劣等感による苦しみが生じる原因とそこから抜け出すための考え方

劣等感を克服する方法

私たちのこころを傷付ける感情の1つに「劣等感」があります。

劣等感とは「自分は(周囲と比べて)劣っている」と感じてしまう気持ちです。劣等感を持っていると自分の存在価値を見い出せなくなり、生きているのも辛くなってしまいます。「周りにバカにされているのではないか」「自分の存在が周りに迷惑をかけているのではないか」と考えやすくもなり、日々の生活の中でこころに大きなストレスがかかりやすくなります。

劣等感が強いとこころが疲弊しやすく、うつ病や不安障害などの精神疾患も発症しやすくなります。

人間社会の中では、順位付けや合否などで周囲と比較される機会は多いものです。自分を大切だと思える気持ちや幅広い価値観を持っていないと、1つの勝負に負けただけで劣等感に苦しむ事になってしまうかもしれません。

多くの方が劣等感に苦しんでいる一方で、劣等感から抜け出すための方法というのはあまり知られていません。

劣等感という感情はどのような原因で生じていて、そこから抜け出すためにはどのような方法があるのでしょうか。ここでは劣等感について考えていきたいと思います。

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1.劣等感とは何か

「劣等感(れっとうかん)」とはどのような感情でしょうか。

劣等感というのは「自分が(周囲と比べて)劣っていると感じる事」です。

ここで重要なのは、劣等感は「自分が周囲と比べて劣っている」から苦しんでいるのではありません。劣等感を持っている方が実際に周囲と比べて劣っているかどうかは分かりません。実際に劣っているのかどうかはさておき、劣っていると「本人が感じてしまっている事」が劣等感なのです。

本来、自分と他者を比較した際に「どちらが優れているか」「どちらが劣っているか」などは簡単に答えが出せるものではありません。

「テストの点数」「100m走のタイム」「今月の営業成績」など結果が数値として出されるものは、「誰が勝ったか」「誰が負けたか」が明確に分かるかもしれません。

しかしこれらはその人の能力や魅力のうちのわずか一部でしかありません。このような数値化できる要素以外にもその人の能力や魅力となる要素は無数にあります。

「テストの点数が良い人間が、すべての能力において優れている」「営業成績が良い人は、人格的にも優れている」などどいう事はありませんよね。

何か1つの能力が高かったとしても(あるいは低かったとしても)、それは数ある能力の中の1つです。苦手な事がたくさんあっても、誰にも負けないものが1つあれば、それは素晴らしい事で劣等感を感じる必要などありません。

つまり、限られた数値の結果だけでその人が「優れている」か「劣っている」などは分かるはずもなく、人間の能力や魅力を総合的に評価しようとした場合、「優れている」「劣っている」という事を客観的に評価する事は極めて難しいのです。

「自分は周囲と比べて劣っている」という劣等感は、あくまでも「自分がそう考えている」だけであって、事実は必ずしもそうではない、という事はまず理解しておかなくてはいけません。

世の中には「私は劣っている」と感じている方が多くいらっしゃいますが、劣等感というのは「自分が劣っている事」で苦しんでいるわけではありません。「自分が劣っていると感じている事」が苦しむ原因であり、実はその苦しみは他ならぬ自分自身が生み出しているのです。

私たちは普段、生きている中でたくさんの人々と接しています。その人々と自分を「自分の中の基準」で比較し、「自分は本当にダメだ」「みんなと比べて自分は・・・」と感じ、自分の中の基準で優劣をつけて、「自分は劣っている」と感じているのが劣等感なのです。

