不眠治療には適度な運動を!睡眠の質を上げるために効果的な運動とは

睡眠と運動

不眠の症状を訴えて、病院を受診される方は多くいらっしゃいます。

不眠の治療法としては、睡眠薬などの薬物療法が一般的です。しかし、実は睡眠薬の有効率は50~60%であり、決して高くはありません。睡眠薬は不眠症治療の万能薬ではないのです。

最近は睡眠に対する認知行動療法(CBT-I)、睡眠日誌・アクチグラフによる客観的評価などを通して治療するなど、睡眠薬以外の治療法を取り入れる病院も増えてきてはいますが、まだまだ少数派です。

これらの治療は一定の効果を認めるものではありますが、これだけでは不眠が十分に改善しない方は少なくありません。その場合、睡眠薬を増やすなどの方法が取られますが、その前に少し見直してもらいたいことがあります。

不眠治療で一番大切なことは、睡眠薬を飲むことではありません。それは、「生活を見直すこと」です。睡眠に悪い生活習慣を持っている人は多く、この改善はまず最初にすべきことであり、非常に重要なことです。

不眠になる生活習慣のひとつとして、運動不足が挙げられます。適度に身体を動かさないと、夜になっても身体が疲れないためなかなか寝付けなかったり、睡眠の質が悪くなってしまいます。

厚生労働省の報告によると、定期的な運動習慣を持っている人はわずか30%程度しかいないそうです。これでは眠れない人が増えてしまうのも仕方がないことです。

今日は、睡眠の質を上げるためにすべき運動について、どんな運動をどのくらいやればいいのか、いつやればいいのかなどを紹介します。

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1.運動が睡眠の質を上げるのはなぜか

よく身体を動かした日は、熟睡できる。

これはみなさん経験的に知っていることでしょう。しかし、どうして身体を動かすとよく眠れるようになるのでしょうか。この答えを知るためには、睡眠の目的について考える必要があります。

私たちは何故、睡眠を取るのでしょうか。それは「心身の疲労を取るため」です。睡眠は心身の疲労を取るために行われる生理現象なのです。ここで大切なことは、睡眠は身体だけを休めるものでもないし、心(脳)だけを休めるものでもありません。身体と心、両方を休めるものだということです。

睡眠は、身体を休めるREM睡眠と、脳と身体の両方を休めるnonREM睡眠に分けられます。このように私たちは毎日、身体と心(脳)の両方を休めているのです。

一日活動すれば、脳も身体も疲れが溜まってきます。疲れが溜まれば作業効率が落ちてしまうため、疲労を回復させなければいけません。定期的に睡眠を入れることによって、心身をリフレッシュさせ、また効率よく活動できるようになります。

近年は便利な世の中になり、身体を動かす機会がどんどん減っています。車や電車などの移動手段の発達で歩く頻度は少なくなりました。ちょっとした段差にも便利なエスカレータが取り付けられており、生活の中で身体を動かす機会はどんどん減ってきています。

毎日毎日、脳を酷使している方は多いでしょう。仕事は山積みで頭は常に仕事で一杯。上司と部下に挟まれてストレスもとても大きい。でもそんな方でも、身体はほとんど使っていなかったりします。

すると、「脳は疲れているんだけど、身体が疲れていない」という、非常にアンバランスな状態が生じます。

脳は疲労を回復したいから、眠ろうとします。しかし、身体はあまり疲れていないので眠りをそこまで欲しません。このアンバランスな状態で眠ろうとすると、当然睡眠は不自然なものになってしまいます。結果として眠りが浅くなったり眠れなかったりと、不眠症になってしまうのです。

この状況での解決策は何でしょうか。「身体を疲れさせる」しかありません。脳と同じく、身体も疲れれば、心身ともに眠りを欲するようになるため、自然と眠りに入ることができます。睡眠の質も良くなるでしょう。

そして身体を疲れさせるためには「身体を動かすこと」、つまり運動が必要になってきます。運動が睡眠改善において重要なのはこのためです。

日中に十分に身体を動かしている人は、それ以上無理に身体を疲れさせる必要はありません。しかし不眠症の方の多くは、日中に十分に身体を動かしていない人達です。これに該当する人は、良い睡眠を得るために運動をする必要があります。

また、運動はストレスを解消させ、精神を安定させる効果があります。ランニングなどの運動をした後、「スッキリした感じ」「爽快感」などを感じると思います。これも不眠には効果的です。

寝床に入ると色々なこと(大抵はネガティブなこと)を考えてしまい、眠れなくなるという事があります。運動によって精神が安定すれば、ネガティブな思考が軽減するため睡眠改善に役立つのです。

