ベタナミンの副作用と対処法

ベタナミンは1981年から発売されているお薬で、主にナルコレプシー(過眠症の1つ)の治療薬です。

「精神刺激薬」という種類に属し、脳の覚醒レベルを上げる事によって過眠症の眠気を改善させます。

過眠症の1つであるナルコレプシーでは、日中に耐えがたいほどの強い眠気が生じます。仕事中や運転中などに急に眠りに落ちてしまう事もあるため事故や怪我につながる可能性もあり、適切な治療が必要になります。

ベタナミンは古いお薬であり注意すべき副作用も多いため、現在では多くは用いられていません。しかし他のお薬で改善が不十分である時などでは慎重に使用される事があります。

ベタナミンを服用する際には、どのような副作用が生じうるのでしょうか。また対処法としてはどのような方法があるのでしょうか。

ここではベタナミンで生じる副作用とその対処法について紹介させていただきます。

1.ベタナミンの副作用の特徴

副作用の無いお薬はありません。どんなお薬もお薬である以上副作用があります。

お薬を服薬する上で大切なことは、ただ漠然と副作用を怖がるのではなく、そのお薬で得られるメリット(効果)と生じうるデメリット(副作用)の両者をしっかりと理解することです。その上で自分にとってそのお薬が必要なのかを総合的に考え、必要なのであれば副作用に注意しながらも必要な期間はしっかりと服用する事です。

本当はお薬が必要な状態なのに副作用が怖いからとお薬を使わずに経過してしまうと、病気が慢性化したり悪化してしまうこともあります。これではお薬の副作用は避けられたかもしれませんが、病気の症状に苦しむことになってしまいます。

ベタナミンの服用を検討している方でもこれは同じです。お薬によって得られるメリット(効果)とデメリット(副作用)をしっかりと理解し、その上で服用すべきなのかどうかを主治医と一緒に冷静に考えていきましょう。

ベタナミンは主にナルコレプシーの治療薬として用いられるお薬です。うつ病に対しての適応も有していますが、現在ではうつ病に対してはほとんど使われていません。

ベタナミンは効果は比較的しっかりしているのですが注意すべき副作用も多く、その使用はとりわけ慎重に考えないといけません。

ナルコレプシーの主な症状は「日中の耐えがたいほどの強い眠気」で、これはオレキシンという脳を覚醒させる物質が減少しているために生じると考えられています。

ベタナミンは脳を覚醒させる物質の1つである「ドーパミン」を増やす事によって、脳の覚醒レベルを上げ、眠気を改善させるお薬になります。

ナルコレプシーはこのような機序で眠気を改善させますが、覚醒レベルを上げるベタナミンには副作用もあります。

ベタナミンは、脳を含めた身体全体を覚醒状態にし過ぎてしまう事で副作用が生じる事があります。

具体的には、

  • 口渇
  • 不眠
  • 動悸
  • 胃腸障害
  • 発汗

などがあります。

これらの副作用が生じる理由は、覚醒レベルが上がっている状態として、緊張・興奮状態を考えてみると分かりやすいでしょう。例えば大勢の前で発表をしている時であったり、相手と激しい口論をしている時などです。

このような状態では口が乾いたり、動悸がしたり、汗をかいたりします。また夜になっても脳が興奮して眠れないという事もあるでしょう。この状態を強制的に引き起こしているのがベタナミンのようなお薬なのです。

また、これらの副作用以外にもベタナミンで気を付けないといけない副作用としては、

  • 耐性
  • 依存性

が挙げられます。

ベタナミンは脳を覚醒させるお薬で、これは医療的には「精神刺激薬」と呼ばれていますが、いわゆる「覚せい剤」と基本的な機序は似ています。

もちろん医師の指導の下で治療目的で使われるわけですから、乱用されているような覚せい剤と同じ危険性ではありませんが、覚せい剤に耐性・依存性があり社会的な問題となっているのと同様に、ベタナミンにもそのような事が生じうるリスクはあるという事は知っておく必要があります。

