心因性うつ病とは?

実は「うつ病」には、たくさんの種類があります。

医師から「○○性うつ病です」「○○型のうつですね」などと言われ、「??」となってしまった方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実際、私も外来で患者様から「○○性うつ病って何ですか?」という質問を時折頂きます。

「季節性うつ病」 「産後うつ病」

こういった分類は名前のままですので、まだ分かりやすいですね。特定の季節のみうつ病が出現するものが「季節性うつ病」で、出産後に発症するものが「産後うつ病」です。

では「内因性うつ病」「心因性うつ病」これらはどんなうつ病でしょうか?

これらは少し昔の概念になるのですが、今でも使われる事は少なくありません。特に心因性うつ病は、とても頻度の多いうつ病のタイプですが、理解されていない方が多い印象があります。

これはいったいどんなうつ病なのでしょうか?今回のコラムでは「心因性うつ病」について深く見ていきましょう。

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<心因性うつ病とは?>

心因性うつ病は、外来で一番よく見る、うつ病像といってもいいと思います。

これは、簡単に言ってしまうと心理的な原因で起こるうつ病です。

ほとんどが、何らかのストレスやショックなどですね。

(反対に「内因性うつ病」は脳の器質的要因(奇形や障害など)、原因不明で起こるものといわれてます)

・上司からの叱責がつらくてうつ病になった

・とても親しい人が亡くなってうつ病になった

こういった「心理的に落ち込む理由があって、うつ病になったもの」を心因性と考えます。

 <心因性うつ病の原因>

ここで言う「ショックやストレス」というのは、実に様々です。

職場や友人関係のストレスから、人の死まで、

その人にとってショックやストレスになるものであれば、何でも原因になりえます。

特に、肉親や配偶者の死など「親しい人を喪失する」事によって

うつ病を患うケースは非常に多いです。

これはとてもイメージしやすいのではないでしょうか。

自分のごく身近にいた、非常に大切な、時には自分よりも大切に思っていた人。

その人がそこからいなくなり、話をすることも、姿を見ることもできなくなる――――

この衝撃は非常に大きいものです。大きな喪失感がその人を襲います。

そこからうつ病に至ることは、それほど珍しいことではありません。

次によく遭遇する原因が、「職場や学校でのストレス」です。

いじめの問題がイメージしやすいですね。

そこまで至らずとも周囲との関係が円滑にいっていない、という状況。

これらのことでも心因性のうつ病は引き起こされます。

心因性の場合「人間関係」が原因になる事が多いのですが、

必ずしもそれだけではありません。

単純に「仕事がうまく進まない」という状況も原因となります。

一例を挙げると、
・「他の同期に比べて、明らかに出世が遅い」
・「単純作業ばかりで、仕事にやりがいを感じられない」
・「部内全体の成績が振るわず、リストラの対象になりそう」
・「がんばっているのに作業効率が遅く、うまくいかない」
・「経営者だが、金銭的なやりくりがうまくいかず、会社が立ち行かない可能性がある」

