ユーパン錠の全て 【医師が教える抗不安薬のすべて】

ユーパン錠は抗不安薬のひとつです(抗不安薬:不安を和らげるおくすり)。

ワイパックス(一般名ロラゼパム)のジェネリック医薬品であるため、効果・効能はワイパックスと全く同じです。ちなみにユーパンは平成26年より名称変更され、現在は、ロラゼパム「サワイ」という名前になっています。

ここではロラゼパム「サワイ」(旧名:ユーパン)の効果や副作用をみてみていきます。

なお、ワイパックスと全く同じものですので、ワイパックスの記事も参考にして頂ければと思います。

▽ ワイパックスの全記事はこちらです

1.ユーパンはどんな抗不安薬?

ユーパンは、「ワイパックス」という抗不安薬のジェネリック医薬品で、沢井製薬から発売されています。

ジェネリック医薬品とは「後発医薬品」のことで、先発医薬品(ここではワイパックス)の特許が切れた後に
発売されるおくすりのことです。

ジェネリックは効果や成分は先発医薬品と同じですが、薬価が安くなっているのが特徴で、
「同じ効果で安い」ことから処方される頻度はどんどん増えています。
国も医療費削減のため、ジェネリックの処方を推奨しています。

最近はジェネリックがどんどん発売され、あまりに増えすぎたために
ジェネリック薬は「一般名+会社名」という名称に統一する流れになっています。
(一般名:国際的に決められた薬物の名称)

これは、ジェネリック薬の名称を統一して医療現場の混乱や投与ミスをなくすという狙いがあり、
ユーパンも平成26年から、ロラゼパム「サワイ」という名前に変わりました。

ユーパンは抗不安薬に分類されています。
抗不安薬は主に不安を和らげる作用があるおくすりのことです。

ユーパンの抗不安効果は、他の抗不安薬と比べると強めです。
しかし肝臓への負担は少なく、抗不安作用が強い割には肝臓への害が少ないため、
使いやすい抗不安薬だと言えます。

肝臓の疾患も持っている方や高齢で肝臓が弱っている方にも比較的処方しやすいのです。

ユーパンには他にも、筋弛緩作用(筋肉の張りを和らげる)、催眠作用(眠くする)、
抗けいれん作用(けいれんを抑える)がありますが、それらの強さは次のようになっています。

  • 強い抗不安作用
  • 中等度の筋弛緩作用
  • 弱い~中等度の催眠作用
  • 弱い抗けいれん作用

筋弛緩作用はまずまずあるため、筋肉のコリや筋緊張による頭痛などに使われることもあります。
催眠作用はあまり強くないため、睡眠薬として使われることはほとんどありません。
また抗けいれん作用も弱いため、けいれん予防のおくすりとしてもほとんど使われません。

2.ユーパンの副作用

ユーパンは副作用の多いおくすりではありませんが、副作用が無いわけではありません。
ユーパンで認められる主な副作用には次のようなものがあります。

  • 耐性・依存性形成
  • 眠気、ふらつき、めまいなど

ユーパンは不安を抑える効果が強いため、ついつい頼ってしまいやすいおくすりだと言えます。
必要以上におくすりに頼ってしまうと依存状態になってしまうため、依存形成を起こさないようには注意が必要です。

ユーパンはベンゾジゼピン系というタイプに属します。
ベンゾジアゼピン系はすべて、医師の指示を守らずに長期・大量に服薬を続けていると
「耐性形成」「依存形成」が生じる可能性があります。

耐性とは、おくすりに慣れてきて徐々におくすりの効きが悪くなってくる状態です。

依存とは、そのおくすりを手放せなくなってしまう。
飲まないといても立ってもいられず落ち着かなくなってしまう、という状態です。

耐性・依存形成を起こさないために、必ず医師の指示を守って、決められた量の内服をしてください。

また、ベンゾジアゼピン系は、

  • 抗不安作用(不安を和らげる)
  • 催眠作用(眠くする)
  • 筋弛緩作用(筋肉の緊張をほぐす)
  • 抗けいれん作用(けいれんを抑える)

という4つのはたらきがあることが知られており、ユーパンにもこれらのはたらきがあります。
そして、これらの作用に関連した副作用が時に生じます。

具体的には、

  • 催眠作用で眠気やふらつき、めまいが生じる
  • 筋弛緩作用で、ふらつき、転倒が起こりやすくなる

などです。

それぞれの副作用やその対処法を詳しくみていきます。

Ⅰ.耐性・依存性形成

多くの抗不安薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は一番の問題です。

ベンゾジアゼピン系は、無茶な使い方を続けると耐性・依存性を起こす可能性があります。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。
最初は1錠飲めば十分効いていたのに、だんだんと身体が慣れてしまい、
1錠飲んでも全然効かなくなってしまう、という状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。
アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります。
これは依存性が形成されているという事です。

抗不安薬には耐性と依存性がありますが、アルコールと比べると軽度であり、
医師の指示通りに必要な期間のみの内服にとどめていれば問題になる事はそこまで多くはありません。

耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。
アルコールも抗不安薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。
それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

また、アルコールとの併用も危険です。
アルコールと抗不安薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
基本的に抗不安薬というのは、「一時的なおくすり」です。

ずっと飲み続けるものではなく、不安の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。
(長期的に不安を取りたい場合は、抗不安薬ではなくSSRIなどが用いられます)

定期的に「量を減らせないか」と検討する必要があり、本当はもう必要ない状態なのに
漫然と長期間内服を続けてはいけません。

服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

一般的に依存性は、効果が強いおくすりほど多いため、
効果が強めであるユーパンの依存性は多めであると言われています。

依存形成を起こさないよう、注意しながら内服をしましょう。

Ⅱ.眠気、倦怠感、ふらつき、めまいなど

ベンゾジアゼピン系は、催眠効果、筋弛緩効果があるため、
これが強く出すぎると、眠気やだるさを感じます。
ふらつきが出てしまうケースもあります。

ユーパンにも筋弛緩作用や催眠作用があります。
もしこれらの症状が起こってしまったら、どうすればいいでしょうか。

もし内服して間もないのであれば、「様子をみてみる」のも手です。
というのも、おくすりは「慣れてくる」ことがあるからです。

様子を見れる程度の眠気やだるさなのであれば、1-2週間様子をみて下さい。
半数以上の例で、副作用の改善がみられます。

 

それでも眠気が改善しないという場合、次の対処法は
「服薬量を減らすこと」です。

一般的に量を減らせば作用も副作用も弱まります。
抗不安効果も弱まってしまうというデメリットはありますが、副作用がつらすぎる場合は仕方ありません。

例えば、ユーパンを1日3mg内服していて眠気がつらいのであれば、
1日量を1.5mgなどに減らしてみましょう。

また、「おくすりの種類を変える」という方法もあります。
より筋弛緩作用や催眠作用が少ない抗不安薬に変更すると、改善を得られる可能性があります。

3.ユーパンの薬価

ユーパンはジェネリック医薬品であり、薬価は先発品のワイパックスよりも安くなっています。

ワイパックス0.5mg(先発品)          6.3円
ワイパックス1.0mg(先発品)          11.5円

ユーパン0.5mg(後発品)                  5.0円
ユーパン1.0mg(後発品)                  5.6円                                        (2014年現在)

(注:ページ上部の画像はイメージ画像であり、実際のロラゼパム「サワイ」(旧名:ユーパン)錠とは異なることをご了承下さい)