「助けてほしい」と周りに言える人になろう

助けてほしいと言える人

ストレスを抱え込み過ぎてこころの病気を発症してしまった方々の診察をさせて頂くと、いつも感じる事があります。

それは「皆さん、極限まで一人で我慢しすぎです!」という事です。

つらい事や苦しい事があっても、皆さんなかなか周囲に助けを求めません。「自分で何とかしよう」「人に迷惑をかけちゃいけない」と極限まで自分一人で抱え込み、耐えて耐えて、いよいよどうにもならなくなってしまって精神科や心療内科に連れてこられた、という方が多いのです。

「ちょっときつくなってきたな」
「なんか少し調子が悪いな」

このような状態の時に「誰か手伝って」「助けて」「相談に乗って」と周囲に言う事が出来ればこんなに苦しまなくても済んだのに、と感じずにはいられません。

我慢する事や耐える事は悪い事ではありません。「人に迷惑をかけないように」「自分で責任持ってやらないと」という相手への配慮や責任感は素晴らしいものです。

しかし1人で何でも出来る人なんていません。どんな人でも多少なりとも誰かの助けを借りて生きているのです。周囲に助けてもらう事は誰もが行っている普通の事であり、生きていくために必要不可欠な事であると言っても言い過ぎではないでしょう。

「つい自分で抱え込んでしまう」「周囲に相談するのが苦手だ」という方は、周囲に助けを求める能力をもう少し育ててあげてもいいかもしれません。

今日は「助けてほしい」と周囲に助けを求める事の大切さと、周囲に助けを求める事が苦手な方はどのように工夫していけばいいのかを考えていきます。

スポンサーリンク

1.なぜ助けてほしいと言えないのか

精神科には、過剰なストレスが原因でこころが疲弊してしまった方もいらっしゃいます。

このような方々のお話を聞かせて頂くと、皆さん責任感や他者を気遣う気持ちが強く、何でも一人でストレスを抱え込み過ぎてしまっています。

少しでも周囲に「ちょっと手伝ってほしいんだけど」「相談に乗ってほしい」と助けを求める事が出来ていればここまで悪化しなかったのではないかと感じるケースもたくさんあります。

「もっと早く誰かに相談できるようにしましょう」とお話すると、本人も「それは分かっている」という答えが返ってきます。しかし「周囲に助けを求める事が出来なかった」とも答えます。

では、なぜ周囲に「助けて」という事が出来なかったのでしょうか。

このような方々に共通する傾向として、

  • 責任感が強い
  • 周囲に気を遣う

という性格傾向が挙げられます。

これはうつ病に多い性格傾向と言われている「メランコリー親和型性格傾向」にも当てはまりまる性格傾向です。

このような方は「人に迷惑をかけてはいけない」という気持ちが強いため、ストレスとなりそうな原因(ストレッサー)がたくさんあってもすべて自分一人で抱え込もうとしてしまうのです。

そして、このような方々の考え方をより深く見ていくと「人に助けを求める」という行為を「人に迷惑をかける行為」「責任感のない情けない行為」と考えている事があります。

このような考え方を持っているため、潰れそうなストレスに晒されている状況でも誰にも相談しません。

そして無理なストレスを抱え込み続けてしまい、ある日こころのエネルギーが空っぽになってしまい、こころの病気を発症してしまうのです。

つまり、「周囲に助けを求める事」をどこか「迷惑な事」「情けない事」「恥ずかしい事」だと思ってしまっている考え方を改める必要があるのです。

中には、「自分は助けを求める事を迷惑だとか情けない事とかは思っていないけど、相談できる人が周囲にいなかった」と答える方もいます。しかしこれも根本を見ていけばやはり助けを求めることを躊躇しているのです。

本当に助けを求めるのであれば、国や民間の相談窓口だってあるし、精神科や心療内科の病院・クリニックだってあります。

でもそういったところに相談しないのは、「こんな事で相談などしたら相手は迷惑だろう」「関係ない人に相談するなんて責任感がない」という気持ちがやはり背景にあるのです。

