エビリファイの剤型(錠剤、液剤、OD、散剤など)とそれぞれの特徴

エビリファイは抗精神病薬に属するお薬で、統合失調症をはじめ、双極性障害、うつ病など様々な疾患に対して用いられています。

エビリファイには「剤型の種類が豊富」であるという特徴があります。錠剤しかないお薬も珍しくありませんが、エビリファイは錠剤をはじめ、OD(口腔内崩壊錠)、散剤(粉薬)、液剤と様々な種類があります。また近々「持効性注射剤」という注射薬も発売される予定です。

たくさんの剤型から選べるというのはエビリファイの大きなメリットですが、それぞれの剤型にどんな特徴があって、どのような基準で選べばいいのかについては、分からない方がほとんどではないでしょうか。

今日はエビリファイの剤型の詳しい紹介とそれぞれの特徴、選び方などを紹介したいと思います。またそれぞれの薬価(お薬の価格)に違いがあるのかについても見てみましょう。

1.エビリファイの剤型の選び方

エビリファイは2015年5月現在、以下の剤型があります。

・錠剤
・OD(口腔内崩壊錠。溶けやすいため水なしで飲める)
・散剤(いわゆる粉薬)
・液剤

また、エビリファイの「持効性注射剤」も近々発売予定です。持効性注射剤とは、一度体内に注射をすると長い間お薬が効き続けてくれるというタイプのお薬で、エビリファイの持効性注射剤は、1回の筋肉注射で1か月間効果が持続します。海外では「メンテナ」という商品名ですでに使用されています。

このようにたくさんの種類がありますが、それぞれどのような特徴があるのでしょうか。それぞれの特徴が分からないと、どの剤型が自分に一番合っているのかが分かりません。せっかく様々な剤型があっても、選び方が分からなければ意味がありませんので、どのように選んだらいいのかを紹介したいと思います。

実は、剤型によって大きな効果の差は認めないため、剤型は「飲みやすさ」を基準に選択してもらって構いません。

よく誤解されることとして、「液剤の方が即効性がある」というものがあります。液体の方が早く吸収されそうだから、すぐに効きそうという感覚は確かにありますが、薬物動態的にはそんなことはありません。エビリファイの添付文書にもそれぞれの剤型の薬物動態が示されていますが、錠剤・散剤・OD錠・液剤のどれも同じような血中濃度の推移をたどります。

どの剤型であっても服薬してから3~4時間くらいで血中濃度が最大となり、半減期は約60時間程度です。液剤だから速く効果が発現する、ということはないのです。

そのため、こういう症状の人は錠剤がいいとか、こういったタイプの病気は液剤がいいとか、そういった使い分けは全くありません。自分はどれが一番飲みやすいかという基準で選んでいただいて問題ありません。

「錠剤は嫌い」という理由で散剤にしても構いませんし、「なんとなく液剤の方が飲みやすい感じがある」という理由で液剤に変更しても問題ありません。

また、それぞれの生活スタイルに合わせて剤型選択を行うこともよいでしょう。例えば、仕事で外に出ていることが多い方は、出先で常に水を持ち歩いているとは限りませんので、錠剤だと服薬できなくなる可能性があります。そういった方は液剤やOD錠が良いでしょう。

高用量を服薬している方は液剤以外が良いかもしれません。これは効果に差があるというわけではなくて、液剤は水に溶かしている分だけ量が多くなっているため、高用量の液剤だとかなりの分量になってしまうからです。また後述しますが薬価も高いため、エビリファイ30mgを液剤で使うとなると経済面でも負担がかかります。

ちなみに薬価(お薬の価格)は剤型によって大分違ってきます。そのため、経済面で選ぶのもひとつの手にはなります。散剤が一番安く、液剤は高めに設定されています(薬価について詳しくは後述します)。

2.エビリファイ錠のメリットとデメリット

錠剤というのは、お薬にとっての基本的な形になります。そのため、特に大きなメリットもデメリットもありません。

強いて言えば、

【メリット】
・基本となる剤型のため安心感がある
・基本剤型のため、置いてある薬局が多く入手しやすい

【デメリット】
・水がないと服薬できない

ということが挙げられます。

現在は様々な剤型が増えてきて、患者さんの剤型選択の幅も広がっていますが、そうは言っても基本剤型である錠剤が一番処方されることが多いです。「お薬と言えば錠剤」というイメージを持たれている方も多いでしょう。

3.エビリファイOD錠のメリットとデメリット

【メリット】
・水がなくても服用しやすい
・24mg錠がある

【デメリット】
・溶けやすく作られているため、もろい
・他の錠剤と一緒に一包化してもらうことが出来ない
・溶けるため、味を感じやすい。苦手な味であった場合イヤがる方も

OD錠の最大の特徴は「水なしで飲める」ことです。これは日中に仕事などをしている方は助かります。仕事中、特に出先なんかだと常に水が手元にあるわけではないため、水がない状況でも服薬できるというのは、この剤型の大きなメリットになります。

