ノイローゼとはどのような状態なのか?

ノイローゼは、日常の会話の中でもしばしば使われる用語です。

「忙しくてノイローゼになりそう」
「最近、ノイローゼ気味で・・・」

など、皆さんも耳にした事があるでしょう。

ノイローゼは元々、ドイツ語の「Neurose」という単語から来ており、これは「神経症」という意味になります。つまり、ノイローゼは疾患名の1つなのです。

現在では医学の発達とともにノイローゼ(神経症)という疾患はより細分化されるようになったため、それに伴い「ノイローゼ」は使われなくなっています。

ノイローゼとは元々は一体どのような疾患だったのでしょうか。また現在ではどのように分けられ、どのような状態がノイローゼに該当するのでしょうか。

ここではノイローゼについて、詳しく説明させて頂きます。

1.ノイローゼとは

まずは「ノイローゼ」がどんな状態を指すのかをお話します。

Ⅰ.医学用語としての「ノイローゼ」の意味

ノイローゼとは、どのような意味なのでしょうか。

ノイローゼ(Neurose)は昔に使われていた疾患名で、いわゆる「神経症(Neurosis)」と同じ意味です(Neuroseがドイツ語で、Neurosisは英語です)。

ノイローゼ(神経症)はこころの衰弱によって、不安や抑うつ、イライラなど種々の精神症状が出てしまう状態です。

その原因は様々ですが、多いのは外的ストレス(仕事、家事、育児、勉強、人間関係など)になります。

ノイローゼでこころが不安定になると様々な症状が認められます。

身体的な症状(動悸・息苦しさ・めまいなど)が認められたり、精神的な症状(不安、イライラ、焦り、落ち込みなど)が認められたりします。衝動行動(自傷行為や暴力、過量服薬など)が認められる事もあります。

ノイローゼでは様々な症状が認められますが、その根底にあるのは「不安」や「恐怖」になります。

ストレスによって、将来への強い不安や恐怖が過度に高まってしまった結果、種々の身体症状や精神症状が生じるのです。

ノイローゼは疾患ですので、ただこころが衰弱していて、身体・精神症状が認められるだけではありません。それによって生活に支障が生じている事が重要です。

例えば仕事のストレスによって不安が高まってしまい、胸がドキドキしたり、イライラや落ち込みなどが出現している。これらの症状によって仕事のパフォーマンスが明らかに低下したり、仕事に行けなくなってしまったりする場合、これはノイローゼに該当します。

Ⅱ.「ノイローゼ」は過去の疾患名

ノイローゼ(神経症)というのは昔の病名であり、今は使われていない病名です。そのため現在では使われる事はほとんどありません。

なぜノイローゼという疾患名はなくなってしまったのでしょうか。

それは、ノイローゼはその概念が非常に広く、漠然としているためです。

同じノイローゼという疾患の中でも、どのような原因でどのように不安が高まるのか、どのような症状が出るのかで治療法は異なってきます。これらをすべてまとめて「ノイローゼ」とひとまとめにするのは、あまりに強引です。

こころが衰弱するのがノイローゼだと言っても、衰弱する原因は様々です。明らかな理由がない事もありますし、人前が苦手で衰弱する人もいます。あるいは特定の状況(高所や閉所など)で衰弱してしまう人もいるでしょう。

また、こころの衰弱で生じる症状も様々です。不安や恐怖から動悸・めまいなどの自律神経症状に発展する方もいるし、強迫行為(恐怖を和らげるために特定の行為を繰り返す)に発展する方もいます。落ち込み、無気力、希死念慮などが出る方もいます。引きこもりや寝たきり、衝動的な逸脱行動などの社会的な症状が出る人もいるでしょう。

当然この各々によって適切な治療法は異なります。

「ノイローゼ(神経症)」は、このように非常に多くの状態をひとまとめにしてしまっているのです。これだと非常に分かりにくいですし、ひとまとめにして説明されてしまうと各人に最適な治療が行えなくなってしまいます。

そのため現在ではノイローゼ(神経症)という疾患名はなくなり、原因や症状によってそれぞれ具体的な疾患に細分化されるようになりました。

ざっくり言うと、ノイローゼ(神経症)に相当する病名のうち、特に「不安」「恐怖」が疾患の根底にあるものは「不安障害(不安症)」と呼ばれるようになりました。問題は「神経」ではなく、「不安」であるため、神経症という名称よりも「不安障害」の方が適切であるためです。

不安障害は更に、

などに分けられます。

また、それ以外にも

なども、元々はノイローゼ(神経症)に属する概念でしたが、現在は別個の疾患に細分化されています。

Ⅲ.ノイローゼが未だに使われているのは何故?

