姿勢を良くするだけでメンタルヘルスは向上する

姿勢とうつ病、メンタルヘルス

こころと身体というのは密接に関係しており、決して切り離して考える事は出来ません。

私たち精神科医は主に患者さんの「こころ」を診ますが、こころだけに焦点を当ててしまうと治療は上手くいきません。こころと身体はつながっているため、こころだけを診るのではなく身体の所見も診ながら治療を考えていきます。

こころが落ち込めば身体の元気もなくなってくるし、身体に元気がなくなればこころも落ち込んできます。これはみなさんも経験があるのではないでしょうか。

つまりこころが不調になってしまった時は、こころの治療のみを行うのではなく、身体も元気に保つ事を意識すると、より早く治っていくという事になります。実際、まずは身体だけでも元気にふるまうと、こころも早く回復することは多くの患者さんを診てきて強く感じることです。

こころに影響を与える意外な要素として「姿勢」があります。うつ病などで精神エネルギーが低下すると、みなさんほぼ例外なく姿勢も悪くなります。落ち込んでいる方は、猫背になってしまい、頭をガクッと下げたような姿勢に自然となってしまうのです。

このような場合、こころと身体はやはり密接に関係していますので、治療中もなるべく姿勢を良くして過ごすと、こころも治りやすくなります。

姿勢を良くするというのは、日常のちょっとした努力できるものです。これで早く元気になれるならぜひ試してみるべきでしょう。

今日は姿勢とメンタルヘルスの関係についてお話しさせて頂きます。

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1.胸を張って生活すると気持ちも前向きになる

精神科をしていると、こころと身体というのは非常に密接につながっているという事を強く感じます。

こころに不調がある時というのは、必ず身体にも何らかの不調のサインが現れます。また身体の不調が続けば、段々とこころも不調になってくるものです。そのため、こころの専門家である精神科医も身体の医学知識も有していないといけませんし、身体の専門家である内科医や外科医も、こころの医学知識をある程度有している必要があります。

こころと身体は、お互いに強く影響しあっているのです。

これをうまく利用すると、こころの病気の治りを早めることが可能になります。

こころが落ち込んでいる時は、同時に「身体」も元気が落ちていることがほとんどです。落ち込みがひどい時は、身体がだるかったり、いつもより身体の痛みを強く感じたりという事はみなさんも経験があるのではないでしょうか。

このような場合、もちろん「こころ」に対する治療も必要ですが、同時に身体も元気になるような行動を意識すると良いのです。身体が元気になれば、こころもそれに影響されて元気になりやすくなるからです。

具体的に挙げると、「姿勢を良くする」という方法が身体を元気に振る舞う方法としてとても有効です。

無理して活動量を増やしたりという元気の振る舞い方だと、敷居も高いですし無理した反動が生じやすくなります。しかし「姿勢を良くする」という身体への工夫であれば大きな労力なく出来ます。精神エネルギーが低下している方でも比較的取り組みやすいでしょう。

こころの病気を患っている方は、ぜひ自分の姿勢を見直してみてください。こころが不調だと身体もその影響を受けるため、姿勢が悪くなっている事が非常に多いのです。

いつもより猫背になっていませんか?
頭がうなだれて、がっくりしたような姿勢になっていませんか?
縮こまったような姿勢になっていませんか?

こころが不調になると、みなさん自然とこのような姿勢になってしまいます。こころの不調が身体にも波及してしまっているのです。

この姿勢を意識的に治してみましょう。そうすると、今度は身体がこころに良い影響を与えるようになり、こころの不調も治りやすくなるのです。

2.なぜ姿勢が悪いとこころも不安定になるのか

では、なぜ姿勢が悪いとこころも不安定になるのでしょうか。

経験的に、「身体とこころは密接につながっているから」ということはみなさんも何となく理解できるかもしれません。しかし、なぜこのような事が生じるのかもうちょっと具体的に考えてみましょう。

Ⅰ.頭痛、腰痛などがうつ症状を悪化させるため

悪い姿勢というのは、身体に無理な負担がかかっています。頚や背骨、肩、腰などに無理な負担がかかりやすくなるため、身体の様々な部位に痛みが生じやすくなります。姿勢が悪さは頭痛や腰痛など「痛み」の原因となっているのです。

