シアナマイド内用液の副作用と対処法【アルコール依存症治療薬】

シアナマイド内用液(一般名:シアナミド)は1963年から発売されている抗酒薬(アルコール依存症治療薬)になります。

シアナマイドは上手に利用すればアルコール依存症の治療に効果を発揮しますが、一方で正しい知識を持って使用しないと危険もあるお薬です。

シアナマイドにはどのような副作用があるのでしょうか。そして安全に使用するためにはどのような事に気を付ければいいのでしょうか。

ここではシアナマイドの主な副作用や、その対処法について紹介していきます。

1.シアナマイドの副作用の特徴

副作用の無いお薬は無く、どんなお薬にも必ず副作用はあります。シアナマイドも同様で副作用が生じる可能性のあるお薬です。

特にシアナマイドは、正しい知識を持って医師の指示通りに用いないと危険なお薬になります。

ではシアナマイドはどのような副作用があり、どのような事に注意すればいいのでしょうか。

シアナマイドは基本的には副作用が少ないお薬です。そのため、正しく服用すれば大きな問題が生じる事は稀です。

生じうる副作用としては、

  • 頭痛
  • 脱毛
  • 味覚障害
  • 肝機能障害
  • 吐き気、倦怠感
  • 発疹

などが報告されていますが、その頻度は多くはなく、また程度も軽いものがほとんどです。

シアナマイドの副作用でもっとも注意しなければいけないのは、シアナマイド服用中にアルコールを摂取してしまった場合になります。

シアナマイドは、アルコールの分解を抑える作用を持つお薬です。アルコールを分解できなくなってしまうため、少量のアルコールが体内に入っただけで急性アルコール中毒のような不快症状が出るようになります。

シアナマイドは、アルコールを飲み過ぎた際に経験するような不快な症状、例えば、

  • 動悸
  • 呼吸困難
  • 吐き気
  • 頭痛

などが少量のアルコールを摂取しただけで生じ、更にひどい場合だと

  • 呼吸抑制
  • 意識障害
  • 痙攣

などが生じる事もあります。

これによりアルコールが飲めなくなります。またアルコールに対する不快なイメージを患者さんに意識付ける事もできます。

ここからも分かるように、シアナマイドはかなり懲罰的な治療法になります。無理矢理アルコールを受け付けない身体にさせ、アルコールを飲んだら不快な症状が出てしまう身体にさせるという治療法なのです。

シアナマイドを服用する場合は、この事をしっかりと理解しておく必要があります。

「シアナマイドはアルコールを飲めない身体にしてしまうお薬」
「シアナマイドを服用してアルコールを飲むと重篤な症状が出てしまう事がある」

このような知識を正しく持つようにしましょう。

正しい知識がない患者さんがシアナマイドを服用し、その後にアルコールをいつものように大量に飲んでしまうと、最悪の場合では命に関わる事もあり得ます。

また「シアナマイドを飲んだら飲酒してはいけない」と分かっていても、理解が不十分だと、気付かずにアルコールを含む食品を摂取してしまったり、アルコールを含む物質を身体に付けてしまう事で不快症状が出現してしまう事もあります。

例えばシアナマイド服用中に、

  • アルコールを使った料理を食べてしまった
  • アルコールを使ったお菓子を食べてしまった
  • アルコールを使った化粧品を身体に塗ってしまった

という場合も、同様に不快症状が出てしまいます。

シアナマイドを使用する際には、ただ「アルコールを飲んではいけない」というだけでなく、「アルコールを含むものを塗布・摂取してはいけない」という事をしっかりと意識しておく必要があります。

2.アルコール摂取による不快症状を防ぐために

シアナマイドの副作用でもっとも注意すべきなのは、アルコールを併用した際に出現しうる不快症状になります。

この副作用を生じさせないために、大切なポイントをお話します。

Ⅰ.治療の意志のある人にしか投与しない

シアナマイドは、アルコールの分解を抑えるお薬です。

シアナマイドを服用すると、摂取したアルコールを分解できなくなるため少量のアルコールを服用しただけで、酔っ払い過ぎた時のような不快な症状が出ます。それなりの量のアルコールを服用してしまうと、意識を失ったり、痙攣や不整脈が生じる事もあり、危険です。