ちなみに耐性とは、お薬の服薬を続けていくと徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくることです。耐性が形成されてしまうと同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量服薬につながりやすくなります。

依存性とは、お薬の服薬を続けていくうちにそのお薬を手放せなくなってしまうことです。依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまうようになります。こうなってしまうとお薬をやめる事が出来なくなり、常にお薬を求めるようになってしまいます。

耐性も依存性も、乱用(用法・用量を守った使い方をしない事)を続けていると生じやすくなる事が知られており、また大量・長期の服用で生じやすくなる事が知られています。

そのためベタナミンは必要な量のみ、専門家の指導の下で正しく使う必要があります。

更にベタナミンは肝臓に負担がかかりやすいお薬であり、服用を続けていると肝機能障害が発症する可能性があります。

頻度は多くはないものの重篤な肝機能障害にて死亡例の報告もあり、このようなリスクからアメリカなど海外のいくつかの国ではベタナミンは現在発売中止となっています。

まとめると、ベタナミンはナルコレプシー治療薬の中で、効果は比較的しっかりしているものの、

  • 耐性・依存性
  • 重篤な肝機能障害

といった副作用にリスクが高いため、現在では積極的に用いられる事は少ないお薬になります。

他のナルコレプシー治療薬で効果不十分なケースや、他のナルコレプシー治療薬が何らかの理由で使えない時には検討されるお薬になりますが、最初から積極的に検討するような治療薬ではありません。

2.ベタナミンの各副作用について

次にベタナミンで生じうる副作用や注意すべき副作用を1つずつ紹介させて頂きます。また一般的に取られている対処法も合わせて紹介させていただきます。

Ⅰ.耐性・依存性

ベタナミンには耐性・依存性があります。

長期間服用する事が多いナルコレプシーの治療薬において、耐性・依存性はもっとも注意すべき副作用です。

耐性とは、お薬の服薬を続けていくと徐々に身体がお薬に慣れていき、お薬の効きが悪くなってくることです。耐性が形成されてしまうと同じ効果を得るためにはより多い量が必要となるため、大量処方につながりやすくなります。

依存性とは、お薬の服薬を続けていくうちにそのお薬を手放せなくなってしまうことです。依存性が形成されてしまうと、お薬を飲まないと精神的に不安定になったり、発汗やふるえといった離脱症状が出現してしまうようになります。こうなってしまうとお薬をやめる事が出来なくなり、必要以上にお薬を求めるようになってしまいます。

耐性も依存性も形成されてしまうと、乱用や大量服薬につながりやすく、心身に大きな負担と苦しみをかける事になります。

ベタナミンは耐性・依存性があるお薬であり、服用に当たってこのようなリスクがある事は念頭においておくべきです。

耐性・依存性を予防するには、何よりも主治医の指示にしっかりと従う事が大切です。自分の勝手な判断でたくさん飲んでしまったり、適当に飲んだりという事はしてはいけません。

耐性や依存性は服用する量が多いほど生じやすくなります。医師はその方にとって最適な量を考えながら処方していますので、必ず主治医の指示に従うようにしてください。

専門家である医師の指示のもと適正に使用していれば、困るほどの耐性・依存性が生じる事は多くはありません。

Ⅱ.肝機能障害

ベタナミンは肝臓に負担をかけやすいお薬になります。

肝臓に軽い負担がかかっているくらいであれば大きな問題にはなりませんが、障害の程度が強くなってくると倦怠感などが生じるようになってきます。また障害が高度になると意識レベルが低下したり最悪の場合は命に関わる事もありえます。

肝機能障害は服用しているベタナミンの量が多ければ多いほど生じやすく、また服用期間が長ければ長いほど生じやすくなります。

そのためベタナミンをある程度の量服用しており、服用が長期に渡っている方は、定期的に血液検査を行い、肝機能が低下していないかを確認していく必要があります。

また倦怠感や微熱、黄疸など、肝機能低下を疑うような症状があれば主治医にすぐに相談し、適切な検査・治療を行ってもらう必要があります。

Ⅲ.過覚醒症状

ベタナミンはドーパミンを増やす事によって脳の覚醒レベルを高める作用を持つお薬です。そのため過眠や眠気に対して効果があるのですが、一方で身体を過覚醒状態にしてしまう事もあります。

