友達が少ないのは良くない事なのか

友達が少ない

一般的に友達の数は多い方が良いと考えられています。そして友達が少ないと「恥ずかしい」「かわいそう」と考えられてしまう傾向があります。

実際、「友達の数が少ない」という事に対して恥ずかしさを持っていたり劣等感を感じている方は少なくありません。「自分は友達が少ないんですが、どうすれば増やせるでしょうか」という悩みを診察の中で相談される事もあります。

しかし友達が少ないという事は本当にそんなに良くない事なのでしょうか?そもそも、なぜ友達はたくさん作る必要があるのでしょうか。

今日のコラムでは友達が私たちにもたらしてくれるものは何なのか、そしてそれは本当に友達の「数」によって決まるものなのかを考えてみましょう。

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1.友達がもたらしてくれる効果とは

一般的に友達は「多い方が良い」と考えられています。

幼稚園や小学校に入学したら、まず先生から「友達をたくさん作りましょう」と言われます。実際に友達がたくさんいる人は集団の中でも人気者で常に人に囲まれており、これを見れば「友達は多い方が良い」という考えが全く理解できない事はありません。

しかし、本当に友達は多い方が良いのでしょうか。友達が少ない事は問題なのでしょうか。

そしてそうなのであれば、なぜ多い方が良くて少ないと良くないのでしょうか。

この事を知るためには、そもそも私たちは友達がいる事でどのような恩恵を受けているのかを考えてみなくてはいけません。そしてその恩恵が本当に友達の「数」に応じて増えていくものであるのか、友達の「数」が少ないと得られないものであるのかを見ていく必要があります。

まずは友達が私たちにもたらしてくれるものを見ていきましょう。同時に、それは友達の「数」が多くないと本当に得られないものなのかも考えてみます。

Ⅰ.安心感

特に学生など若い方は、この「安心感」を得るために友達を作りたいと考えます。

みなさんの中にも、「友達の数が少ないと不安」「友達がたくさん欲しい」という方がいらっしゃると思いますが、友達をたくさん作りたいと考える一番の理由は、この安心感を得る事にあります。

私たち人間は、一人では生きていけません。多くの人に支えられながらでないと生きていく事は出来ず、そのため私たちは本能的に集団に身を置く事で安心を感じられるようにプログラムされています。

特に集団での生活が基本となる学生は、友達が少ないと集団から外れてしまうために孤独感を感じる事になります。これは苦痛となるため、「友達を多く作らなければ」と考えてしまうのです。反対に、個人個人で行動する事の多い専門職などでは、一人で行動する事が普通であるため、「友達を多く作らなくては!」とそこまで敏感になることは少なくなります。

実際「友達が少ない」と悩んでいる方の多くは学生です。そしてその理由を詳しく聞いてみると、

「昼休みに一人でご飯を食べるのが恥ずかしい」
「グループ分けの時に余ってしまうのが恥ずかしい」

といった「孤独」が苦痛だからという理由になります。また自分が孤独であると周囲から認識されてしまうによって「周囲からバカにされてしまうのではないか」という不安もあるようです。

確かに友達が多いと、このような孤独感から逃れる事が出来ます。また自分が集団に属しているという安心感を得る事ができます。

しかしこの「安心感」は決して多くの友達がいないと得られないものではありません。確かに、「〇〇人の友達がいる」と具体的に数字として見えると、自分が多くの友達に囲まれている事を実感できるため安心感を得やすいのですが、ただ孤独感を紛らわすための付き合いであったり、「友達がいないヤツだと思われるのはイヤだ」という理由からの付き合いであれば、そこに本当の安心感はないかもしれません。

反対に例え友達が1人だったとしても、お互いがお互いを尊重できるような関係であれば、そこから安心感を得る事は出来るでしょう。

Ⅱ.気持ちを共有できる

友達がいる事のメリットとして、

  • 楽しい事
  • 辛い事

などの気持ちを共有できるという事があります。

私たち人間は、「自分の気持ちを分かってもらいたい」という気持ちを誰もが持っています。

そして自分の気持ちを理解してもらったり共感してもらえた時、安らぎを得る事が出来ます。

私たち精神科医は、患者さんのお話に一生懸命耳を傾け、患者さんがどのような気持ちで過ごしてきたのかを精一杯理解する事に努めます。それは患者さんの気持ちを出来る限り理解する事が、患者さんに安らぎを与える事になるからです。

みなさんも、自分の気持ちを理解してもらえた時、とても気持ちが安らいだり満足感を得られた経験はありませんか?

