不眠症なのかどうかを判断するチェックテスト

不眠に悩む方は非常に多くいらっしゃいます。

「眠れない」と自覚している方は日本人の約20%もいるという報告もあり、誰にとっても他人事ではありません。

不眠が続けば、様々な支障が生じます。気分が不安定になったり、日中の作業効率も低下します。また身体の調子も崩し、様々な身体疾患にかかるリスクが上がります。

十分に眠れない状態が続く場合、「不眠症」と診断され、お薬などの治療が行われる事があります。

しかし「眠れない・・・」という不眠の症状を自覚していても、「これって様子を見て良い程度のものなのか」「それとも治療した方がいいレベルなのか」という判断はなかなか難しいものです。

ここでは自分の「眠れない」という悩みが治療が必要な不眠症に至っている可能性が高いのかどうかをチェックする方法について考えていきます。

簡易的にチェックする方法から、詳しくチェックする方法まで、様々な角度から不眠症をチェックする方法を紹介させて頂きます。

1.不眠症を簡単にチェックする

まずは不眠症を簡単にチェックする方法を紹介します。

端的に言ってしまえば、治療が必要な不眠症というのは、次の3つを満たした状態になります。

  1. 眠れない事で自分にとっての適正睡眠時間を下回ってしまう
  2. 眠れなくて困っている、つらい思いをしている
  3. 眠れない事で生活に支障が出ている

自分の不眠が、この3つを満たしているかどうかをチェックしてみましょう。

1番目は、「寝ようとしているのに十分に眠れない」という事です。例えば、本来6時間は睡眠時間が必要な方が、眠れない事により実質4時間しか睡眠時間が取れていないといった事です。

2番目は、十分な睡眠がとれない事によりご自身が「つらい」と感じているという事です。眠れないと感じているけども、全く困っていないのであれば、それは治療する必要がない可能性があります。

「本人がつらいと感じている」という事は主観的な項目ではありますが、非常に重要なポイントです。

3番目は、十分な睡眠がとれない事によって実際に何らかの支障が出ているという事です。例えば眠れない事で学校に遅刻する事が多くなってしまっていたり、仕事のミスが増えてしまっていれば、これは実生活への支障が生じていると考えられます。

実生活への支障が生じている場合、そのままの状態が続くと本人のその後の人生に不利益をもたらす可能性が高く、治療をする必要性が高くなります。

非常に簡易的ではありますが、この3つを満たしている場合、「治療が必要な不眠症」である可能性が高いでしょう。

2.診断基準から不眠症をチェックする

ここからはより詳細に不眠症をチェックする方法を紹介していきます。

自分が不眠症に該当するのかどうかをチェックするためには、「不眠症」を定義した診断基準に自分が当てはまっているのかどうかを確認してみるという方法が有効です。

不眠症の診断基準も発行元によっていくつかあるのですが、ここでは代表的なDSM-5という診断基準を見てみましょう。

DSM-5では「不眠障害」という疾患名で定義されていますが、これはいわゆる「不眠症」と同じだと考えて問題ありません。

では、DSM-5の不眠障害の診断基準を紹介します。なお診断基準は、小難しく書かれているため分かりにくいため、後程分かりやすく説明します。

【不眠障害 診断基準(DSM-5)】

A.睡眠の量または質の不満に関する顕著な訴えが、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)を伴っている。

(1)入眠困難(子どもの場合、世話する人がいないと入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(2)頻回の覚醒、または覚醒後に再入眠できないことによって特徴づけられる、睡眠維持困難(子どもの場合、世話する人がいないと再入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(3)早朝覚醒があり、再入眠できない。

B.その睡眠の障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、教育的、学業上、行動上、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

C.その睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる。

D.その睡眠困難は、少なくとも3カ月間持続する。

E.その睡眠困難は、睡眠の適切な機会があるにもかかわらず起こる。

F.その不眠は、他の睡眠-覚醒障害(例:ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠- 覚醒障害、睡眠時随伴症)では十分に説明されず、またはその経過中にのみ起こるものではない。

G.その不眠は、物質(例:乱用薬物、医薬品)の生理学的作用によるものではない。

H.併存する精神疾患および医学的疾患では、顕著な不眠の訴えを十分に説明できない。

これらをすべて満たした場合、不眠障害の診断となります。

診断項目を1つずつ見ていきましょう。

Ⅰ.入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒のいずれかを認める

A.睡眠の量または質の不満に関する顕著な訴えが、以下の症状のうち1つ(またはそれ以上)を伴っている。

(1)入眠困難(子どもの場合、世話する人がいないと入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(2)頻回の覚醒、または覚醒後に再入眠できないことによって特徴づけられる、睡眠維持困難(子どもの場合、世話する人がいないと再入眠できないことで明らかになるかもしれない)
(3)早朝覚醒があり、再入眠できない。

不眠症は「どのように眠れないのか」で大きく3つのタイプに分ける事が出来ます。

  • 入眠障害:寝床に入ってもなかなか寝付く事ができない
  • 中途覚醒:夜中に何度も目覚めてしまい、再び眠りに入る事が難しい
  • 早朝覚醒:本来起きたい時間よりも早い時間に目覚めてしまう