すると、

  • 口渇
  • 不眠
  • 動悸
  • 胃腸障害
  • 発汗

などといった症状が認められるようになります。これはベタナミンが脳を興奮させる作用を持つドーパミンを増やすためです。

これらは特に服用初期で生じやすい傾向があります。これを予防するにはベタナミンの服用は少量から始めて徐々に増薬していく事が有効です。

これらの症状が認められても、それが耐えがたいほどでなければしばらく様子をみても良いでしょう。身体がお薬に慣れるにつれて徐々に症状が弱まってくる事もあるためです。

また不眠は夕方や夜にベタナミンを服用すると特に生じやすくなります。ベタナミンの添付文書上の服用法は「朝食後と昼食後」となっており、夕方や夜の服用は服用しないようになっていますが、これでも不眠が出るようであればベタナミンの服用時間を朝のみにする事も方法の1つです。

症状の程度がひどい場合には、ベタナミンの減薬・中止をする事もあります。

3.ベタナミンの禁忌

ベタナミンの副作用について説明してきました。

このような副作用があることから、ベタナミンは使ってはいけない方がいます。

ベタナミンが禁忌(絶対に使ってはダメ)という方はどのような方なのでしょうか。

次に該当する方はベタナミンが禁忌となります。

  • 過度の不安、緊張、興奮性、焦躁、幻覚、妄想症状、強迫状態、ヒステリー状態、舞踏病のある方
  • 重篤な肝機能障害のある方
  • 緑内障の方
  • 甲状腺機能亢進のある方
  • 不整頻拍、狭心症、動脈硬化症のある方
  • てんかん等のけいれん性疾患のある方

それぞれについて説明します。

ベタナミンはドーパミンを増やす事によって脳を覚醒・興奮状態にするお薬になります。脳神経が活性化すると覚醒レベルが上がるだけでなく、時に、不安や緊張・焦りまでもが持ち上がってしまう事があります。

このような可能性があるため、元々不安や緊張、焦りが強い方はベタナミンを用いる事は出来ません。

また幻覚妄想状態となっている方にも使う事は出来ません。ベタナミンはドーパミンを増やす作用がありますが、ドーパミンの過剰は幻覚や妄想を引き起こすためです。実際、幻覚や妄想を認める統合失調症も脳のドーパミンが過剰になっている事が一因だと考えられています。

ベタナミンは肝臓に負担をかけるお薬で、肝機能を悪化させてしまう事があります。頻度は稀ではあるものの重篤な肝機能障害を引き起こして死亡した例の報告もあり、この報告を受けてアメリカなど海外のいくつかの国では、ベタナミンの発売を中止しているほどです。

元々、重篤な肝機能障害がある方に肝臓に負担をかけるベタナミンを投与する事は危険ですので服用する事は出来ません。

またベタナミンはアセチルコリンのはたらきをブロックする作用(抗コリン作用)が多少あります。抗コリン作用は口渇や便秘、排尿困難など様々な症状を引き起こしますが、もっとも怖いのは眼圧を上げてしまう事です。

そのため元々眼圧が高い緑内障の方はベタナミンを用いる事は出来ません。

ベタナミンは心身を覚醒状態にする事で、呼吸や脈拍を早め、血圧を上げる作用があります。みなさんも緊張している時は呼吸や脈が速くなった経験があると思いますが、それと同じです。

そのため元々脈拍が速くなるような疾患、血圧が高くなる疾患をお持ちの方はベタナミンを用いる事が出来ません。

脈拍が速くなる疾患として甲状腺機能亢進症や不整頻拍、狭心症などがあります。また血圧が高くなる疾患として動脈硬化症があります。

またベタナミンは脳神経を活性化する事で、けいれんを起こしやすくする(けいれん閾値を低下させる)作用が報告されており、ここからけいれん性の疾患(てんかんなど)をお持ちの方はベタナミンを使用する事は出来ません。