「一生懸命努力して試験で良い点数を取れた」という喜び
「一生懸命頑張ったんだけど、失敗してしまった」という悲しみ

このような感情を一人で感じるより、

「それはすごいね!頑張ったよね」と言ってもらえたり「それはつらかったね。」と共感してもらえた方が、気持ちは安らぎを得られるものです。

そして、これをしてくれるのが友達です。友達は、自分の感情を理解・共感してくれます。それによってより満足感を得られたり、つらい気持ちが和らいだりという効果が期待できます。

ここから、友達がいるという事は安らぎやこころの安定を得るために大切なものだという事が分かります。しかしこの「気持ちの共有」も友達の数が多くないと出来ない事ではありません。友達の数が少なかったとしても、ちゃんと自分の気持ちに向き合ってくれる友達が1人でもいれば得られる効果になります。反対にいくら友達の数が多くても、表面上の付き合いばかりで自分の気持ちを共有してくれる人がいない場合は、この効果を得る事は出来ないでしょう。

Ⅲ.多くの価値観を学べる

私たち人間は、それぞれ育った背景は異なります。そのため人は皆、異なった価値観を持って生きています。

自分の価値観しか知らないよりも、多くの人の価値観を知った方が人生は有意義に過ごせます。友達の、自分とは異なった価値観を知るという事は、「こういう考え方もあるんだ」「こんな世界もあるんだ」といった新しい価値観を教えてくれ、これは人生により深みを与えてくれます。

有意義な人生を送るために、多くの価値観に触れる事は大切です。自分や自分の身内としか接していないと、自分に近い価値観にしか触れる事ができません。

このような「多くの価値観を知れる」という効果は、確かに友達の数が多ければ多いほど得られると言えます。ただし相手の価値観を知るためには、相手と深く接さなければいけません。表面上の付き合いでは、その人の考え方や信念にまで触れる事は出来ません。

という事は、ただ表面的に付き合っている友達では無意味だという事です。しっかりと自分の本音を話せるレベルの友達がいて、初めて得られる効果になります。

2.友達が多い事がもたらす弊害

友達が多い事は悪い事ではありません。しかしそれは、「本物の友達」が多い場合に限られます。

友達の「数」だけを重視している場合、本物の友達ではなく、「見かけ上の友達」ばかりが増えてしまう事があります。そして、こうなると友達が多い事による弊害が出てくる事もあります。

無理した友達作りはどのような弊害生じうるのか、見てみましょう。

Ⅰ.相手の希望する自分を演じてしまう

本物の友達というのは、お互いがお互いを尊重し合えるような関係であり、本音で話せるような関係です。この条件を満たしていない友達は「見かけの友達」に過ぎません。

しかし「仲間はずれになるのがイヤだ」「友達が少ないみじめなヤツと思われたくない」といった消極的な理由で友達を作っている場合、これはお互いを尊重している関係にはなりにくくなります。

このような関係は、「仲間はずれにされたくない」「友達が多い自分でありたい」という理由から作られた友達ですので、相手に嫌われないように自分を演じてしまう可能性があります。人気者でいるために自分を作っていたり、本当の自分を出せないでいるのであれば、見かけ上の友達はいくら多くても孤独を感じてしまうでしょう。

芸能人や人気歌手などの方は大勢の人に囲まれていますが、仕事上少なからず自分を演じているところがあります。そう考えるとこのような職業の方々は一見煌びやかな世界に身を置いていますが、常にさみしさや孤独感を感じている方も多いのではないでしょうか。

相手が望むような自分を演じると言う事は、本音で相手と向き合っているとは言えません。相手に合わせて自分を演じている事は精神的なストレスとなり、あなたの心を疲れさせてしまいます。

Ⅱ.自分の時間を持てなくなる

相手に合わせて自分を演じていると、本来は大して興味がない事ややりたくない事であっても、相手に嫌われないためにやるという事が生じます。

人生の中にはある程度このような付き合いが必要な事もありますが、相手に合わせるあまり自分が本来したい事が出来なくなってしまうようでは問題です。

これでは自分の人生が豊かになるどころか、かえって貧しくなってしまうでしょう。

Ⅲ.集団にいる安心感に甘えてしまう

友人が多い事の意外なデメリットとしては、集団に身を置く事が普通になってしまうと、安心感から甘えが出てしまう事が挙げられます。

何かを成し遂げようとした際、友達と協力する事で大きな成果を出せる事ももちろんありますが、複数人でやった場合、個人個人の頑張りというのはどうしても甘えが出ます。

反対に一人で成し遂げようとした際は、自分がやらなければ始まらないわけですから、一生懸命頑張ります。

学生さんであれば、仲の良いみんなで勉強会をする事があるでしょう。これは確かに勉強した気持ちになりますが、勉強は結局は自分がいかに頑張るかにかかっているところが多いため、ただみんなと一緒に勉強しただけであれば、満足感のみで結果が伴わない可能性が出てきます。