2.劣等感はなぜ生じるのか

劣等感はなぜ生じるのでしょうか。

強い劣等感がを持っている方をみると、本当に「何もできない」「劣っている」という方はほとんどいらっしゃいません。実際はみなさん、素晴らしい能力や魅力をお持ちです。

にも関わらず「自分はダメだ・・・」と感じてしまっているのです。

なぜでしょうか。

劣等感は、次の2つの傾向が強すぎると生じやすくなります。

  • 周囲との比較
  • 狭い価値観の中での優劣の評価

劣等感は「自分が(周囲と比べて)劣っていると感じる」感覚の事です。

これは「周囲と自分を比べやすい方」「狭い価値観の中でしか優劣を付けられない方」において生じやすい感覚だという事が出来ます。

劣等感は相手が会って生じます。自分を誰かと比較するから「優っている」「劣っている」となるわけで、劣等感の背景にあるのは「周囲との比較」になります。周囲と自分を比較する事で相対的に自分が負けていると判断し、自分に価値を感じられなくなってしまうのです。

また本来人間には無数の能力や魅力が存在するにも関わらず、その中のいくつかの能力だけをみて「自分は劣っている」と答えを出してしまっているのは、価値観が狭いという事が出来ます。

ではこのような要因が生じる背景にはどのような原因があるのでしょうか。

Ⅰ.低い自尊心

自尊心が低いと劣等感が生じやすくなります。

自尊心というのは「無条件で自分の事を大切だと思える気持ち」の事です。

私たちは皆、自尊心を持っています。誰でも「自分が好き」「自分が大切」という気持ちは持っており、これは健康に生きていくために非常に重要な感覚になります。

私たちは自尊心を持っているからこそ、自分が幸せになるように頑張る事が出来ているのです。

自尊心の形成には「無条件の愛」が必要だと考えられています。見返りのない愛情が注がれる事で「自分は大切な存在なんだ」と無意識のうちに感じ取り、その中で自尊心は育っていきます。

特に重要なのは幼少期に受ける親からの愛情です。親は無条件の愛情を子供に注ぎます。何か見返りを求めて子育てをするわけではなく、子供を大切だと思い、健やかに育って欲しいと願い、一生懸命に子育てをします。このような愛情を受ける中で、健全な自尊心が育っていくのです。

一方で、様々な理由によって親から十分な愛情がもらえなかった場合、自尊心の形成は不十分になってしまいます。

上記のような愛情がないまま育ってしまうと「自分はいてもいなくても良い人間」「自分は邪魔者」というように考えてしまいやすくなります。

また「テストの点数が良い時だけ褒められる」「親に気に入られる言動をした時だけ褒められる」といった「条件付きの愛情」も問題です。

これは「無条件の愛」ではないため、「テストの点数の高い自分には価値がある」「人の都合に合わせて行動する自分には価値がある」といういびつな自尊心が育ってしまいます。

このような不完全な自尊心はちょっとしたきっかけでもろく崩れ去ります。大学受験に失敗したり、就職活動に失敗したことで大きく心を病んでしまうような方は、このような不完全な自尊心であるケースが少なくありません。

「成績の良い自分」「テストの点数の良い自分」という条件が崩れると、自尊心も簡単に崩れてしまうのです。

Ⅱ.価値観の狭さ

劣等感は、その人の価値観や世界観が狭いと生じやすくなります。

例えば極端な例として、2人しかいない世界に生きていたとします。2人しかいない世界では、価値観も2つしかないため、2人の偏った価値観で簡単に優劣がついてしまいます。そのため、劣等感も感じやすくなります。

反対に60億人の世界に生きていたらどうでしょうか。一人一人異なった価値観があり、60億個の価値観の中で優劣を付けるのも簡単ではありません。

このようなケースでは、様々な価値観に触れ合う中で「人はみんなそれぞれ良い所も悪い所もあるんだ」「優れているとか劣っているとかの評価は人によって全然違うんだ」という事を学んでいきます。そうなると小さないくつかの能力の優劣だけで劣等感を感じる事は少なくなるでしょう。

