悩みには、悩む意味のある悩みと悩む意味のない悩みがある

悩み

人は誰でも、悩むことがあります。

どんなに自信に満ち溢れているように見えても、悩みが全くないという人はいません。

悩むという行為は辛いものではありますが、自分の人生をより良いものにするために大切な行為でもあります。特に重要な事であればあるほど、安易に選択せず、しっかりと悩み抜き、自分が納得できる答えを出すことは非常に意味のあることでしょう。

しかし一方で、延々と悩み過ぎてしまうと、心身に不調をきたしてしまうこともあります。

精神科医をしていると、悩み過ぎている事によって心身が疲弊してしまった方をよく見かけます。中には答えが出ないような事に対して延々と悩み続けてしまい、こころを壊してしまう方もいらっしゃいます。このような方々を診ていると、何かを悩む時は、それが「悩む意味のある悩み事なのか」それとも「悩む意味のない悩み事なのか」を見分ける事が大切だという事に気付きます。

悩む意味のある悩み事をしっかりと悩み抜く事は、人生をより豊かなものにするために大切な行為です。しかし悩む意味のない悩みに対して延々を悩み続けることは、ただ心身を疲弊させているだけになってしまいます。この場合は、それを悩むことには意味がないのだという事に気付かないといけません。

今日は、悩み事には悩む意味のある悩み事と、悩む意味のない悩み事があるという事をお話しさせて下さい。

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1.悩むとはどういう事なのか?

そもそも悩むというのは、どういう事なのでしょうか。

悩むというのは、何か困っていることがあって、それに対する解決策を探す行為になります。

生きていれば、悩むべき事はたくさんあります。悩むのは、自分がより良い人生を送りたいと考えている証拠であり、大切な行為です。しかし一方で悩んでいる間というのは精神的に苦しいものです。

明らかに解決法が分かっているような事であれば、悩むことなどありません。悩むのは、どのような解決法が良いのか一見すると分からないからであって、それでも解決法を自分なりに何とか探さなくてはいけないためです。そのため、悩むという行為は当然苦しいものとなります。

2.悩む意味のある悩み事と意味のない悩み事の違いとは?

では次に「悩む意味のある悩み事」と「悩む意味のない悩み事」という2つに悩みについてお話します。両者を見分けることはメンタルヘルス上も大切な事です。

悩む意味のある悩み事というのは、

  • 現状を正しく認識した上で解決策を探しているような悩み事
  • 自分の努力によってある程度解決できる悩み事

です。このような悩み事は、どのような解決策が一番いいのかを一生懸命考え抜く価値があります。

では悩む意味のない悩み事というのは一体どんな事を指しているのでしょうか。これは先ほどとは反対の悩み事で、

  • 現状に対する誤った認識の元で、解決策を探しているような悩み事
  • 自分だけの努力ではどうにもならない悩み事

になります。

Ⅰ.現状に対する誤った認識の元で悩んでいる場合

例えば、今月の生活費があと1万円しか残っていない事に気付いたら、「あと1カ月、どうやって乗り切ろう・・・」と悩むのは普通でしょう。一般的な水準の生活をするとなると、1カ月1万円ではかなり困難です。となれば、これは現状を正しく認識した上で悩んでいる悩み事だと言えます。

このような悩み事の場合は、悩む意味があります。むしろ必死で考え抜かないといけません。この場合も、親から仕送りをしてもらうべきか、友人に頼んでお金を借りるべきか、日払いのアルバイトでも始めるべきか・・・。一生懸命考えて、自分にとって最善の解決策を一生懸命探すべきでしょう。

しかし、例えば今月の生活費が30万円もあるのに、「これじゃ1カ月も暮らしていけない。あと1カ月、どうやって乗り切ろう・・・」と悩んでいるのだとしたら、これは答えのでない悩み事かもしれません。一般的な水準の生活であれば、30万円は十分すぎる額です。なのに「お金が足りない」と悩んでいるのです。これは「お金が十分にある」という現状を正しく認識しておらず、誤った認識のもとで解決策を探そうとしている事になります。

認識が間違っているのに、解決策を見つけようとしても見つかるわけがありません。例えば親に10万円仕送りしてもらって40万円になっても、現状の認識が誤っているわけですから「まだお金が足りない」と考えてしまうかもしれません。このような悩み事の場合は、その悩みに対する適切な解決策がありません。そのため、延々と悩み続けることになってしまうのです。

Ⅱ.自分の力ではどうにもならない事を悩んでいる場合

例えば、自分の性格の「すぐに諦めてしまう」というところが嫌いで悩んでいるとしましょう。「どうやったら我慢強くなれるのか」「根気強い人はどんな事を考えているのか」などを必死に悩み、自分の性格を変えていこうとするのは、意味のある悩み事だといえます。悩んでいる時は苦しいでしょうが、悩んで得た答えは今後の人生においてきっと役立つはずです。