このようにノイローゼは過去の病名であり、現在では存在しない病名です。

しかし、ノイローゼ(神経症)という診断名が臨床でまだ使われているという現状もあります。

医師の診察を受けると、「神経症ですね」と診断される事も時にあります。

これは何故でしょうか。

実はノイローゼ(神経症)は幅広く・漠然とした概念であるがゆえに、使い勝手の良さがあるのです。

まだ細かい疾患の特定は出来ていないけども、おおよその見通しがついている際などに、「神経症」「ノイローゼ」という概念の広い病名はとても使いやすいのです。

精神疾患は初診時では確定診断がつかないこともあります。おおよそ該当する疾患の範囲は特定できても、経過をみないと細分化された疾患名までは言い切れない事があるのです。このような時、患者さんにおおよその疾患のイメージを伝えるために「ノイローゼ」の概念は役立つのです。

Ⅳ.病名のノイローゼと日常用語のノイローゼの違い

ノイローゼは元々は疾患名の1つでしたが、日常でも、

「育児ノイローゼになってしまった」
「最近、受験ノイローゼ気味」

などのように、特に医師の診断を受けていなくても日常的な用語として使われる事があります。

このような「育児ノイローゼ」「受験ノイローゼ」などは一般的に用いられる言葉ですが、正式な医学病名ではありません。

このように日常的に皆さんが使うノイローゼは、疾患としてのノイローゼの定義を満たさない程度のものも含んでいる事が多く、「こころが弱っている状態」といった程度の概念になります。

2.ノイローゼになってしまう原因は?

ノイローゼはどのような原因によって発症してしまうのでしょうか。またどのような人が発症しやすいのでしょうか。

ノイローゼはこころの衰弱が原因ですから、「どういった人のこころが衰弱しやすいのか」を考えてみると、ノイローゼになりやすい原因や傾向が見えてきます。

Ⅰ.性格

性格的に見てみると、

  • 心配性
  • 完璧主義
  • 神経質
  • 自分に厳しい

という方がノイローゼになりやすい傾向があります。

こころは精神的なストレスによって疲弊していきます。精神的なストレスとは、自分の心が不快に感じる刺激の事です。

仕事で怒られたり、評価されなかったり。人間関係で悪口を言われたり口論になったり。このような「不快な刺激」がストレスを生じさせます。

このような精神的ストレスをため込みやすい性格の方は、ノイローゼになりやすいということが出来ます。

心配性の方や神経質の方は普段から何事に対しても不安や恐怖を強く感じやすいため、こころがダメージを受けやすい傾向にあります。完璧主義の方や自分に厳しいような方は妥協ができず、完璧を目指して頑張りすぎてしまうため、これもこころが疲弊しやすい性格となります。

Ⅱ.ストレスが大きい環境

職場や家庭など、普段長く過ごす場所に強いストレスを感じている場合、ノイローゼを発症しやすくなります。

強いストレスや長期間のストレスは、こころに大きなダメージを与えるからです。

みなさんも、ストレスが高いような環境に長くいると、気持ちが落ち着かなくなったりイライラしたり、些細な事で不安になったりとしやすくなった経験はありませんか。

それは一時的にノイローゼのような症状が出ているのです。

Ⅲ.過去の不安や恐怖

これは「性格」とも重複するのですが、過去に大きな不安や恐怖を感じるような出来事があった場合、そのエピソードに影響を受けて過度に不安や恐怖を感じやすい性格が形成されてしまう事があります。

例えば小さい頃に親から家庭内暴力を受けていた方は、幼少期から常に親の顔色をうかがい、親の機嫌を損ねないように精神を張りつめて生活していた方が少なくありません。

このような生活が習慣になっていると普段リラックスすべき状況でも神経を研ぎ澄ましてしまうため、こころが疲弊しやすくノイローゼを発症しやすくなります。

Ⅳ.遺伝

ノイローゼには遺伝の影響も多少あると考えられています。

昔はノイローゼは「こころの病気」と考えられており、身体や脳には全く異常はないと言われていました。しかし近年検査機器が発達してきた事により脳の異常が報告され始めています。

脳にある「扁桃体」という部位は気分や感情、不安に関係している器官ですが、ノイローゼの方はこの扁桃体の活動性が亢進していることが報告されています。

遺伝などの先天的な理由によって、このような扁桃体の異常が生じている事もあると考えられます。

3.ノイローゼに該当する現在の各疾患について

ノイローゼ(神経症)は非常に幅広い概念です。

前述したように「ノイローゼ」と一言で言っても、その中身は人によって大きく異なるため、現在ではより細分化された病名が用いられています。

細かい病名も上げると非常に多岐にわたるのですが、ここでは代表的な疾患を紹介させて頂きます。

Ⅰ.不安障害(不安症)

