泣く事はストレス解消になる。涙の意外な効能

泣く事。涙の効能

悲しい事や辛い事があると、自然と涙が流れる事があります。

しかし「泣く」という行為は、「情けない事」「弱い」「根性がない」などと悪く思われる事が多く、思いっきり泣ける状況というのは多くはありません。特に男性などでは「泣くのは情けない事」「泣いたら負けだ」などといった考え方の中で育っている方も多く、辛い場面でも「泣いてはいけない」「辛くても我慢しなくてはいけない」と耐えている方も多いと思われます。

しかし精神科的にみてみると、「泣く」という行為は精神状態を悪化させないためには良い行為であるように感じられます。

悲しい事があってもそれを耐え続けている人と、我慢せずに思いっきり泣く人では、明らかに前者の方が精神的に不調になりやすいのです。

みなさんは最近泣いているでしょうか。辛い事があってもひたすら我慢し続けてはいないでしょうか。

今日は「泣く」という事について考えてみたいと思います。

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1.涙の本来の役割とは

そもそも涙ってどのようなはたらきがあるのでしょうか。

本来の涙というのは、目を保護するはたらきがあると考えられてます。

実は涙というのは、普段から微量ずつ分泌され続けています。極めて微量ですが、涙というものは本来涙腺からずっと出続けているものなのです。そして涙は目の乾燥を防いだり、ばい菌などから目を保護する役割があります。涙が常に出続けて目を潤してくれているため、私たちの目はその機能を発揮できるのです。

更に目にごみなどの異物が入ったりすると、涙の量は一時的に増えます。これも「異物を洗い流そう」という身体の反応であり、目の保護が目的だと考えられます。

このように「涙」というのは、目を保護する目的で本来は分泌されているものなのです。

しかしこの説明は普段から出ている涙の役割を説明したもので、悲しい時に出る涙に対しては説明がつきません。というのも、別に悲しい時に目を保護する必要などないわけですから、「悲しい時に涙が出る」というのは目的が不明であり、理にかなっていません。

では、悲しい時に涙が出るのは一体どうしてなのでしょうか。

2.悲しい時に涙が出る理由とは?

悲しい事があると、目に自然と涙が溢れてきます。

この「泣く」という現象はよく考えてみると不思議な現象です。なぜならば、この現象にはこれといった目的が見つからないからです。

私たちの身体は刺激に応じて様々な反応をします。しかしそれらは皆、意味のある反応です。例えば、緊張状態の時に脈拍が上がって呼吸が早くなるのは、これから闘ったりあるいは逃げたりする必要があるからです。ばい菌に身体が感染したときに体温が上がるのは、身体がばい菌と闘うのに有利な環境を作るためです。このように身体の反応というのはそれぞれ意味があります。

しかし悲しい時に「泣く」というのは、その理由が良く分かりません。悲しい時に涙が流れることに一体どのような利点があるのか、考えてみても見当たりません。

加えて、実は「泣く」という行為は人間に特有の行為だと考えられています。よく考えてみれば、犬も猫も、悲しいことがあっても涙を流して泣くことはありません。これは「泣く」という行為が動物の中でも人間にだけにしか必要でない行為だという事を意味しています。

では私たち人間はなぜ泣くのでしょうか。

泣くという現象をより詳しく見てみると、涙は悲しい時に出るのが一般的ですが、それ以外にも嬉しい時、怒った時などにも生じることがあります。つまり感情が激しく動いた時に生じる現象だという事が分かります。

情動が激しく動いた時に何故私たちは泣くのか、というのは明確には分かっていません。しかしこの現象は、強制的にストレスを解消させて心身の健康を維持しようとする効果があるのではないかと考えられています。

精神科医として、こころのダメージを受けてしまっている方々のお話を聞いていると、涙にはこのような作用があるのだという事が見えてきます。

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3.涙を流す事はストレス解消効果がある

「すごく悲しかった」
「非常に感動した」
「ものすごい嬉しい事があった」

このように感情が激しく動いたとき、私たちは「泣く」ことがあります。

この「泣く」という行為は、実は強制的なストレス解消方法となっているのではないかと考えられます。

みなさんは、「思いっきり泣いたら気持ちがすっきりした」という経験はないでしょうか。辛い事があった時、それをため込むよりも思い切り泣いた方がその後の気持ちは楽になるものです。このような経験からも泣くという行為にはストレス解消効果がある事が伺えます。

診察にて患者さんの「泣く」という行為をみていても、それは分かります。

診察中、辛い過去を思い出してそれを泣きながら話してくれる方もいます。話している最中はみなさん辛そうですが、話し終わって泣き終わった後はみなさん必ず落ち着きます。「話を聞いてもらえて楽になりました」「少し気持ちがすっきりしました」とおっしゃってくれる方もいます。これは、辛い事を話せた事も一因だとは思いますが、涙を流した事も気持ちがすっきりとした一因ではないかと考えられます。