しかし、例えば友人の性格が嫌いで「友人の性格を治したい」と悩んでいるのであれば、その事に悩み過ぎる事は無駄になってしまうでしょう。なぜならば、私たちは自分の事は自分の努力で変えられるけども、他者の事を自分の努力だけで変える事は出来ないからです。

もちろん、友人にアドバイスをしたり、「ここを治してほしい」と相談したりすることに全く意味がないわけではありません。しかし他者の事を自分の力だけで変えるのには限界があるのも事実です。

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3.悩んでいる時の精神状態は不安定である

悩み事の中には、悩む意味のない悩み事もあるという事をお話しました。

しかし明らかに悩む事が無駄な事であれば、自分でもそのことに気付きそうなものです。現状を誤って認識して悩んだり、自分の力では変えられないものを変えようと悩んだりという事など実際にあるのでしょうか。「そんな事で悩むはずないよ」と思われた方もいらっしゃるかもしれません。

しかしそれがそうとも言えないのです。

悩んでいる時というのは誰もが現状を誤って認識してしまう危険があるのです。

悩んでいる時というのは困っている時ですから、「不安」が強くなっています。このような精神状態は、安定した精神状態とは言えません。

「早く何とかしなくては・・・」と焦っているかもしれません。
「このままだと大変なことになる・・・」と不安・恐怖を感じているかもしれません。
「もうダメかもしれない・・・」と絶望的になっているかもしれません。

このような精神状態の時というのは、冷静さを保てないことも多いものです。自分では冷静になっているつもりでも、実はかなり不安定な精神状態になっているということは珍しくありません。

このような冷静さを欠いた精神状態では、普段では考えられないような偏った現状の認識をしてしまう事があります。

先ほど、30万円もあるのに「これでは1カ月も生活できない・・・」と誤った現状の認識をしている例を挙げました。このような認識の間違いなんて自分は絶対にしないと思うでしょう。

しかし、このような現状の認知のゆがみは「貧困妄想」と呼ばれ、うつ病患者さんでよく認められる症状になります。うつ病のように精神状態が不安定になってしまうと、普通であれば問題のない状況であっても「自分はもうダメだ」と考えてしまいます。このように精神状態が悪化していると、現状を正しく認識できなくなる事があるのです。

貧困妄想までいかなくても、みなさんも焦ったりパニックになってしまった時に、現状の問題を過大に評価しすぎてしまった経験はないでしょうか。後になって考えれば「あんなに怖がる必要なかったのに・・・」というものであっても、困っている時というのは現状の認識を誤りやすいのです。

悩んでいる時というのは、精神状態が不安定であるため、現状を正しく判断できず、本来であれば悩む意味のない悩み事であっても、延々と悩み続けてしまう事があるのです。

4.悩む意味のある悩みとない悩みの見分け方

ある事に対して悩む時、その悩み事は「悩む意味(価値)があるだろうか」という事を見分ける必要があります。

なぜならば悩む価値のない悩み事に対して延々と悩み続けることは、ただ心身を苦しめるだけで得るものがないからです。

では悩む意味のある悩み事なのか、それとも悩む意味のない悩み事なのかはどのようにして見分ければ良いのでしょうか。

Ⅰ.自分では気づかない事も多い

その悩み事が

  • 現状を正しく認識した上での悩みなのか
  • 自分の力で解決できる問題なのか

というのは、不安定な精神状態の中では正しく判断できない事もあります。

悩んでいる時は、現状の認識が歪んでしまっていることは少なくありませんが、自分ではそれになかなか気付けません。

そのため、「悩んでいる時は、気持ちが不安定になっているから、悩む意味のない悩み事で悩んでしまっていることもある」という認識を常に持っておくことが大切です。また、ある程度悩んでも苦しいばかりで答えが一向に出ない場合、その悩みに本当に悩む価値があるのかを見直すという視点も持てるとなお良いでしょう。

Ⅱ.人に相談する事が大切

自分の悩みが悩む意味のあるものなのか、そうではないのか。それを確認する確実な手段は、他者に悩みを相談してみることです。

他者は自分と違い、客観的な視点で悩みを判断できます。

自分では悩み意味があるのかないのかわからないと感じる悩みであっても、他者に相談すれば、その悩みを悩み意味があるのかはすぐに分かります。

Ⅲ.人の意見を聞く姿勢を忘れない

他者に相談して「ちょっとそれは極端に考えすぎかもよ」と指摘されても、それを本人が受け入れなければ悩む意味のないことを悩み続ける悪循環からは解放されません。

自分以外の考えというのは受け入れずらいものですが、他者からの視点も取り入れる柔軟さを持っておくことは大切です。

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