特に「不安」「恐怖」が根底にある疾患は不安障害と呼ばれます。

不安障害も広い概念であるため、更にいくつかの疾患に分けられます。

などがあります。

それぞれの疾患については、リンク先記事で詳しく説明していますので、そちらをご覧下さい。

Ⅱ.強迫性障害(強迫症)

強迫性障害は、

  • 強迫観念
  • 強迫行為

を認める疾患です。

強迫観念とは、ある考えやイメージが頭から離れず、繰り返し考えてしまう事です。考える対象は多岐にわたりますが、汚染恐怖(自分が汚れてしまったのではないかという恐怖)と加害恐怖(自分が誰かと傷つけたのではないかという恐怖)が多く認められます。

強迫行為というのは、強迫観念に基づいて何度も同じ行動をしてしまう事です。例えば、「手が汚れているのではないか」という汚染恐怖に基づいて何度も何度も手を洗い続けたりします。

Ⅲ.恐怖症(限局性恐怖症)

特定の対象・状況に対してのみ、過剰に恐怖を感じる疾患です。

恐怖症には非常に多くの種類があります。比較的良く知られているものとしては、

  • 高所恐怖症(高い状況に過剰な恐怖を感じる)
  • 閉所恐怖症(閉所に過剰な恐怖を感じる)
  • 嘔吐恐怖症(自分や他者が吐く事に過剰な恐怖を感じる)
  • 先端恐怖症(鋭いもの・尖ったものに過剰な恐怖を感じる)
  • 対人恐怖症(人に対して過剰に恐怖を感じる)
  • 男性恐怖症・女性恐怖症(男性・女性に対して過剰に恐怖を感じる)
  • 動物恐怖症(特定の動物に対して過剰に恐怖を感じる)
  • 集合体恐怖症(ブツブツしたものに対して過剰に恐怖を感じる)

などがあります。

4.ノイローゼの治療法・克服法

ノイローゼはどのように治していけばいいのでしょうか。

前述したようにノイローゼは非常に広い概念であるため、それらをまとめて「こう治療します」と単純化する事は出来ません。

個々の疾患によって治療法は異なるため、詳細は当サイトの各疾患の治療法を読んでいただいたり、主治医の指示に従っていただきたいのですが、ここでは全体に共通する基本的な治療法・克服法について紹介させていただきます。

Ⅰ.薬物療法

ノイローゼにおいて薬物療法は重要な治療法の1つです。

使われるお薬としては、

などがあります。

抗うつ剤は特にセロトニンを増やす作用が優れるものを選びます。その理由は不安や恐怖はセロトニンによって調節されていると考えられているからです。具体的にはSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が良く用いられます。抗うつ剤は即効性はないものの、ゆっくり少しずつ不安や恐怖を改善させてくれるお薬になります。

また抗不安薬も有用です。抗不安薬の中でもベンゾジアゼピン系抗不安薬がよく用いられます。抗不安薬は即効性があるものも多く、早いものだと服薬後15~20分くらいで効いてくるものもあります。不安が強まってしまった時にすぐに服用して効果が得られるのも抗不安薬の利点です。しかし抗不安薬は長期間・大量に使っていると、耐性や依存性が生じてしまうことがあるため、安易に服用を続けないように注意が必要です。

耐性・・・そのお薬に身体が慣れてきてしまい、お薬の効きが段々悪くなってくること。耐性が生じるとお薬の量を増やさないと効果が得られなくなり、その結果服用量がどんどん増えてしまう危険がある。

依存性・・・そのお薬がないと心身が落ち着かなくなってしまうこと。依存が生じると、お薬の効きがなくなるとイライラ・ソワソワして落ち着かなくなったり、震え・発汗・めまい・しびれ・頭痛などの身体症状が現れてしまう。依存になってしまうとお薬をやめることが難しくなってしまう。

漢方薬は種類によっては不安を和らげる作用があり、状態によっては使用することもあります。全体的な印象としては、抗うつ剤や抗不安薬と比べるとゆっくり穏やかに効きます。

ノイローゼに該当する疾患のうち、各疾患によってお薬の有効性は異なります。

パニック障害や社交不安障害は抗うつ剤や抗不安薬が比較的有効で、多くの症例で用いられます。全般性不安障害や恐怖症に対しては、お薬はある程度有効ではあるものの、それだけでは不十分なことも少なくありません。