また、錠剤は12mg錠が最大なのに対して、OD錠は24mg錠があります。これは何気にOD錠のメリットです。エビリファイの最大量は1日30mgですが、錠剤で30mgを飲むとなると、12mg錠2つと6mg錠1つの計3錠飲まないといけません。しかしOD錠なら、24mg錠1つと6mg錠1つの計2錠で済み、錠数を少なくできます。

あまりたくさんのお薬を飲むというのを良く思わない方も多く、そういう方にとっては見かけ上ですが1錠少なくなるのは、気持ちの面でも楽になりますし、手間は多少軽減されます。

デメリットとしては、溶けやすい構造であるため、もろく壊れやすいことです。例えば、手のひらに長く置いていると、手汗を吸収し溶けてしまうこともあります。また、この壊れやすい構造のため、他のお薬と一緒に一包化することが出来ません(一包化とは、複数のお薬をまとめて1つの袋に入れてもらうこと)。

溶けるということは、味を感じやすいというのも特徴です。これは好きな味であればメリットにもなるし、嫌いな味であればデメリットにもなります。しかし、薬においしさを求めている人は少ないため、デメリットになることはあっても、メリットになることは少ないようです。

4.エビリファイ散剤のメリットとデメリット

【メリット】
・安い
・微細な調節がしやすい

【デメリット】
・服薬に手間がかかる

錠剤はとても薬価が安く設定されているのが大きなメリットになります。詳しくは後述しますが、錠剤やOD錠の6~7割程度の薬価に抑えられており、また高い液剤と比べると2割程度の薬価になっています。

また粉薬は微細な調節がしやすいというのがメリットです。錠剤などではどんなに頑張っても1/4錠とか1/6錠に割るくらいが限界ですが、粉だと、量を細かく調整できます。エビリファイで細かい調整が必要になることは少ないのですが、お薬を少しずつ減らしていきたい時、例えば依存性のあるお薬で離脱症状が出ないように少しずつ減らしたい場合などで、粉薬はとても役立ちます。

デメリットは、錠剤と比べると服薬がやや面倒なことです。ポンッと口に入れて飲むだけでなく、粉をこぼさないように注意しなくてはいけません。また、中には「粉薬が苦手」という方もいらっしゃるため、そういった方にも不向きのお薬になります。

5.エビリファイ液のメリットとデメリット

【メリット】
・手軽に飲める
・すぐ効きそうな印象がある(実際は他剤型と同じ)

【デメリット】
・高い
・かさばる
・一包化できない

エビリファイ液は3ml(3mg相当量含有)と6ml(6mg相当量含有)、12ml(12mg相当量含有)の3形があります。それぞれ1回分ずつ個別に包装されているため、出先などでも手軽に飲めることはメリットです。そのため、何かあった時にサッと飲むための頓服としてエビリファイ液を使用する方もいらっしゃいます。

また、「液体は速く効く」というイメージを持っている方も多く、「これはすぐ効くから大丈夫だ!」と思うことによって、服薬後に安心できるというメリットも現場では感じます。実際は、先ほど書いたように液剤も錠剤も効いてくるまでの時間に差はないのですが、こういった「気持ち」で実際に精神症状が改善するケースはあるため意外とあなどれません。

液剤のデメリットは何と言っても高いことです。一番安い散剤と比較すると、同じ相当量でも5倍の薬価の違いがあります。同じ成分のお薬なのに、液剤にするだけで5倍も高くなってしまうのです。

また、一個一個液体が包装されているため、錠剤と比べるとかさばるのもデメリットになります。

液体ですから、他の薬剤と一包化することもできません。そのため、何種類もお薬を服薬している方は、エビリファイだけ別に飲まないといけないため手間がかかります。

6.エビリファイの剤型と薬価の比較

エビリファイは剤型によって効果は同じであるものの、薬価は異なります。特に液剤は非常に高価です。これは恐らく製造の手間がかかっているからでしょう。

錠剤・OD錠はどちらも同じ薬価です。そして散剤が安く設定されています。

薬価は以下のようになっています。

エビリファイ散1%     197.90円(1mgあたり19.79円)
エビリファイ錠3mg     97.10円(1mgあたり32.37円)
エビリファイ錠6mg    184.40円(1mgあたり30.73円)
エビリファイ錠12mg   350.40円(1mgあたり29.20円)
エビリファイOD錠3mg    97.10円(1mgあたり32.37円)
エビリファイOD錠6mg  184.40円(1mgあたり30.73円)
エビリファイOD錠12mg 350.40円(1mgあたり29.20円)
エビリファイOD錠25mg 665.90円(1mgあたり27.74円)
エビリファイ内用液0.1%  98.10円(1mgあたり98.10円)     (2015年4月現在)

1mgあたりで見ると、散剤が安く、液剤が非常に高いのが分かります。また、錠剤とOD錠は薬価は同じで、高用量の錠剤の方がmgあたりの価格は安くなっています。