また、うつ病などのこころの病気にかかってしまっている患者さんのお話を聞くと、しばしば「悲しいわけでもないのに突然涙が出てくることがある」という訴えがあります。

「悲しいわけでもないのに突然涙が出てくる」というのは、特にストレスを表に出さずにため込んでしまうタイプの方によく見られる症状です。これは行き場のなくて溢れ出そうになっているストレスに対して、身体が「このまま身体にストレスをため込んでいては危険だ」と判断し、強制的に「涙」という形でストレス解消を行ったのだと考えられます。

神経学的にみても、「泣く」という行為が心身をリラックスさせる効果がある事が分かります。

私たちの身体は自律神経によって調節されています。自律神経は私たちが意識しなくても自動で働いてくれる神経です。例えば、私たちがご飯を食べたら勝手に食べ物を消化してくれるのも自律神経のはたらきです。私たちが呼吸をすることを忘れても勝手に呼吸してくれるのも自律神経のはたらきです。私たちが意識して心臓を動かさなくても心臓が勝手に動いてくれるのも自律神経のはたらきです。

自律神経には緊張の神経である「交感神経」と、リラックスの神経である「副交感神経」の2種類があります。そして「泣く」という行為は、副交感神経によって調節される行為だという事が分かっています。つまり泣くという事は交感神経が活性化しすぎていて緊張しきっている心身を、副交感神経を活性化させることで強制的にリラックス状態に変える効果があるという事です。

一般的には、緊張状態(交感神経が活性化)の時にはストレスが溜まっていき、リラックス状態(副交感神経が活性化)の時にはストレスが和らいでいくものです。副交感神経を活性化させる「泣く」という行為は、やはりストレスを和らげる効果が期待できるのです。

4.日常で涙によるストレス解消を利用する方法

涙のこのような効果を知ると、「泣く」という行為はこころを健康に保つためにも役立つ行為であることが分かります。

泣く事で、

  • 心身に溜まっているストレスが解消される
  • 緊張状態にある心身をリラックスさせることができる

という効果が期待できます。

反対に本来泣くべき時に泣かずに我慢しているという方は、ストレスを心身に溜め込み、多くの時間を緊張状態で過ごしている可能性があります。このような場合は、「泣く事」をもっと積極的に意識してみることが望まれます。

しかし私たちは普段、いつでもどこでも泣けるような状況ではありません。特に一人前の大人であれば、いくら「泣く」という行為が精神に良いと知っても、それを気軽には出来ないものです。

日常生活において上手に「泣く事」を取り入れるためにはどうすればいいでしょうか。

いくつかの方法を紹介します。

Ⅰ.悲しい時に1人になれる環境を作っておく

「泣く事はストレスを溜めないためには良いらしい」とは言っても、泣くのはどこでも出来ることではありません。

特に大人だと、仕事中に急に泣き出すといった事は現実問題としてなかなか難しいでしょう。

このような場合は、1人になれるような時間・環境を出来るだけ多く確保しておくことが有効です。自宅なら自分の部屋で良いと思いますが、職場などでも人があまり来ないような「自分だけの場所」を見つけておきましょう。どうしても泣きたいような時は無理して我慢するのではなく、そのような場所で泣いてしまえばいいのです。

無理して我慢しても、泣きたいほど辛いストレスは勝手に消えてくれるわけではありません。ストレスは目に見えないため把握しにくいのですが、確実にあなたの心の中に重荷として残ってしまいます。適切に解消しないと、あなたの心をどんどん傷付けてしまうのです。

我慢し続けてどんどん心を痛めつけるのではなく、泣いてストレス解消してしまった方が健康的です。

Ⅱ.映画やドラマなど「泣ける」ものを定期的に取り入れる

「最近ずっと泣いていない」という方も多いのではないでしょうか。

一般的には泣く事は「かっこ悪い事」「情けない事」と考えられていますから、特に大人になると泣くような機会はなかなか無いものです。

もちろん「泣く」以外の方法でしっかりとストレスを解消できているのであれば、無理して泣く必要はありません。しかしストレス解消がしっかりできていない場合、「泣く」ようなイベントを意識的に取り入れることは心の健康のためにも有用です。

例えば、感動するような映画やドラマなどを定期的に鑑賞するようにしてみるのはどうでしょうか。映画などで感動して泣くと、そのあとは気持ちがすっきりして何だか前向きに物事を考えられるものです。

映画ならそれ観て泣いてしまっても別におかしい事ではありません。そのため、泣く事に対して周囲を気にする必要もないでしょう。

意識的に「泣く」ようなイベントを取り入れるのも、ストレス解消の方法としておススメです。

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