Ⅱ.生活習慣の改善

ノイローゼの治療に当たって意外と重要な事に生活習慣の改善が挙げられます。不安が高まってもおかしくないような生活習慣を送っている方はまずはそれを改善すべきでしょう。

多くの方が日常的に行っている行動の中には、実は不安を増悪させる行動も多くあります。

一例を挙げれば

  • 夜更かし、睡眠不足
  • 喫煙
  • 過剰なアルコール
  • 食生活の乱れ
  • 運動不足
  • ストレスを発散させる行動がない

などがあります。

睡眠が不足すれば、いつもよりイライラしたり落ち着かなくなったりと不安が高まりやすくなります。また喫煙・アルコールも短期的には気持ちを落ち着かせる作用がありますが、長期的にみればメンタルヘルス上は良い影響はなく、イライラしやすくなったり、気分の波が高まってしまいます。

食事が不規則だったり栄養バランスが悪かったりすると、脳に十分な栄養が届かなくなるため、イライラしやすくなったり不安を感じやすくなってしまいます。また適度な運動はストレス発散のためにも重要です。

みなさんも思い当たる節があるのではないでしょうか。

生活習慣に問題がないかを見直し、修正するだけでも不安は和らぎ、ノイローゼも治りやすくなります。

Ⅲ.精神療法(カウンセリング)

ノイローゼの治療は、お薬だけではなく精神療法も併用することが理想です。

精神療法はお薬と同等の効果があり、また再発予防効果でいえばお薬よりも優れていると報告されています。

一般的にお薬は効果がすぐに出ます。抗不安薬であれば服薬後数十分で効果が出てくるものもあります。また抗うつ剤も2週間~1カ月ほどで効果は表れ始めます。そのため「とりあえず症状を落ち着かせたい」という急性期(治療初期)においてはお薬を利用するのは意味のあることです。しかしお薬は中止してしまうと再発しやすいという欠点もあります。

精神療法はお薬と違って、効果が出るまでに時間がかかります。早くても数カ月はかかるでしょう。しかし精神療法の利点は、しっかりとその考え方を身につければ再発予防効果に優れているという点です。

この両者の特徴を考えると、最初はお薬で治療をはじめて精神状態が落ち着いて来たら精神療法も併用していく、という治療法が理想的でしょう。もちろん実際の治療法は患者さんの症状・状態によって異なりますが、精神療法は多くの患者さんにとって有効な治療法の1つになります。

精神療法もいくつかの方法がありますが、ここでは代表的なものを3つ紹介させて頂きます。

認知行動療法(CBT)

ノイローゼの方は、ある事象に対して「過度に不安に考えてしまう」という思考回路になっています。これは一般的な思考と比べると、「物事のとらえ方が歪んでしまっている」とも言えます。

認知行動療法は、歪んでしまった認知(物事のとらえ方)を修正していくことを目的とします。

まずは不安や恐怖が生じるメカニズムを学び、これらが生じやすい状況を客観的に見ていきます。その中で自分の不安・恐怖に対する考え方クセ(自動思考)を把握し、不安・恐怖を過剰に生じさせなくするにはどうしたらいいのか、あるいは不安・恐怖が起こりそうな時・起こった時にはどのように考えればいいのかを見直していきます。

認知行動療法については、詳しくは「認知行動療法はどのような特徴を持つ治療法なのか」をご覧ください。

暴露療法

暴露療法とは、不安を感じるような状況にあえて挑戦し、少しずつ慣れていく治療法です。

例えば社交不安障害の方が「人前で緊張して頭が真っ白になってしまう」のであれば、あえて人前で発表することを続けることによって、徐々に慣らしていき自信をつけていきます。

暴露療法のポイントは、最初は簡単なものから暴露させていき、徐々に負荷を上げていくことです。成功体験を積み重ねることにより「大丈夫!」という自信をつけていくことが大切です。

そのため、「辛いけど、何とかギリギリ耐えられる」程度のものに暴露させることが重要です。「耐えられない」ほどのものに暴露させてしまうとかえって恐怖が強まってしまうこともあり、暴露療法はこのさじ加減が非常に重要で、ここを間違えると危険です。

また段階を細かく分けて、時間をかけて少しずつ少しずつ慣らしていくようにしましょう。

例えば、

  • 最初は気の許せる家族の前で発表してみる
  • それに成功したら次は気の許せる親友1人の前で発表してみる
  • それに成功したら次は気の許せる親友2人の前で発表してみる
  • それに成功したら次は友人の前で発表してみる
  • それに成功したら次は職場の同僚の前で発表してみる

