自分を「自分の大切な親友」だと思って接してみよう

精神科医として日々患者さんと関わっていると、患者さんが一生懸命頑張っていることにいつも感心してしまいます。

世間では「うつ病は甘えだ」などといった精神疾患に対する誤解は未だ根強く残っていますが、実際に患者さんと深く接している立場から言わせて頂くと、「この人は甘えているなぁ」と思うような事は少なく、みなさん精神的なつらさを抱えているにも関わらず本当に一生懸命に毎日を頑張られています。

しかし感心する一方で、「ちょっと自分に厳しすぎるのでは・・・」と心配になってしまう事もあります。

「他者を気遣い、自分の事は限界以上に追い込む」、このような人は少なくありません。それは賞賛されるような生き方かもしれませんが、長く続けば精神が疲弊してしまうのも当然でしょう。

もう少し、楽をしてもいいのに・・・
もう少し適当になってもいいのに・・・

患者さんの一生懸命な生き方を見ていると、このように感じてしまいます。

もちろん、患者さん自身でもはそんな事は分かっています。私が「もうちょっと気楽にやってみては?」というと、「そうなんですよね。それが出来ればいいとは思っているんですけど・・・。でもなかなかできないんですよ」という答えが返ってきます。

自分に厳しい方は、ちょっと手を抜いたりサボッたりしてしまうだけで大きな罪悪感を感じてしまうようです。だからなかなか自分を許してあげることができません。

このような場合、「自分を『自分の大切な親友』だと思って接してみて下さい」と提案することがあります。自分の事を「自分の大切な親友」だと思ってみて、その上で今の自分にどのようにアドバイスをするだろうかと考えて欲しいのです。

自分を甘やかせない方は、このような考え方を持ってみると良いかもしれません。

スポンサーリンク

1.あなたの大切な親友が無理をし続けていたら

とても大切な親友が限界以上に頑張り続けていたとします。明らかに疲弊しきっている親友を見て、あなたはどのようなアドバイスをするでしょうか。

「もう少し休まなきゃダメだよ」
「もっと周りに甘えていいんだよ」
「多少は手を抜いたっていいんだよ」

大切な親友の事を心配に思い、あなたはこのようにアドバイスするのではないでしょうか。

大切な人だからこそ、つらい思いはして欲しくないし健康でいてもらいたいと強く願うはずです。だから、真剣に向き合った上で「無理をしないで欲しい」といったアドバイスをするでしょう。

大切な親友が絶望的になっていて、

「もう死にたい」
「全てがイヤだ、もうどうでもいい」

と訴えてきたら、あなたは何て答えるでしょうか。

「私はあなたに死んで欲しくない」
「話を聞くことくらいしかできないけど、私に出来ることは何でもするよ」

と精一杯、親友の力になろうとするでしょう。

限界以上に一生懸命頑張っている親友に対して、

「もっともっと頑張れよ!」
「まだまだ努力が足りないよ!」
「死ぬとか甘えたこと言ったらダメだよ」

なんてアドバイスする人はいないと思います。

それは、その親友の事を本当に大切に思っていて、元気で過ごしてほしいからこそ、このようにアドバイスするのだと思うのです。

2.大切な親友と同じくらい自分の事も大切にしましょう

大切な親友が疲弊している時にこのようにアドバイスするのであれば、自分が同じような状況の時には自分にもそのようにアドバイスしてあげなくてはいけません。

親友はもちろん大切な存在です。でもそれと同じくらい、あるいはそれ以上に自分も大切な存在のはずです。親友には健康でいて欲しいし、幸せな毎日を過ごしてほしいと願うはずです。であれば、同じように自分の健康や幸せも願ってあげましょう。

あなたが今、大切な親友にかけてあげた言葉は、あなたを大切だと思っている親友があなたにかけようとしている言葉なのです。

患者さんをみていると、家族や親友といった他者にはものすごく優しいのに、自分にはものすごく厳しい方がたくさんいらっしゃいます。元気なうちはまだそれでも何とかやっていけるかもしれませんが、こころが疲れてしまった状態なのに自分を更に叱咤激励するのは良い方法とは言えません。

自分に厳しくしすぎる傾向のある方は、このような視点で自分を見つめてみてください。

疲れ切っているのに、「自分はもっと頑張らないとダメだ」という気持ちが消せないようであれば、もし同じような疲れ具合の親友がいたとしたら、あなたがその親友にどうアドバイスするのかを考えてみてください。

そこで「親友にだったら『休まないとダメだよ『とアドバイスします」というのであれば、やはり自分に対してもそのように接してあげないといけません。親友は大切にするのに自分を大切にしないのは不公平です。

もし自分が

「自分なんて生きている価値がない」
「自分は努力が足りない」

と考えてしまっているとしたら、そんな事を考えてしまっている自分を、自分の大切な親友だと思って考え直してみてください。

自分の大切な親友がこのような事を言っていたら、どうしますか。

「そうだね、お前は生きている価値がないよね」
「お前は努力が足りないよ」

と答えるでしょうか。

「あなたに価値がないことなんてないよ。私にとってはとても大切な人だよ」
「一生懸命頑張っているのを私は分かっているよ。」

と答えるのではないでしょうか。なのであれば、自分自身にもそのように接してあげて欲しいのです。

スポンサーリンク

3.人は意外と自分の事を客観的に見れていない

「自分の事は自分が一番良く分かっている」なんてことがよく言われますが、これは必ずしも正解ではありません。

自分の事は、意外と自分では正しく見れていないものです。特に自分に厳しいほど、自分の良い部分をみずに悪い部分を過剰にとらえて、悪く評価する傾向があります。

客観的に見れば、自分は十分に努力していて、これ以上の努力は難しい状況なのに、

「自分は無能だから」
「自分は人より出来が悪いから」
「自分は価値がないから」

というかたよった主観に影響され、「だから自分はもっと努力しなくてはいけないんだ」と考えてしまうのです。

そのような時は、客観的に自分を見てあげる必要があります。客観的に自分を見るためには「自分を『自分の大切な親友』だと思って接してみる」という事はとても有効な方法です。

「どうしても自分を甘やかせない」
「どうしても自分を許せない」

という方はこのように考えてみてください。

スポンサーリンク
こちらの記事も是非ご覧下さい