ロヒプノールの副作用と対処法【医師が教える睡眠薬の全て】

ロヒプノールはベンゾジアゼピン系という種類に属する睡眠薬です。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は効果も良く、重篤な副作用も少ないため、不眠治療によく使われています。

しかし副作用ないわけではありませんので医師の指示の元で、正しく使う必要があります。

ロヒプノールはベンゾジアゼピン系睡眠薬の中で、効果が強い部類に入ります。眠らせる力に優れる事はありがたいのですが、逆に考えれば強力に鎮静をかけるため副作用も多いということが言えます。

実際にロヒプノールは他のベンゾジアゼピン系睡眠薬より問題となることが多いようで、米国では、ロヒプノールはⅣ級指定薬物に認定されており、依存や乱用の問題から合法的に入手することはできない違法薬物という扱いになっています。

旅行などでも持ち込めませんので、気を付けてくださいね。

正しく使えば不眠改善にとても役立つおくすりですが、誤った使い方をすると副作用に苦しみやすいおくすりでもあるのです。

ここでは、ロヒプノールの副作用を紹介し、その対処法についても考えていきたいと思います。

1.ロヒプノールの副作用とその対処法

どんなおくすりにも副作用が必ずあります。
副作用が全く無いおくすりなどありません。

しかし、だからと言っておくすりが「怖い」「使わない方がいい」というわけではありません。
効果と副作用をしっかり見極めて、必要なときは使い、不要になったら漫然と使い続けないことが
大切です。

ロヒプノールは、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の中でも、眠らせる効果が強いと言われています。
ジアゼパム(商品名:セルシン・ホリゾン)の約10倍の効果があるという報告があります。

強力な催眠効果があることは、不眠で苦しむ患者さんにとっては大きな助けになりますが、
効果が強いという事は、依存や乱用につながりやすいということでもあります。

他のおくすりでも同じですが、ロヒプノールを服薬する場合は、
必ず医師の指示に従い、自分で勝手に量を調整したりしないように特に気を付けましょう。

ここでは、臨床で見られるロヒプノールの副作用を紹介していきます。
また、副作用が出てしまったときの対処法についても考えていきましょう。

Ⅰ.眠気

睡眠薬の副作用で、一番多いのが眠気です。
ロヒプノールも睡眠薬ですから当然、眠気が生じます。

夜に睡眠薬を飲んで眠くなる。
これは「効果」ですから問題ありませんよね。

しかし、「起床時間になってもまだ眠くて起きれない」「日中眠くて仕事に集中できない」
となるとこれは問題で、副作用と判断されます。

日中まで睡眠薬の効果が残ってしまう事を「持ち越し効果(hang over)」と呼びます。
眠気だけでなく、だるさや倦怠感、ふらつき、集中力低下なども生じます。

持ち越し効果は、半減期(薬が効く時間の目安)の長い睡眠薬で多く認められます。
ロヒプノールは半減期が約7時間であり、持ち越しを起こす頻度はそこまで多くはありません。

しかし、睡眠時間が短めの方や、おくすりを分解する力が弱い方などは持ち越しが
起こりやすくなります。

例えば4-5時間睡眠といったショートスリーパーであれば、持ち越す可能性は高くなってきます。

おくすりを分解・排泄する力が弱い人というのは、元々の体質もありますので、
いつもおくすりが効きやすいという方はあらかじめ主治医に伝えておくべきでしょう。

他にも肝臓や腎臓が弱っている方は、分解・排泄能力が落ちてしまいますので
持ち越し効果が起こりやすくなります。

眠気が日中に持ち越してしまう場合、一番の対処法は「睡眠時間をより多くとる」ことです。

例えば、6時間睡眠で、翌朝に持ち越してしまっているようであれば、
7-8時間と睡眠時間を増やしましょう。

当たり前のことですが、睡眠時間を多く取れれば持ち越しは起きにくくなります。
これが、一番間違いのない対処法になります。

どうしても睡眠時間を確保できない、という方は
半減期のより短い睡眠薬に変えることが次の対策になります。

ロヒプノールは半減期が7時間ですから、

半減期が約6時間のデパス、
半減期が約5時間のルネスタ

あたりが候補になるでしょう。

レンドルミンも候補に挙がります。
レンドルミンの半減期は約7時間と同じくらいですが、効果は一般的にロヒプノールより弱いため、
レンドルミンに切り替えることで眠気が改善する可能性はあります。

