0.7-0.9時間1.78-2.30時間
アモバン0.75-1.17時間3.66-3.94時間
ルネスタ0.8-1.5時間4.83-5.16時間
レンドルミン約1.5時間約7時間
リスミー3時間7.9-13.1時間
デパス約3時間約6時間
サイレース/ロヒプノール1.0-1.6時間約7時間
ロラメット/エバミール1-2時間約10時間
ユーロジン約5時間約24時間
ネルボン/ベンザリン1.6±1.2時間27.1±6.1時間
ドラール3.42±1.63時間36.60±7.26時間
ダルメート/ベジノール1-8時間14.5-42.0時間

ロゼレムは先ほど紹介したように、
最高血中濃度到達時間は1時間未満、半減期が約1時間
ですので、これらの睡眠薬と比較しても半減期は非常に短いことが分かります。

このように睡眠薬によって、半減期や最高濃度到達時間は様々です。

最高濃度到達時間が早いお薬は「即効性がある」と言えます。

例えばマイスリー、アモバン、ハルシオンなどの「超短時間型」は
1時間前後で血中濃度が最高値になるため、「すぐに寝付きたい」という方に向いています。

しかし半減期が3-4時間ですから、長く眠りたい方には向いていません。

反対に7-8時間ぐっすり眠りたい場合は、レンドルミンやリスミー、サイレース/ロヒプノールや
デパス、ユーロジンなどが第一選択としては向いていることが分かります。

それぞれ微妙に特徴が違いますので、主治医と相談して自分に合いそうな睡眠薬を選びましょう。

3.半減期から考えるロゼレムの使い方

不眠は大きく分けると2つのタイプがあります。

一つ目が「寝付けない」タイプで、「入眠障害」と呼ばれます。
二つ目は「寝付けてもすぐに目覚めてしまう」タイプで、「中途覚醒」と呼ばれます。

教科書的には、

入眠障害には超短時間型か短時間型、
中途覚醒には中時間型や長時間型

の睡眠薬が適していると書かれており、
まずはこのセオリーに沿っておくすりを決めていきます。

ロゼレムはベンゾジアゼピン系/非ベンゾジアゼピン系ではないため、
「〇時間型」という分類はしないのですが、最高血中濃度に到達するまでの時間も早く、
半減期が1時間程度であることを考えると、入眠障害に向くおくすりだと言えます。

反対に中途覚醒が強いタイプでは、それほど効果は示さないでしょう。

実際、ロゼレムの効果・効能についても添付文書には

効果・効能:不眠症における入眠困難の改善

と書かれており、メーカーとしても入眠障害への使用を勧めていることが分かります。

ただし、ロゼレムは長く使うことによって、「睡眠リズムを調節する」ようなはたらきをするため、
長期的に考えれば、中途覚醒に全く効果が望めない、ということはないと考えられます。

ロゼレムの長所として、安全性が高く依存性がないことが挙げられます。
これは現時点では他の睡眠薬には無い、大きなメリットです。

自分は中途覚醒タイプの不眠だけど、なるべく安全性の高いおくすりで
ゆっくりでいいから治していきたい、
このように考えられる方は、中途覚醒であってもロゼレムを検討してもいいのではないでしょうか。

4.半減期とは?

せっかくなので「半減期」について詳しく勉強してみましょう。
半減期というのは「お薬の血中濃度が半分になるまでに要する時間」のことです。

半減期は、お薬の作用時間と相関するため、
半減期が分かれば作用時間がおおよそ推測できます。

例えば、下記のような薬物動態を示すお薬があるとします。

半減期イメージ

だいたいのお薬は内服すると、このグラフのようにまず血中濃度がグンと上がり、
それから徐々に落ちていきます。

このお薬は、投与10時間後の血中濃度は「10」ですが、
投与20時間後には血中濃度は半分の「5」に下がっています。

血中濃度が半分になるのに要する時間は「10時間」ですので、
このお薬の半減期は「10時間」です。

そして半減期が10時間ということは「だいたい10時間くらい効くおくすり」なんだと分かります。

正確には半減期と作用時間の長さは完全に一致するわけではありません。

おくすりを飲むと、まず血中濃度は上がり最高血中濃度に到達して
それから下がっていきますので、正確に言えば
最高濃度に到達するまでの時間も加味しなければいけないでしょう。

もっと言えば、すべての人が、血中濃度が半分になったら薬効を感じなくなるとは言えません。
血中濃度がどれくらい下がれば薬効を感じなくなるかは人それぞれでしょう。
半分の人もいれば、それ以上・それ以下の方もいると思われます。

更に個々人の体質や代謝能力まで考え出すとキリがなく、
そうなると作用時間を数値化することは不可能になってしまいます。

でも、「どれくらいの効くかは、人それぞれですから分かりません」では話にならないので、
ひとつの目安として、半減期を使用しているのです。

細かいことを考え出せばキリがありませんが、あまり難しく考えずざっくりと
「だいたい半減期と作用時間は同じくらい」と考えていいのではないかと思います。

このように半減期はあくまでも目安であり、個人差があります。
「絶対的な数値である」「作用時間を正確に表している」と誤解しないように気を付けてくださいね。