入浴で得られる効果と睡眠への作用

疲れを取りたい時やリラックスしたい時、温泉や銭湯は大人気です。

休日になると毎週大勢の方が温泉や銭湯に訪れます。また長期休暇の旅行先としても温泉地は人気です。

入浴する事で疲れが取れやすい、心身をリラックスさせやすいという認識を多くの方が持っているのでしょう。

このように皆さん経験的は「入浴の効果」を何となく分かっているかとは思いますが、より具体的に入浴で得られる作用を見た場合、どのような効果・効能があるのでしょうか。

実は入浴は身体をリラックスさせて疲労を取りやすくするだけではなく、精神にとっても好ましい作用があります。更に寝付きを良くしたり睡眠の質を改善させる作用も期待できるのです。

という事は、入浴を上手く利用すれば、身体のみならずこころの健康の改善にも大きく役立つという事です。

毎日の入浴の中で、このような「心身にとって良い入浴法」を意識できるようになると、心身をより良い調子に保つ事が出来ます。

ここでは心身にとって良い入浴法とはどのようなものなのかを見ていきましょう。

1.入浴で得られる効果・効能

まず、入浴によってどのような効果が得られるのかを見ていきましょう。

入浴によって得られる効果はたくさんありますが、ここでは主に「こころの健康」に焦点を絞ってお話します。

Ⅰ.自律神経を整える(リラックス作用)

入浴で得られる作用として代表的なものに「リラックス作用」があります。多くの方が温泉地を「のんびりしたい」「ゆっくりしたい」という理由で訪れるのも、温泉にリラックス作用があるためです。

入浴すると、

「気持ちいい」
「癒される」
「疲れがほぐれる」

などなど、みなさんおっしゃいますが、これは要するに「心身がリラックスできる」という事です。

入浴すると心身がリラックスするというのはみなさん経験的に分かると思いますが、より詳しくみるとこれはどのような作用なのでしょうか。

これは入浴によって、

  • 自律神経のバランスが整えられる事
  • 筋肉の緊張がほぐれる事

が生じて得られている効果だと考えられます。

温水に浸かると、身体の体温も上昇します。そして体温が適度に上昇すると自律神経のうち、副交感神経が活性化します。副交感神経は心身を休ませる方向に働く神経ですので、これによりリラックス効果が得られます。

ここで「自律神経」「副交感神経」という言葉が出てきましたので、これらについて簡単に説明します。

私たちの身体には様々な種類の神経があります。代表的なのが筋肉を動かす運動神経や、感覚を感じる感覚神経です。それらと同じく「自律神経」というものがあります。

自律神経は、私たちの意識とは無関係に、状況に応じて適切に自動で働いてくれる神経です。例えば走ると脈が上がりますが、これは自律神経が状況を察知して脈拍を上げているのです。食事を取ると胃腸が動きますが、これも自律神経が状況を察知して胃腸の蠕動運動を亢進させているのです。

自律神経には「交感神経」と「副交感神経」があり、この2つの綱引きによって自律神経はバランスを保っています。

交感神経は「緊張の神経」であり、集中している時や興奮している時などに高まります。心拍数や呼吸数を上げ、瞳孔を開き、覚醒度を高めます。緊張時は食事をしている場合ではないので胃腸の動きを下げます。

副交感神経は「リラックスの神経」であり、休憩中や睡眠中などに高まります。心拍数や呼吸数が下がり、覚醒度は下がります。リラックス時は食事や排泄などを行いやすいため胃腸の動きも活性化し、排尿・排便も促されます。

ストレス社会と言われている現代では、交感神経が高まりすぎている方がたくさんいらっしゃいます。仕事や勉強などの作業中に交感神経が高まっている事は問題ありません。しかし休憩時や夜間の睡眠時にも交感神経が高まっていると、心身は休むことが出来ず、いつかは疲弊してしまいます。

このようなケースでは、意識的に副交感神経を活性化させてあげないといけません。その方法の1つとして「入浴」が有効なのです。

入浴して身体の体温が適度に上がると、副交感神経が活性化します。

心拍数は下がり血管は拡張します。血管が開くと身体の隅々まで血液がいきわたるようになります。血液は酸素や栄養を運んでいますのでこれが隅々まで届けば、身体の疲労は取れやすくなります。