また、服薬量を減らしてみるという手もあります。

例えばロヒプノール1mgを内服しているのであれば0.5mgにしてみます。
量を減らすと効果も弱くなってしまいますが、おくすりの体感的な効きは多少短くなります。

Ⅱ.耐性・依存性形成

ベンゾジアゼピン系睡眠薬は、耐性や依存性が形成されることがあります。
多くの睡眠薬に言える事ですが、長期的に見ると「耐性」「依存性」は睡眠薬の一番の問題です。

昔に使われていたバルビツール系睡眠薬などと比べると、ベンゾジアゼピン系睡眠薬の
耐性・依存性形成はかなり少なくなりましたが、起こさないわけではありません。

特にロヒプノールは、その「キレの良さ」「効果の強さ」から依存になりやすいおくすりですので、
一層の注意が必要です。

冒頭に書いたようにロヒプノールが米国で使えなくなった理由も、
「依存してしまう人が多い」「乱用してしまう人が多い」からでした。

耐性というのは、身体が徐々に薬に慣れてしまう事。
最初は1錠飲めばぐっすり眠れていたのに、だんだんと身体が慣れてしまって
2錠、3錠飲まないと眠れなくなり、必要量がどんどん増えてしまう状態です。

依存性というのは、次第にその物質なしではいられなくなる状態をいいます。

耐性も依存性もアルコールで考えると分かりやすいかもしれません。
アルコールにも強い耐性と依存性があります。

アルコールを常用していると、次第に最初に飲んでいた程度の量では酔えなくなるため、
次第に飲酒量が増えていきます。これは耐性が形成されているという事です。

また、飲酒量が多くなると、飲酒せずにはいられなくなり、常にアルコールを求めるようになります、
これは依存性が形成されているという事です。

耐性、依存性は、

  • 睡眠薬の効果が強いほど起こりやすい
  • 睡眠薬の量が多いほど、服薬期間が長いほど起こりやすい
  • 睡眠薬の半減期が短いほど起こりやすい
  • 非ベンゾジアゼピン系よりもベンゾジアゼピン系の方が起こりやすい

と考えられています。

そのため、特に気を付けるべきなのが超短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬を
大量に飲んでいるケースです。
ハルシオンの長期・大量服薬などでは特に気を付けないといけません。

ロヒプノールもベンゾジアゼピン系であり、効果も強いため、
耐性・依存形成には注意をしながら使用しなくてはいけません。

睡眠薬で耐性・依存を形成しないためには、まず「必ず医師の指示通りに服用する」ことが鉄則です。
アルコールも睡眠薬も、量が多ければ多いほど耐性・依存性が早く形成される事が分かっています。

医師は、耐性・依存性を起こさないような量を考えながら処方しています。
それを勝手に倍の量飲んだりしてしまうと、急速に耐性・依存性が形成されてしまいます。

アルコールとの併用も危険です。
アルコールと睡眠薬を一緒に使うと、これも耐性・依存性の急速形成の原因になると言われています。

また、「漫然と飲み続けない」ことも大切です。
睡眠薬はずっと飲み続けるものではなく、不眠の原因が解消されるまでの「一時的な」ものです。

定期的に「睡眠薬の量を減らせないか」と検討する必要があり、
本当はもう睡眠薬が必要ない状態なのに漫然と内服を続けているということは避けるべきです。
服薬期間が長期化すればするほど、耐性・依存形成のリスクが上がります。

Ⅲ.もうろう状態、一過性前向性健忘

睡眠薬を内服したあと、自分では記憶がないのに、歩いたり人と話したりする事があります。
これも超短時間型のベンゾジアゼピン系(ハルシオンなど)を多量に摂取しているケースで多いと言われています。

ロヒプノールは分類的には中時間型ではあるものの、半減期は7時間と短時間型に近く、
効果も強いため、時にこのような健忘を起こします。

その頻度は多くはありませんが、注意は必要です。

睡眠薬は脳を中途半端に眠らせてしまう事があり、
この中途半端な覚醒状態が「もうろう状態」「一過性前向性健忘」を引き起こします。

この「中途半端な覚醒状態」は睡眠薬の内服直後に一番起こりやすいと言われています。

内服直後は、おくすりの効きがまだ不十分な時間帯だからです。
睡眠薬は中途半端ながらも効いているため、身体は動くんだけど
脳はほとんど眠ってしまっているため記憶には残りません。

これが、もうろう状態や一過性前向性健忘の正体です。

ロヒプノールでこれらの症状が起こってしまったら、量を減らすか、
作用時間のより長い睡眠薬へ切り替える事が対応策となります。

ロヒプノールより半減期がやや長いものというと、
リスミー、ロラメット/エバミール、ユーロジンなどが睡眠薬が候補に挙がります。

健忘が起こると、自分は全く覚えていないため、
患者さんは「自分がおかしくなってしまったのでは・・・」と不安になりますが、
睡眠薬が中途半端に効いた結果起こっただけですので、心配はいりません。

脳がおかしくなってしまったのではなく、睡眠薬の副作用で起こっただけです。
この状態を放置すれば問題となりえますが、
眠剤を変えたり量を減らしたりと適切な対応を取れば後遺症が残ったりすることはありません。