人に迷惑をかけてはいけないという気持ちから、相談できる対象を自ら狭めてしまい、その結果として「誰も相談する人がいない」となっている事がほとんどです。

周囲に助けを求める事が出来ないという方は、自分の中にある「人に助けを求めるのは悪い事」という認識を少しずつ変えていく必要があります。

2.たくさんの助けがあればこころは安定する

一方でこころの病気になりにくい方や「ストレスに強い」と言われるような方は、「助けてほしい」「手伝って」「ちょっと聞いてよ」と必要な時はスムーズに周囲に助けを求めることができます。

あなたの周囲にもストレスとは縁がなさそうな、いつも元気な人がいませんか?

もちろん、このような人にだってストレスはあるのです。しかし周囲に上手に助けを求める事で、ストレスをうまく対処できているのです。

よく観察してみると、ストレスに強い人の多くは人間関係が豊かである事に気付くはずです。多くの人と協力して上手に仕事を助け合っていたり、周囲に相談に乗ってもらったり反対に相談に乗ったりしていて、それによりストレスをうまく受け流し、ストレスに潰されずに済んでいるのです。

メンタルが強い人というと、その人自体の精神力が強靭、つまりストレスという攻撃に対する「防御力が強い」人を想像するかもしれませんが、そうではありません。

精神のタフさというのは人によって個人差はあるものの、皆そう大きくは変わりません。どんなにメンタルが強そうな人であっても、周囲の支えがない孤独な環境で大きなストレスを受ければ、たちまち精神状態は不安定になります。

メンタルが強い人というのはストレスを防御する力が強いのではなく、ストレスという攻撃を上手に受け流す事が出来る「回避力が高い」人なのです。

そしてストレスを受け流すために非常に有効な方法の一つが「人に助けを求める」という事なのです。

大きなストレスを受けそうになった時、周囲に「手伝ってくれないか」と言える事でストレスを上手に分散したり、「ちょっと話を聞いて欲しい」と言える事でストレスを上手に吐き出せるとストレスに押し潰されにくくなります。

誤解してはいけませんが、人に助けを求めるというのは「自分が受けたストレスを相手に押し付ける」という事ではありません。

ストレスは多くの人間で分け合った方が小さくなるという特徴があります。1人では「10」だと感じるストレスを2人で分けるとそれぞれ「5」のストレスになるはずですが、実際は「3」や「4」くらいに軽減されます。

一人ではとても耐えられなさそうな事でも、信頼できる人と何人かで取り組めば「何とかやっていけそう」と感じられるようになったことはありませんか?

「1人ではない」「仲間がいる」という安心感が加わった分だけストレスが軽減されるのです。

つまりストレスは一人で抱え込むのではなく、多くの人で一緒に立ち向かっていった方が良いのです。

また私たちは「誰かが自分の味方をしてくれる」「誰かが自分の事を分かってくれる」と感じるだけで安心感が得られ、ストレスが和らぎます。人間にとっての最大の苦痛は「孤独」だと言われていますが、反対に言えば私たちにとって最大の安心要素は「仲間がいる事」なのです。