運動の中でも特に有酸素運動では、運動により生理機能の向上が期待できます。体温調節機能などの自律神経機能が向上すると、これも睡眠には良い影響を与えます。また心肺機能が向上することで、全身への血流が良くなり、これも眠りに良い影響を与えます。

2.どんな運動が良いのか

先ほどの説明から、睡眠の質を上げる運動には、3つのものが求められることが分かります。
それは、

  1. 身体を疲れされるものであること
  2. 爽快感が得られるものであること
  3. 自律神経機能が向上するものであること

です。1.が特に大切ですが、2.3.も備えていると睡眠には尚良い運動です。

これらを満たすものには、有酸素運動があります。有酸素運動とは、ランニング、水泳、サイクリングなど、ある程度長い時間継続するタイプの運動です。

ヨガやストレッチなども良いでしょう。

反対に、無酸素運動(筋力トレーニング、短距離走)などは、「睡眠改善」という意味では、有酸素運動に比べると効果は劣ります(効果が無いわけではありません)。

無酸素運動でも、身体の疲労は得られます。しかし、爽快感や自律神経機能の向上は、有酸素運動の方が得られやすいでしょう。

運動の時間ですが、1回30~60分くらいが理想的です。翌日に疲れが持ち越すようでは問題ですし、かと言って負荷が軽すぎて身体が疲れなければ意味がありません。だいたいこのくらいの時間が、適度に身体が疲れる程度の時間です。また、このくらいの時間が現実的に取れる時間だということもあります。

運動の頻度としては、理想は毎日行うことになります。しかし、仕事などの都合で毎日は難しい人も多いでしょう。この場合は、週3回程度でも構いません。週3回くらいの頻度でも一定の効果は得られます。

また、運動の時間の注意点として、睡眠直前に行うことは好ましくありません。

運動中は交感神経が活性化し、脳が「興奮」します。脳を興奮させてしまうと、その直後には眠れなくなります。そのため、深夜に運動をすると、かえって眠れなくなりますので注意してください。少なくとも就寝の3時間前までに運動は終了することが良いでしょう。

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3.定期的に運動している人はこんなに少ない

睡眠の改善に運動は有効だということは、ほとんどの人が知っています。私が言うまでもないことでしょう。しかし、みなさん理解はしているのですが、それを実践している人は驚くほど少ないのです。

厚生労働省が「平成24年度国民健康栄養調査」で報告したデータによれば、運動習慣のある者の割合は、男性36.1%、女性28.2%とかなり低い値になっています。つまりほとんどの人は十分な運動をしていないということです。

特に若者の運動習慣は低く、

20代男性 27.4%  20代女性 14.0%
30代男性 20.8%  30代女性 13.9%
40代男性 21.2%  40代女性 18.0%

となっています。

ちなみに、「運動習慣がある者」の定義は、週2回以上、1回30分以上の運動を1年以上継続している者を指しています。

若い方は仕事が忙しく、なかなか運動習慣が取れないという事情もあるとは思います。しかし、ここまで運動習慣がない方が多ければ、不眠の方が増えてしまうのも当然なのかもしれません。

4.運動不足と不眠の研究

誰もが経験的に、運動は睡眠に良いということは知っています。仕事や運動などで身体を激しく使った日は「疲れた~。今日はゆっくり眠れそうだ」と感じます。

身体を良く動かせば良く眠れる。これは確かな事実なのですが、それを示したデータはあるのでしょうか。運動と睡眠の関係を報告した研究はたくさんありますが、最近の報告を一つ紹介します。

アメリカの中高年女性339人を対象に行われた、SWAN sleep studyという研究です。

この研究では、身体活動量の多さで対象者を3群(高い、中間、低い)に分け、それぞれの不眠症状について調査しました。身体活動量は3つの指標(運動、生活活動、家事・介護)に分けて検討されました。

結果、不眠と関連した身体活動量は運動のみでした。そして、運動による身体活動量が多いほど不眠者は少なくなるという結論になりました。具体的には、

運動による身体活動が低い群での不眠者を1とすると、
運動による身体活動が中間群での不眠者は0.68、
運動による身体活動が高い群での不眠者は0.26

となっています。

SWAN sleep studyより引用(英文のため、引用者によって要約・和訳を行った))

まとめ

運動が睡眠に良い影響を与えるのは、3つの理由がある。それは

  • 身体を適度に疲れさせるから
  • 運動で精神が安定するから
  • 自律神経機能、心肺機能が向上するから

である。そのため、睡眠に良い影響を与える運動とは、この3つを満たしているものが望ましい。
具体的には

  • 有酸素運動(ランニング、水泳、サイクリングなど)
  • ヨガやストレッチ

などが睡眠を改善する運動として好ましい。

日本人で定期的な運動習慣を持っている人は30%程度しかいない。不眠症で悩んでいる方は運動習慣を持つことを検討してみると良い。

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