不眠症と診断するためには、このいずれかの不眠が認められる事が必要です。なお、どれか1つである必要はなく、1つ以上であっても構いません。

「寝付けないし、やっと寝付けてもすぐに目覚めてしまう」など、入眠障害と中途覚醒の両方を認める不眠も少なくありません。

なお、DSM-5では入眠障害ではなく「入眠困難」と表現していますが、ほとんど同じ意味だと考えて問題ありません。

Ⅱ.不眠によって困っている・生活に支障が生じている

B.その睡眠の障害は、臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、教育的、学業上、行動上、または他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている。

不眠の症状があったとしても、それが実質何の問題も引き起こしていないのであれば、不眠を治療する必要性はありません。

治療が必要な不眠というのは、

  • 本人が困っている
  • 生活に支障が出ている

と、本人に何らかの不利益が生じている必要があります。

「眠れない事で、毎日がとても辛い」「眠れないせいで、仕事のミスが増えている」という状況であれば、これは治療しないと本人の生活の質が下がってしまいます。

しかし「眠れないけど、別にそれで困っている事はない」という事であれば、これを無理矢理治療する必要性はないでしょう。

Ⅲ.不眠が頻回に、長期間続いている

C.その睡眠困難は、少なくとも1週間に3夜で起こる。

D.その睡眠困難は、少なくとも3カ月間持続する。

たまに眠れないくらいであれば、生活に大きな支障をきたす事はありません。また誰でもたまに眠れない事はあるもので、1回眠れなかっただけで不眠症になるわけではありません。

不眠症と診断するためには、不眠が頻回に生じていて、それが一定期間続いている必要があります。

診断基準的には、

  • 週に3回以上
  • 3か月以上

を1つの基準としています。

これは目安にはなりますが、臨床上はこれ以下でも診断する事はあります。たとえば明らかに生活に大きな支障をきたすような不眠があるのに「まだ2か月半しか経ってないからあなたを不眠症と考える事はできません。よって治療も出来ません」と機械的に判断してしまうと、本人をいたずらに苦しめる事になってしまいます。

このような場合は基準を正確には満たしていなくても、不眠症と考えて治療をする事もあります。

数字はあくまでも1つの目安で、この項目で言いたい事は、「不眠がたまたま生じているわけでなく、ある程度の期間・ある程度の頻度で生じ続けている」という事になります。

Ⅳ.眠るための時間が確保されていても生じる

E.その睡眠困難は、睡眠の適切な機会があるにもかかわらず起こる。

当たり前の事ですが、不眠症は「ちゃんと眠るための時間が確保されているのに眠れない」という状況です。

「仕事で忙しくて1日3時間しか睡眠時間が取れない」という状況は、そもそも睡眠時間が確保されていないから睡眠時間が少ないだけであり、これは不眠症にはなりません。

この場合は不眠症の治療をするのではなく、仕事量を調整するなどして睡眠時間を確保する事が必要になります。

ちゃんと眠るための時間を取っているのに、その間に十分に眠れない、というのが不眠症です。

Ⅴ.明らかな他の原因で眠れないわけではない

F.その不眠は、他の睡眠-覚醒障害(例:ナルコレプシー、呼吸関連睡眠障害、概日リズム睡眠- 覚醒障害、睡眠時随伴症)では十分に説明されず、またはその経過中にのみ起こるものではない。

G.その不眠は、物質(例:乱用薬物、医薬品)の生理学的作用によるものではない。

H.併存する精神疾患および医学的疾患では、顕著な不眠の訴えを十分に説明できない。

不眠が生じるような病気によって眠れないのであれば、これは不眠症ではなく、その病気に伴う症状だと言えます。この場合は、治療法はその病気を治療する事で、単に「眠れない」という症状だけ治そうとするのはあやまりである可能性があります。

また、脳を覚醒させるような物質を摂取しているから眠れないのであれば、それも不眠症ではありません。分かりやすい例でいえば、カフェインをたくさん摂取して寝ようとしても脳が覚醒してしまうため眠りにくいでしょう。これで「眠れません」となっても不眠症ではありません。

「他の病気ではないか」という判断は医師に確認してもらわないと分からず、セルフチェックでは正確には把握できないところではありますが、少なくとも不眠症状がありうるような疾患を持っている方であれば、その疾患によるものの可能性がないのかは確認しておく必要があります。

また脳を覚醒させる可能性があるお薬や物質(タバコやカフェインなど)を夜間に摂取している方も、それが原因で不眠になっているのではないのかを確認する必要があります。

以上をすべて満たした場合、診断基準的に「不眠障害」に該当すると判断されます。

3.質問紙検査から不眠症をチェックする

不眠症をチェックするための質問紙検査もいくつかあります。このようなチェックテストをやってみることも有用です。

ここでは代表的な検査である「アテネ不眠尺度(AIS)」を紹介します。

【アテネ不眠症尺度】

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【アテネ不眠尺度 判定】
1~3点:問題なし
4~5点:不眠症の疑いが少しある
6点以上:不眠症の可能性が高い