例えば小学生や中学生などは、「学校」「部活」「友達グループ」といった狭い世界の中でまだ生きているため多様な価値観を持てず、劣等感を感じやすくなります。

反対に世界中を飛び回って、普段から色々な価値観と接している人は、劣等感を感じにくいものです。

Ⅲ.他人の目が気になる

劣等感は、誰かと自分を比較する事で生じます。

つまり、周囲の人と自分を比較してばかりしていると劣等感を感じやすいという事です。より深く見てみれば、他者の目(評価)ばかり気にしている方は劣等感を感じやすいと言えます。

これは心配性な方や神経質な方などが当てはまります。

このような性格傾向の方は「他者からの評価に対する恐れ」が強いと言われています。

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3.劣等感の反対、「優越感」も危険

劣等感は「自分が(周囲と比べて)劣っていると感じる事」だとお話しました。劣等感は私たちの心を傷付ける感情であり、基本的にはあまり良いものではありません。

しかし、では反対の感情を持てばいいのかというとそれも違います。

劣等感の反対の感情というと「優越感」になります。これは「自分が(周囲と比べて)優れていると感じる事」です。実はこの優越感もあまりよいものではありません

なぜでしょうか。

実は優越感も根本的には劣等感と非常に似ているからです。

周囲と比べて自分が優れていると感じるのは、やはり「他者からの評価」が気になっているという事です。他者から良い評価をされたい、逆に言えば「悪い評価をされたくない」という気持ちが優越感を生み出しており、その根本にはやはり「他者からの評価に対する恐れ」があります。

一見優越感に浸っていても、その根底には不安や恐れが隠れているのです。

また劣等感が主観的な感覚であるのと同様に優越感も主観的な感覚です。ある人とある人を「どちらが劣っているか」という事を簡単には言えないのと同じように、「どちらが優れているのか」も簡単には言えません。

それなのに、主観的な判断で「自分の方が優れている」と考えるのはやはり価値観が狭いと言う事です。

そして劣等感と同様、優越感も「自尊心が低い人」に多く認められます。

優越感は大抵、何らかの根拠に基づいて生じます。「テストの成績が一番だった」「営業成績がトップだった」などを根拠に「自分はすごいんだ」という優越感が生じます。

これは逆に言えば、「テストで一番でない自分には価値がない」「営業成績がトップではない自分には価値がない」といっているようなもので、本物の自尊心(無条件で自分の事を大切だと思える気持ち)ではありません。

4.劣等感から抜け出す方法

劣等感による苦しみを抱えている方は非常に多くいらっしゃいます。しかしその克服法についてはほとんど知られていません。

むしろ「克服法などない」「自分が劣っている事を受け入れるしかない」と諦めてしまっている方もいらっしゃるようです。

劣等感は自分自身が生み出している感情に過ぎません。どんな人でも劣等感から抜け出す事は出来るのです。

ここまで劣等感について詳しく学んできたみなさんは、劣等感から抜け出す方法が少しずつ見えてきたかもしれません。

最後に劣等感から抜け出す方法を紹介します。

Ⅰ.様々な価値観を知る

劣等感は特に10代~20代といった若い方に多く認められます。

この理由は、若い方はまだ幅広い価値観を持っていない事が多いためです。

このような若い方は、学校生活や部活動・サークルなど価値観が比較的狭い中で固定されています。

例えば学校生活の中には、

  • スポーツが得意な人がカッコいい
  • 勉強が出来る人はすごい

といった価値観があります。

もちろんこれらの能力は素晴らしいものの1つですが、人の魅力はスポーツや勉強だけで決まるわけではありません。

話が面白い人だって素敵だし、こころが優しい人だって魅力的です。スポーツも勉強も苦手であったとしても、自分の好きな事に対しては驚くほどの知識を持っている人だっていて、このような人だってすごいでしょう。