ここから、シアナマイド服用中はアルコールは絶対に飲んではいけない事が分かります。

シアナマイドはアルコール依存症の治療薬として用いられますので、服用する人は基本的にアルコールに対して依存している人たちです。

アルコール依存症の方でも、お酒をやめたいという意志をしっかりと持っている方は、服用しても良いのですが、治療意欲の低い方(例えば家族に言われて嫌々治療をしている方など)には服用させるべきではありません。

そのような方は治療者の指示に従わずに飲酒してしまう事も多いため、危険だからです。

実際、シアナマイドと同じような作用機序をもつ「ノックビン(一般名:ジスルフィラム)」の効果をみた研究報告では、

  • 意志薄弱な本質的中毒患者
  • 性格異常を基盤とした中毒患者

にはノックビンの効果はほとんどなかった事が確認されています。これはシアナマイドでも同様の結果になると考えられます。

Ⅱ.身の回りにアルコールを置かない

アルコールに依存していまっている状態だと、たとえ患者さん本人が「アルコールを辞めたい」という意志を持っていても、ついアルコールを手にしてしまう事があります。

しかしシアナマイドを服用している時に飲酒をする事は危険です。

そのような事態にならないため、シアナマイドを服用中は、身の回りにアルコールを一切置かない事が大切です。

飲酒用のアルコールを置かない事はもちろんのこと、アルコールが含まれている食べ物や料理用に使用するアルコール、アルコールを含む化粧品などもあやまって服用・使用しないように、身に回りから片付ける必要があります。

Ⅲ.本人だけでなく家族などの周囲も理解を深める

シアナマイドを服用中の方がアルコールを服用してしまうと、どのようになってしまうかというのは本人だけでなく家族など周囲にいらっしゃる方々も知っておくとなお良いでしょう。

身の回りにアルコールを置かない事を協力できますし、万が一アルコールを摂取して重篤な状態になってしまった時もすぐに気づく事が出来る可能性が高くなるからです。

3.その他の副作用とその対処法

シアナマイドでもっとも注意すべき副作用は、シアナマイド服用中にアルコールを摂取してしまう事で出現する不快症状です。

それ以外の副作用は大きなものはありませんが、それ以外にもシアナマイドで時折生じる副作用について紹介させていただきます。

Ⅰ.肝機能障害

シアナマイドの服用を長期間続けていると、肝臓の細胞が変性してしまい、肝臓の炎症や線維化を引き起こしてしまう事があります。

肝機能が障害されると、

  • 倦怠感
  • 吐き気
  • 食欲不振

などの症状が出ます。

シアナマイドによる肝機能障害の副作用を見落とさないためには、定期的に肝機能を血液検査でチェックする事が大切です。

肝機能障害が軽度である場合は慎重に様子を見る事もありますが、シアナマイドで肝機能障害を認めた場合は原則としてシアナマイドを減薬あるいは中止すべきになります。

Ⅱ.味覚障害

頻度は多くありませんが、シアナマイドは時に味覚障害(味を感じにくくなる)が生じる事があります。

味覚障害が生じる原因ははっきりと分かっていません。

味覚障害の程度が軽ければそのまま様子をみていても構いませんが、生活に支障をきたすようであればシアナミドを減量あるいは中止するしかありません。

Ⅲ.発疹

シアナマイドを服用後、特に初期に発疹を認める事があります。

発疹の多くは自然と改善していくため、発疹が軽いものであれば少しの間様子をみても問題はありません。

ただし発疹がどんどん広がっていくようであったり、かゆみや痛みなどの不快な症状を伴う場合は、

  • 皮膚粘膜眼症候群(SJS:Stevens-Johnson症候群)
  • 中毒性表皮壊死融解症(TEN:Toxic Epidermal Necrolysis)
  • 落屑性紅斑

といった重篤な副作用に進展する事もあるため、速やかにシアナマイドを中止する必要があります。