また体温が高まれば筋肉は緩み、筋肉の緊張・疲れが取れやすくなります。腸管の動きも活発になり、空腹を感じたり、排便がスムーズになります。

交感神経によって過度に覚醒状態が高まっている方は、覚醒度が適度に下がり、脳もリラックスさせる事が出来ます。

このように入浴は副交感神経を活性化させることで心身をリラックスさせる効果があるのです。

ただし入浴すれば必ずこれらの効果が得られるわけではありません。入浴の際の温度が高すぎたり低すぎたりすると、交感神経が活性化してしまう事もあります。

入浴によって「熱い!」「冷たい!」という不快な刺激が生じてしまうと、身体は緊張し、交感神経が活性化してしまうのです。

副交感神経を活性化させ、リラックス効果を得たい時は、38℃~42℃前後の温度での入浴がよいでしょう。

Ⅱ.睡眠の改善作用

温泉にゆったり浸かったあとはぐっすり眠れるものですが、これはなぜでしょうか。

これは入浴によって、眠りに入りやすい体温の変動が生じるためです。

実は私たちの体温は1日の中で上下しており、もっとも高い時と低い時を比較すると1℃ほども変動しています。

より具体的に見てみると、活動をしている日中の体温は高くなり、休んでいる夜間の体温は低くなります。

夜になると、人間の体温は自然とゆっくり下がっていきます。そして、この体温の低下によって私たちは自然な眠気を感じ、深い眠りを得ているのです。

よく映画で雪山で遭難している時に強い眠気に襲われているシーンがありますよね。これも、体温が低下する事によって眠気が生じる現象を表しています。

入眠時に適度に体温が下がると眠りに入りやすくなるのですが、実は入浴はこの「体温を下げる事」に一役買ってくれます。

お風呂に入ると体温は上がります。入浴する事で血管が拡張し、温まった血液が全身をめぐるためです。

そして入浴後も血管はしばらく拡張したままです。そのため高まった身体の熱は体外に放散されやすくなります。

入浴後はこのような放熱が生じるため、ちょうどいい具合に体温が低くなっていくのです。

放熱によって体温が低下していくと眠気が生じますので、スムーズに眠りに入りやすくなります。

更に前述の通り入浴によって副交感神経が活性化されると、脳の覚醒度が下がるため、睡眠の質も改善されるというわけです。

反対に交感神経が活性化したまま眠ってしまうと、なかなか寝付けなかったり、寝付けても些細な刺激で中途覚醒してしまうようになります。

2.心身に効果的な入浴法とは

前項での話から、「どのような入浴法をすると、心身にとってより良いのか」が見えてきます。

 結論から言うと、

  • 温度は40℃前後(38~42℃)
  • 入浴時間は30分ほど、ゆっくりと
  • シャワーではなく、必ず湯船に浸かること
  • 湯冷めに注意

などが注意点として挙げられます。

まずは入浴時の温度が大切です。ポイントは副交感神経が活性化しやすい温度に保つという事で、40℃前後(38~42℃)が適温だと言われています。

冷たすぎる水風呂や熱すぎる風呂は、身体にストレスを与えてしまい興奮の神経である交感神経を活性化させてしまい逆効果となりますので注意しましょう。

そして入浴時間も大切です。

忙しいと入浴時間が数分という方もいらっしゃいますが、これでは副交感神経が十分に活性化せずに入浴が終わってしまいます。心身をリラックスさせるためには最低でも20分程度、できれば30分程度は入浴をしましょう。

 一人暮らしの方は、シャワーで済ませてしまう方も多いと思いますがシャワーだとリラックス効果はほとんどありません。

もちろん「身体の洗浄」という目的だけであればシャワーで問題ありません。しかしシャワーは身体の汚れを洗い流すだけで、身体を温めることはできていません。

「リラックス効果」「睡眠改善効果」を狙うのであれば、シャワーで終わらせるのではなく、ぜひ入浴をしましょう。

また入浴後にも少し注意が必要です。お風呂から上がると、入浴で上昇した体温が徐々に下がっていきます。この体温の低下が「適度に」生じると自然な眠気が生じます。

という事は、過度に体温が急降下したり、体温が下がらないままだと眠気は生じにくいという事です。

湯上り後に寒いところに長時間居たりしてはいけません。急激に体温が下がり過ぎ、睡眠の質が悪化します。

また入浴後にすぐに布団に入ってしまうこともあまり良くありません。お風呂後はすぐに寝たいという方もいらっしゃると思いますが、すぐに布団をかぶってしまうと熱が放散されなくなり、体温が下がらずに寝付きや睡眠の質が悪くなります。

入浴後、30~60分ほどは適温の室内で過ごし、布団をかぶるのはその後にしましょう。

3.その他のオススメ入浴法

参考程度ですが、その他に心身を休めるお勧めの方法として、

  • お気に入りのバスボムやバスソルトをいれる
  • 眠りによいとされるアロマを使う
  • 入浴時に電気を消してバスキャンドルなどを使う

なども良いかもしれません。

アロマに関しては、海外では医薬品と同等に医師が処方するような国もあり、その効果がある程度確立しています。

アロマと睡眠に関しては「アロマで不眠を治す!睡眠の改善に効果的なアロマの使い方」の記事でも詳しく紹介していますのでご覧下さい。

鎮静作用を持って睡眠・リラックスに良い効果があるものだけでなく、覚醒作用・集中力を上げる作用などを持つものもありますので、何でもいいからアロマを使えば良いというものではなく、適切なアロマを使うようにしましょう。

バスボム・バルソルト・バスキャンドルなどは医学的に見れば効果は乏しいところですが、これらを使う事で「ゆったりできる」「落ち着いた気分になれる」と自身が感じる事が出来るのであれば、自律神経に良い効果が期待できます。

自分がリラックスできると思えるもの、使って気持ちのいいものは使ってみましょう。

<まとめ>

入浴は「リラックス効果」や「睡眠の質を上げる効果」があり、これらの効果を最大限に得るためには、

  • 入浴の際は40℃前後の、ややぬるめの温度を保つ
  • ゆっくりと30分程度はお湯に浸かるようにする
  • シャワーではほとんど効果はない
  • 湯上り後は湯冷めに注意し、30分以上あけてからベッドにはいるようにする

などに気をつけると良い。