周囲に助けを求められるという事は、

  • 大きいストレスを効率よく分散できる
  • 安心感を得る事でストレスを和らげる事ができる
  • 相談できる事でストレスを和らげる事ができる

といった良い効果が期待できるのです。

スポンサーリンク

3.助けてほしいと言えるようになるためには

安定したこころを手に入れるためには、必要な時に周囲に助けを求める事が出来るようになる必要があるとお話しました。

では、ストレスに押し潰される前に「助けて」と周囲に言えるようになるためには、どのような工夫をすればいいのでしょうか。

Ⅰ.誰かを助けると自分も助けを求めやすくなる

責任感が強かったり人に迷惑をかける事を嫌う方というのは、悪い言い方をしてしまうと「負い目を避けたがる」という性格だとも言えます。

他の人に借りを作りたくなかったり、助けを請うと自分の立場が弱くなってしまうという気持ちもあるのかもしれません。

また「助けを借りる事」「助けを求める事」を負い目(自分にとって情けない事)だと考えているところがあるのではないでしょうか。

まずはこの認識を改める必要があります。

そもそも自分一人だけで何でも出来る人などいません。誰もが他の誰かに助けてもらって生きています。

助けを求めるという事は生きていく中で自然な行為なのです。

「人に助けを求めるなんて無責任だ」
「自分一人でやらないなんて情けない」

まずはこのような考え方を改め、「人は一人では生きていけないのだから、助けたり助けられたりするものだ」と考えるようにしていきましょう。

そのためにはまずは自分が誰か困っている人を助けてあげることです。どんなに小さなことでもいいので、困っている人の力になることを心がけましょう。

困っている人の事情を聞き、助けてあげるという経験を重ねることで、「助けを求めることは迷惑なことではない」「助けを求めることは情けない事ではない」ということが経験として自分の考えに身に付いていきます。

また、自分に余裕がある時は積極的に周囲を助けることによって、助けてもらう事に負い目を感じなくなり、周囲に助けも求めやすくなるのです。

Ⅱ.人の意見に耳を傾ける

「助けてほしい」と言えない方は、自分のやり方にこだわりすぎていたり、周囲の意見に耳を傾けず自分のやり方に固執してしまうような方もいらっしゃいます。

悪く言ってしまうと他者を信用できないために周囲に助けを求められないのです。

物事がうまく行っているうちはそれでもいいのかもしれませんが、自分ひとりでストレスが抱えきれなくなった時、自分のやり方に固執してしまっていると周囲に助けを求めにくくなります。

周囲の助けを上手に得られる人というのは他者の意見に素直に耳を傾ける事が出来ます。

あなたに何か意見を言うの多く人は、あなたを困らせたり苦しめたりするために意見を言っているわけではありません。あなたを助けようと思っていることがほとんどです。それに耳を傾けないということは、せっかくの「助けようか?」という周囲の申し出を自ら断ってしまっていることになります。

周りの意見に耳を傾ける習慣を持つと、周囲も「手伝おうか」と助けやすくなりますし、自分も周囲に相談しやすくなります。

Ⅲ.助けを求める事は弱い事ではない

助けてもらう事を、「相手より下の立場になってしまう」「プライドが傷付く」と弱い事・情けない事だと考えてしまう方もいらっしゃいます。

これは全くのあやまりです。

確かにいつも助けてもらってばかりで自分では何の努力もしないようであれば、これは問題でしょう。しかし自分一人で何でも出来る人なんていませんから、助けたり助けられたりというのは本来誰もが日々行っている行為です。

助けてもらったら相手に感謝する必要はありますが、だからといって自分が弱い・立場が下になったという事にはなりません。

また「助けてやったんだから、俺の方が立場が上だ」と考えるような人もほとんどいません。

助ける・助けられるというのは、日常的な行為であり、そこに上下関係などないのです。

Ⅳ.相手の立場で見てみよう

「助けを求める事は悪い事」
「助けを求める事は恥ずかしい事」

このように考えてしまう方は、反対の視点から助けを求める行為を見る習慣をつける事をお勧めします。

もし、あなたにとってとても大切な人がストレスで押しつぶされそうになっていたとして、その人があなたに相談せずに一人で潰れてしまったとしたら、あなたはどう思うでしょうか。

「何で相談してくれなかったんだ」
「力になってあげたかった」

と思うはずです。

間違っても、

「助けを求められていたら迷惑だったから良かった」
「助けを求めるなんて恥ずかしい事をしなくて正解だ」

などとは思わないはずです。

本当に助けが必要な状況なのであれば、助けを求められた事に対して「悪い」「情けない」など否定的な感情を持たれる事など、実際はほとんどないのです。

このように相手側の立場から見てみると、助けを求められないというのは、相手を気遣いすぎて、相手への迷惑を過剰に考えてしまっているだけなのだということが分かるはずです。

相手の立場に立って考えてみると、助けを求める事が別に恥ずかしい事でもないし、悪い事でもない事が分かります。

スポンサーリンク


こちらの記事も是非ご覧下さい