というように、少しずつ少しずつ負荷を上げていってください。

暴露療法はノイローゼにおいて有用な治療法ですが、「どのくらいのものに暴露させるのか」の判断が非常に難しいため、必ず専門家と相談しながら行うようにしましょう。

森田療法

ノイローゼでは、森田療法も有用な精神療法になります。

森田療法では、ノイローゼの症状を無理に治すことはしません。森田療法では、ストレスを受けて不安や恐怖を感じてしまったり、それに対して動悸や震えが生じたりというのは、生理的な反応(正常な反応)であると考えます。

そのため「症状を取る事」に焦点を当てるのではなく、「そのような反応にとらわれてしまうこと」が問題だと考えます。

人前で過剰に不安を感じてしまう方は、「人前で不安にならないようにしたい」「人前で動悸が出ないようにしたい」と考えるのではなく、「これは正常な反応なのだから仕方がないんだ」と不安症状にとらわれずに自分を見失わないようにします。

不安は「抑えたい」と意識すればするほど、強くなっていくという特徴があります。これを専門的には「精神相互作用」と呼びます。精神相互作用の悪循環から逃れるためには不安に蓋をして無理矢理閉じ込めるのではなく、不安をあるがままに受け入れる事が大切だと考えます。

また森田療法では恐怖や不安を過剰に感じてしまうのは、「人から良く思われたい」「より良く生きたい」という欲望があるからだと考えます。ノイローゼの方は、その思いが強くなりすぎてしまい「人から悪く思われはしないか」という恐怖になってしまっています。そうではなく、これは「よりよく生きたい」からきているものなのだということに気付くことが大切になります。

まとめると、

・不安や恐怖、それに伴う症状は生理反応なのだから、無理して抑えようとしない。
・不安・恐怖は本来、「より良く生きたい」という前向きな気持ちからきていることに気付こう

ということです。

森田療法は、神経質、心配性、完璧主義などの神経質的な性格傾向を持つ方に、特に有効であると考えられています。森田療法は、外来では患者さんは日記を書いていただき、それを治療者と確認していきながら進められていきます。

5.ノイローゼ、心身症、自律神経失調症は何が違うのか?

ノイローゼは時代の流れとともに名称が変わっているため、似たような病名がいくつかあります。

「神経症」
「ノイローゼ」
「不安障害」
「心身症」
「自律神経失調症」

これらの疾患の違いというのは、医師でも誤解されている先生もいらっしゃるほどです。

それぞれの疾患はある程度オーバーラップしているところもあるのですが、おおまかに各特徴を説明していきます。

神経症というのは、このコラムでも詳しく説明した通り、「精神(こころ)の衰弱によって種々の精神症状が出ている状態」です。

神経症は「ノイローゼ」とも言います。神経症(Neurosis)はドイツ語で「Neurose(ノイローゼ)」になります。また他にも「神経衰弱症」などと呼ばれる事もあります。

不安障害というのは、ノイローゼの概念のうち、特に不安や恐怖が根底にある事で種々の精神症状が出ている状態です。ノイローゼとほぼ似たような意味合いになり、パニック障害や社会不安障害、全般性不安障害などが該当します。

心身症というのは「精神(こころ)の衰弱によって種々の身体症状が出ている状態」を指します。例えば、ストレスによってイライラしたり不安になったといった精神症状が出現するのはノイローゼになりますが、ストレスによって頭痛が出現したり、胃潰瘍になってしまったりと身体症状が主になると心身症になります。

ただしストレスによって生じる症状は身体症状か精神症状のどちらかにキレイに分かれるものではありません。頭痛や胃痛も出るけど、落ち込みや不安も出る、と混在している事も多いものです。この場合は病名はどうなるのでしょうか。これははっきりと決まっているわけではありませんが、主な症状がどちらなのかで判断される事が多いようです。

自律神経失調症は、心身症に含まれる概念です。「精神(こころ)の衰弱によって種々の身体症状が出ている状態」のうち、心身症は器質的異常・機能的異常の両方を含みますが、自律神経失調症は機能的異常しか含みません。

器質的異常というのは、検査で異常が確認できて身体の異常が生じている状態です。例えば、胃痛がある方に胃カメラをしたら胃に潰瘍があった、頭痛の方の血圧を測ったら数値が高血圧の基準を超えていた、などです。対して機能的異常というのは検査では異常が確認できないけども身体に異常が生じている状態です。胃カメラでは異常がないけども胃が痛い、検査では異常がないけども頭が痛い、などの症状が該当します。