そして、このような痛みは、うつ病など精神疾患の症状でも認められます(「うつ病で痛みが出る!?」参照)。

身体の原因で生じた痛みが、こころの原因で生じた痛みを更に増強してしまうことになるため、これはうつ病の症状を重症化させる事につながってしまいます。

Ⅱ.セロトニンの分泌にも影響

姿勢が悪いと、自律神経のはたらきが悪くなり、それによってセロトニンなど気分に影響を与える神経伝達物質の分泌バランスも崩れるのではないかとも言われています。

Ⅲ.光が身体に入りにくくなる

悪い姿勢というのは、前かがみになっている事が多く、これは「下を向いている」「うつむいている」姿勢だと言えます。

この姿勢だと日の光などを取り込むことが出来ません。

光というのは、私たちの生活、そして精神状態に大きな影響を与えています。うつ病の方には「毎日朝日を浴びましょう」とよく指導されますが、これは日の光が生体リズムを整え、メラトニンやセロトニンなどの分泌に良い影響を与えるからです。

うつ病の一型として「冬季うつ病(季節性情動障害)」がありますが、冬季うつ病は日照時間が低下して十分な光を浴びれていないために発症するのではと考えられています。また治療法としても光照射療法という光を浴びてもらう治療法が効果を示すことが知られています。

ここからも光を浴びることがこころの安定に重要な役割を果たしていることが分かります。

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3.姿勢を良くするために意識したいこと

姿勢は悪いよりも良い方がいいですよね。姿勢が良い方が見た目も良いですし、精神状態も安定します。

「姿勢を良くする」事は、ちょっと工夫をすれば大きな労力なく出来る事ですので、ぜひみなさんに意識してもらいたい事です。

では姿勢を良くするためにはどんな事に意識すれば良いでしょうか。

いくつかの方法を紹介させて頂きます。

Ⅰ.鏡を見る

意識的に悪い姿勢を作っているという方はいないでしょう。

多くの方は、特に意識せずに自然と猫背になってしまったり、前かがみの姿勢になってしまいます。これをただすためには、まずは「自分の姿勢を意識する機会を作る」のが良いでしょう。

一番良い方法は、「定期的に鏡を見ること」です。例えば、朝起きた時や外出する前など、鏡をちょっと見るクセをつけてみましょう。

その時、姿勢が悪い自分に気付いたら、ちょっとだけ胸を張って見て下さい。

慣れないうちは、すぐに元の悪い姿勢に戻ってしまうこともありますが、このような習慣を繰り返していると、少しずつ良い姿勢でいる時間が長くなっていきます。

Ⅱ.まっすぐな姿勢が良いというわけではない

「姿勢を良くしましょう」とお話すると、ピンと背筋を伸ばすことが良い姿勢だと思っている方は多いのではないでしょうか。

しかしこれは「見た目が綺麗な姿勢」ではありますが、メンタルヘルス上の「良い姿勢」ではありませんので、このような姿勢を目指さないようにしましょう。

このようなピンと背筋を伸ばした姿勢をするのはどんな時でしょうか。

・就職や受験の面接の時
・目上の方と会う時
・集団訓練を行う時(軍隊など)

などですね。このような状況で求められるのは、「綺麗な姿勢」ですのでこのような背筋を伸ばした姿勢が好まれます。

しかしこの姿勢を長時間続けていたらどうでしょう?疲れてしまいますよね。なぜ疲れてしまうかと言えば、不自然な筋肉の緊張がある姿勢だからです。つまりこれはメンタルヘルスを考えた時に「良い」と言える姿勢ではないのです。

猫背になってしまっている方は、少し胸を張ってみた方が姿勢が良くなるのは間違いありませんが、面接の時みたいに過度に綺麗な姿勢を保つ必要はありません。

私は姿勢の専門家ではありませんので、「一番良い姿勢はどんな姿勢か」というのは詳しくありません。しかしメンタルヘルス的にみると、「ちょっと胸を張る」という程度で患者さんは十分効果を得られています。

Ⅲ.無理な姿勢ではなく、長く続けられる姿勢を

姿勢が良いと、うつ病などの精神疾患の治りも早くなる事は事実です。私自身、多くのうつ病の方を診てきましたが、その経験からも間違いのない事だと感じています。

しかし姿勢というのは治療においてはあくまでも補助的なものであり、「姿勢が良ければそれだけでうつ病が治る」というものではありません。

そのため、治療中の方は「姿勢を良くする」という事に関しては、補足程度の認識をするのが良いでしょう。

うつ病は精神エネルギーが落ちてしまっているため、自然と姿勢が悪くなってしまうものです。これに対して、あまりに姿勢を良くすることを意識しすぎると、かえってストレスになってしまったり、「姿勢が悪い自分が情けない」などとかえって落ち込んでしまう事もあります。

治療によってうつ病が改善すれば自然と姿勢も治るのですから、精神状態が悪い時に悪い姿勢になってしまうことはそこまで悲観的になる必要はありません。

ただ、姿勢が良いと治りが早くなりやすいわけですから、治療中は「出来る時だけ」「出来る範囲内で」無理なく姿勢改善に取り組む程度で良いでしょう。

ちょっと意識して、出来る範囲内で姿勢改善を試みるだけでも十分効果はあります。

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