などです。

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<意外な原因>

上で挙げた「親しいひとの死」や「ストレス」は、ある意味想像しやすいものです。

でも、ほかにも意外なことが心因性うつ病の原因となります。

たとえば、妊娠や結婚、それから進学などです。

これらは本来ならば、喜ばしいこと、おめでたいこととして歓迎されるべきことです。

しかしこのように、自分の環境が大きく変わることは、非常に大きなストレスです。

そのことからうつ病が引き起こされるのは、珍しいことではありません。

マリッジブルーやマタニティうつなどで病院に通うひとも多くいます。

産婦人科の中には、特にそのケアに長けた病院もありますね。

心因性のうつというと、「悲しいこと、つらいこと」からくるように思いがちです。

しかし出産などではホルモンバランスの乱れも起こります。

この結果として、本来は嬉しいことであっても、うつ病の原因となることはままあります。

<なぜ発症するのか?どうすれば防げるのか?>

もちろん上記の例はほんの一例ですから、それ以外のことが理由になることもあります。

ただ、うつ病は何も特別な病気などではありません。

私たちは生きていく上で、誰もが抱く悩みや不利な局面に立たされます。

そんなときにうつ病は、容易に引き起こされるものである、と考えられるでしょう。

「親しかった人の死」という突然の衝撃でうつ病が起こることもあります。

仕事がうまくいかないという「連続性」のあることによって起こることもあります。

また、妊娠や進学といった「嬉しいこと」もうつ病の原因となります。

ただ、だからといって、これらすべての原因を避けることはできませんよね。

人が死んでしまうことは避けようもないことです。

まったくストレスのない職場や環境など、存在しません。

妊娠や進学のようなことを避けることができます。

しかし、そのうち「周りと違うこと」が逆にストレスとなる日が来るかもしれません。

このようなことを考えていくと、一つのことがわかります。

それは、うつ病の素養がまったくない環境など作ることはできないということです。

心因性うつ病にならない環境、つまり「ストレス・変化の全くない環境」など現実的にありえません。

そのため、「心因性うつ病にならない環境にしよう」と考えるのではなく、

ショックなこと、ストレスな出来事に対して、

「どのようにして折り合いをつけていくか」が大切になってきます。

ストレスやショックとうまく付き合っていける考え方を身に着ける事、

それが心因性うつ病の予防法と言えます。

<心因性うつ病の誤解と思い込み>

ただし、だからといって「心の持ちようで何とかなる」と考えるのは間違いです。

上で挙げたように、心因性のうつ病の原因はストレスによるものです。

「うつ病は甘え」という誤解が多いのはこのためです。

「同じ環境にあっても、100パーセントのひとがうつ病になるのではない。

だから、うつ病になるのは心が弱いからだ」という論調の元ですね。

ただ、何度も述べているように、うつ病の原因はいたるところにあります。

うつ病の既往歴がないひとでも、来年再来年はどうかわかりません。

そのため、「うつ病になるなんて私の心が弱いからだ」という自責の念は意味がありません。

「精神的に弱いからうつ病などになるのだ」
「考え方を変えればどうにかなる」
「子どもが生まれてくるのにそれを受け入れられないなんて、母親失格だ」

という罵倒はまったく的外れな話なのです。

私たち精神科医からすれば、信じられない事なのですが、うつ病に対して未だ

「甘えるな」「気合で治る!」という人はいます。

これは、私たちからすれば、足を骨折した人に

「歩けないだと?甘えるんじゃない!気合で歩け!」と言ってるのと同じです。

とてもとても、ありえない事ですよね。

ですが、そのありえない誤解が、残念ながら未だあるのです。

偶然、ある原因から起こったストレスが、その人にとっては相性が悪かった。

だからうつ病になった。

誤解を生む表現かも知れませんが、たったそれだけのことなんですよ。

骨折だって同じですよね。

同じ衝撃を受けても、打ちどころが良かったり悪かったりで、

運よく何ともない人もいれば、骨折してしまう人だっています。

もちろん、いじめのように明確な理由がある場合には、それを取り除かねばなりません。

そうでなければ、投薬治療を続けても、また再発するからです。

しかしながら、近しいひとの死などのように、不可逆的なものもあります。

それらには治療を続けつつ、「折り合い点」を見つけていくのが正しい治し方です。

<次回は、心因性うつ病の症状、治療について続けます。>

<まとめ>

・心因性うつ病とは「精神的に落ち込む理由があって、うつ病になったもの」をいう

・親しい人の死や、職場や学校でのストレスなどが原因として多い。

・妊娠、出産、進学など、環境の変化でも生じ得る。

・うつ病に絶対にならない環境を作る事は不可能。環境とうまく折り合っていく姿勢が大切

・心因性うつ病は「心が弱いから」「甘えてるから」なるのではなく、「病気」である。

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