全般性不安障害ではどのような症状が生じるのか

様々なことに対して過剰に不安になってしまう疾患を全般性不安障害と呼びます。

全般性不安障害で生じる主な症状は「不安」「心配」なのですが、この疾患の症状は病気だと気付かれにくいため注意が必要です。不安といっても、パニック発作のような派手な不安発作が出るわけではありません。全般性不安障害の不安は、対象が特定されずに様々なことに対して漠然と出現するため、一見すると派手さのない地味な症状なのです。

この症状の乏しさから、病気だとは認識されずに「ただの性格の問題」と片づけられてしまうこともあります。

しかし全般性不安障害の不安は、外見上地味なだけです。実際に「軽い病気」というわけではありません。漠然と長期間にわたって不安に襲われるというのはとてつもない苦痛です。

全般性不安障害の症状を正しく知ることは、病気に早期に気付くために大切なことです。今日は全般性不安障害で認められる代表的な症状や、その特徴についてお話します。

1.様々なことへの不安が慢性的に続く

全般性不安障害は不安障害に属する疾患です。不安が主な症状になりますが、他の不安障害で生じる不安とは異なる点がいくつかあります。

不安障害というと「パニック障害」や「社交不安障害」が代表的ですが、これらの疾患で出現する不安はとても分かりやすいものです。パニック障害は、特に閉鎖空間で恐怖が増悪しやすく(広場恐怖)、「パニック発作」という分かりやすい症状が出ます。社交不安障害も「他者からの評価を受ける状況」という特定の状況で不安や恐怖が増悪するため、気付かれやすさがあります。

分かりやすい症状であるため、「これは大変だ」「困っている」と自分も周囲も気付きやすく、そのため治療も導入されやすいのです。

しかし、これらの不安障害と比べると全般性不安障害の不安は非常に分かりにくい不安が出現します。

全般性不安障害の不安は、対象が限定されず、様々なことに対して漠然と不安を感じたり心配になったりします。不安の内容も正常であり、異常な出来事に対して不安になったり突飛な事に対して不安になったりするのではなく、普通の人でも不安になるようなことに対して不安を感じます。

「将来が不安だ」
「今月の売り上げが不安だ」
「来月の試験が心配だ」
「自分のこれからの健康が心配だ」

こういった不安は、一見すると普通の不安に見えますよね。誰だって、自分の将来には多少の不安を感じているものです。仕事に対してもいつも多少の不安はあるのが普通でしょう。自分の身体の健康もいつも気がかりなものです。

不安の対象だけを見ると「そんな不安、誰にでもあるものだよ」と思われてしまうようなものばかりであり、病的な不安だとは分かりにくいのです。そのため、「この人はちょっと心配性なだけ」と片づけられてしまい、病気だとは気付かれにくいのが全般性不安障害の怖いところです。自分自身でも、「自分は心配性なだけ」と思っており、病気だとは思っていない方も少なくありません。

しかし全般性不安障害の不安は、やはり病気として考える必要があります。確かに不安や心配の対象は正常なのですが、その程度が強く、またその不安・心配を放置することによって生活に様々な支障が出現する可能性が高いからです。

正常範囲内の心配症なのであれば、不安・心配を感じていたとしても、それに対して大きな苦痛を感じることはありませんし、これらの不安・心配が原因で生活に支障を来たすことはありません。

しかし全般性不安障害の方の場合は、こういった不安・心配が原因で、いつもこころがザワザワして落ち着かなかったり、仕事など集中しなくてはいけないところでも集中できなかったり、不安で仕方なくて夜に眠れない日が続いたりするのです。

更にこのような症状で、仕事が出来なくなってしまったり、日常生活を十分に送れなくなってしまうこともあるのです。

全般性不安障害で認められる不安は、

・内容は正常の人にも認められるようなものが多い
・しかしその程度は正常の人と比べて明らかに強い
・不安が漠然と長期間続き、とても苦しい思いをする
・その不安によって生活に支障が生じる可能性がある

という特徴があります。

2.不安に伴って二次的に生じる症状もある

全般性不安障害の主症状は不安ですが、不安に伴って二次的に他の症状も出現することがあります。

その内容は大きく分けると2つに分けることが出来ます。

・不安・心配に伴う精神症状
・不安・心配に伴う身体症状

それぞれ詳しくみていきましょう。

Ⅰ.不安・心配に伴う精神症状

不安や心配が常に頭から離れなくなってしまうと、平常な精神状態ではいられません。ソワソワと落ち着かなくなったり、全身が緊張しっぱなしになったり、神経がいつも張っているような感覚が続くことになります。

そこから、集中力低下や意欲低下、易怒性(イライラ)が生じたり、二次的にうつ症状が出現することもあります。

Ⅱ.不安・心配に伴う身体症状

身体的には、不安や心配で常に気が張っている状態であるため、筋肉の過緊張が認められます。

それに伴い、疲れが取れなかったり、夜によく眠れなかったりするようになります。

また筋肉の過緊張によって、震えやけいれん、頭痛や筋肉痛、異常感覚(ヒリヒリ感や痛みなど)を生じることもあります。

3.全般性不安障害の症状はどのように経過するか

全般性不安障害の症状についてみてきました。

全般性不安障害の不安の特徴は、インパクトに欠けることです。一見すると「普通の不安」にも見えるものであり、そのため本人も周囲も病気だと気付きにくいのです。しかしこれを放置していると、徐々に苦しみが強くなり、日常生活に様々な支障を来たすようになります。

全般性不安障害は、他の不安障害と比べると「地味にダラダラと続く」ような疾患です。いつから発症したのかは明確には分からず、数年の経過で波がありながら、慢性的に続くような経過をたどります。

同じ不安障害でも、パニック障害や社会不安障害は発症時期は割と明確です。

「20歳の時にパニック発作が初めて起こった」「中学2年生の時に初めて人前で強い恐怖に襲われた」などとはっきりと発症時期を覚えている患者さんもいらっしゃいます。しかし全般性不安障害は、「20代の後半くらいから徐々に心配事が多くなってきた気がします。というような伝え方をする患者さんが多く、明確にいつから発症していたのかが分かりにくい疾患なのです。

経過に関しても、未治療の全般性不安障害は良くなったり悪くなったりの波を繰り返しながら、徐々に悪化の傾向をたどっていくという経過です。自然と良くなる時期もあるため、「やっぱり気の持ちようなんだ」と考えてしまい、病気だとは思わずに病院受診をしない方も多いのです。

これもパニック障害や社会不安障害とは異なります。これらの疾患は、基本的にはどんどん悪化していきます。最初は多少の閉鎖空間だったらパニック発作は起きなかったのに、治療せずに放置していると、次第にちょっと恐怖を感じただけでも発作が起こるようになってしまいます。どんどん悪化するため、「これはおかしい」と気付きやすく、病院受診にもつながりやすいのです。

このように全般性不安障害は、病気だと気付きにくい経過をたどります。しかしこれはやはり病気であり、適切に治療をしないと徐々に悪化していってしまいます。

過剰に不安や心配を感じてしまい、徐々に悪化している感じがあってつらさを感じている。そして日常生活にも支障が出ている。このような場合は、ただの心配性ではなく全般性不安障害の可能性があります。一度精神科を受診して、専門家に相談してみましょう。