社会的な成功者と言われている方は、孤独に耐えて努力できる性格の方が多くいらっしゃいます。孤独というのは自分が成長できる状況であり、これはこれで大切なものです。もちろん孤独が続ければ心は不安定になってしまいますが、一人の時間も大切にし、友達との時間も大切にするというバランスを取る事が本当の意味での豊かな人生を送るために大切な事になります。

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3.友達は数ではなく質が大切

ここまで見てきて、「友達が多い方が良い」「友達が少ない事は良くない」という考え方は本当に正しいのかという問いに対する答えが見えてきたのではないでしょうか。

友達は確かに多くて悪いことはありません。しかしそれはあくまでも、「本物の友達」に限った話です。

本当の友達とは、「お互いにお互いの価値を尊重し、本音で話し合えるような相手」の事です。

  • 仲間はずれが怖いからという消極的な理由で付き合っている相手
  • 友達の数を増やすために表面的にのみ付き合っている相手

というのは本当の友達ではありません。これは見かけ上の友達であり、多ければかえってあなたのこころを疲れさせてしまう原因になります。

見かけ上の友達が100人いようが1000人いようが、本当の友達1人にかないません。

私たちはつい、目に見える「数」で友達を判断してしまいがちです。しかし本当に大切なのは数ではありません。

見かけ上の友達100人に囲まれて、一見楽しそうにしているけど、実際は相手に嫌われないように常に気を遣い、相手の都合に合わせてばかりいる人は本当に幸せでしょうか?心許せる友人は1人しかいないけど、その友人とは常にお互いを尊重できていて自分の気持ちをなんでも話せる、という人は本当にみじめでしょうか?

例え一人であっても、本当の友達がいるのであれば、それで十分です。もちろん友達の数が少ないと孤独感を感じることもあるかもしれません。しかし孤独感は悪いものではありません。適度な孤独感は私たち人間を成長させてくれるからです。また見かけ上の友達の数だけを増やしても、その孤独感は消える事はありません。

見かけ上の友達を作る事に焦るのではなく、時間をかけてお互いを尊重しあえるような「本物の友達」を少しずつ少しずつ増やしていきましょう。

4.友達が少ない事が恥ずかしいという考えはおかしい

私たちは友達を「数」で評価してしまいます。そしてその「数」も、「連絡先を知っている人の数」「SNSのフォロワー数」といった目に見えやすい数字で評価してしまいがちです。

ここまで読んできた皆さまは、これはおかしい考え方だという事が分かってきたと思います。

友達という関係は、ただSNSでつながっている関係や、学校でよくつるんでいるような関係の事ではありません。友達というのは、「お互いがお互いの価値を尊重し、困った時には助け合える関係」の事です。

いくらSNSで1000人とつながっていても、あなたが本当に困っている時に手を差し伸べてくれる人が0人であれば、その人にとっての本当の友達は1000人ではなく、0人です。

反対にもし友達が1人しかいなかったとしても、その友達はあなたの価値を尊重してくれていて、困った時には手を差し伸べてくれるような関係であった場合、あなたは大切な友達がいて、豊かな人生を送れるという事です。

この2つの例では、SNS上に1000人もの友達がいる人はすごいと評価され、友達が1人しかいない人は恥ずかしいという評価をされがちです。しかし実際は逆で、たった一人であっても「本当の友達」がいれば、それで十分なのです。

もちろん本当の友達が2人、3人、10人、20人と多ければそれは多いに越した事はありませんが、通常この本当の友達というのは10人もいれば多い方でしょう。

友達がもしゼロなのであれば、それは確かに精神衛生上もあまり良い事ではありません。しかし例え数は少なかったとしても、あなたに「本当の友達」がいるのであれば、それで十分なのです。友達の数を気にする必要など、全くありません。

ただ見かけ上の友達の数を増やす事などせず、その1人の「本当の」友達を大切にしていきましょう。

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