このように人の能力は簡単に優劣を付けれるものではありません。

世の中には様々な価値観があり、一概に「優っている」「劣っている」と言えるものではないのです。

私の患者さんの中でも、勉強もスポーツも出来なくて劣等感の固まりだった子が、ギターに出会ってメキメキ上達していき、それに伴い劣等感から抜け出せたというケースもありました。

これは価値観が広がった事によって、劣等感を感じにくくなったと考える事が出来ます。

小さな世界でしか生きていないと劣等感は感じやすくなります。幅広い世界に顔を出し、多くの価値観を知ってみる事は劣等感から抜け出すための有効な方法です。

Ⅱ.自尊心を高める工夫を

自尊心というのは「無条件で自分の事を大切だと思える気持ち」の事です。

本来、私たちは皆自尊心を持っているのですが、小さい頃に自分を大切だと思えるような体験が少なかったり、自分を大切だと思えないような大きな経験(いじめなど)があると自尊心が十分に形成されない事があります。

この場合、自尊心を育ててあげる事が大切です。今から過去に戻る事はできませんが、成長してからでも自尊心を育てる事は出来ます。

自尊心を育てるために一番大切なのは「無条件の愛情」だとお話しました。子供は皆、親からの無償の愛情を注がれる事で「自分は大切な存在なんだ」と感じていくのです。

「無条件の愛情」を得るためには、まずは自分自身が「無条件の愛情」を持って自分自身に、そして他者に接する事が大切です。

毎日の生活の中で自分を大切にする事、そして家族や友人、恋人などに対して「あなたは大切な人です」という気持ちを持って接する事でそれは自分にも返ってきます。またボランティアなどの無条件の奉仕をする事も有用でしょう。

このような生活を続けていけば、少しずつですが自尊心は育っていくでしょう。

Ⅲ.損得で人と付き合わないよう意識する

前項の話に共通しますが、損得ばかりで人と付き合ってしまう事はお勧めできません。

損得で付き合うという事は、「条件付きの愛情」を持って付き合うという事です。

「この人と仲良くしていると良いお得意先を紹介してもらえるから」
「この人は偉い人の息子だから」

もちろん社会の中では損得で付き合わないといけない事もあります。そのすべてを排除する必要はありませんが、損得「だけ」で付き合ってしまう事は良くないという事です。

損得ばかりで付き合っていけば、当然相手も損得であなたと付き合うようになります。つまり「無条件の愛情」ではなく「条件付きの愛情」しかもらえないという事です。

条件付きの愛情は、その条件が崩れれば簡単に崩れてしまう自尊心しか形成されません。これは本物の自尊心とは言えません。

Ⅳ.自虐的な発言を避ける

劣等感を持つ方は、しばしば自虐的な発言を自らしてしまう事があります。

「自分は〇〇が全然できなくてさ・・・」
「自分は頭が本当に悪いんだよね」

本当にただの冗談であったり、深い意味なく発しているのなら別に問題ないのですが、実際に劣等感を感じている事を自虐的に発しているのでしたらこれはやめるべきです。

そもそもなぜ、自虐的な発言を自らしてしまうのでしょうか。

これは「防衛」だと考えられます。自分から先に自分をバカにしてしまう事で、一番恐れている他者からの「あなたは劣っている」という評価が下されるのを防いでいるのです。

しかし、普段からこのような言葉を発していると、「自分は劣っているのだ」という意識(劣等感)を更に強めてしまいます。

Ⅴ.小さな成功体験

劣等感は、小さな成功体験を積む事で少しずつ小さくなっていきます。

小さな成功体験は自分の中の「自信」を高めます。自信が高まれば不安が小さくなります。

劣等感は心配症や神経質な方といった不安の強い方に生じやすい傾向があります。これは劣等感は「他者からの評価に対する恐れ」という不安感情から生じているからです。

大きな事を成功させる必要はありません。

毎日の生活の中で小さな目標を作って、それを着実に達成させていきましょう。小さな成功体験を積み重ねる事で少しずつ自分の中に自信が備わってきます。

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