断る勇気・嫌われる勇気を持つと不安は小さくなっていく

私は日々、こころの不調で悩む患者さんの診察をさせて頂いています。

診察では日常生活の工夫や考え方の修正の提案、場合によってはお薬なども提案しながらこころの健康を取り戻すお手伝いをさせて頂いております。

しかし、こころの不調の原因というのは日常生活の中から生じているものが多く、それを診察室の中だけで治すというのはなかなか難しいというところがあります。診察室内の治療だけでなく、診察室外の日常生活での患者さん自身の意識も大切になってくるのです。

もちろん患者さん自身もそれを理解している方は多く、みなさん日常において不安を軽減させるために様々な工夫をされています。時には患者さんから「このようなことをしたら不安が和らぎました」という報告を頂き、「なるほどなぁ」とこちらが勉強させて頂くこともあります。

こころが不調である方、中でも不安が強い方、心配性で困っている方にぜひ取り入れて頂きたい日常の心がけに、

  • 断る勇気を持つ
  • 嫌われてもいいという勇気を持つ

というものがあります。

これが出来ていない方は非常に多いと感じます。

もちろん自分が引き受けることの出来る程度の頼み事を引き受けることは問題ありません。問題は、今の自分にとっては困難な頼み事までも断れずに引き受けてしまうということです。

強くお願いされるとつい断れない、断ってしまったら嫌われてしまうのではないかと考えてつい引き受けてしまう。このような経験のある方、多いのではないでしょうか。不安が強い方、心配性の方であればあるほど、頼み事を断ることが苦手で、他者から嫌われることを非常に恐れます。

不安が強い方は、周囲の評価を非常に気にしてしまいます。それは「嫌われたのではないか」「怒らせてしまったのではないか」という不安が生じれば、不安の増悪かによってより苦しくなってしまうからです。そのならないために、ちょっと自分には困難そうな頼み事までも引き受けてしまいます。

しかし実は、自分にとって困難な頼みはしっかりと断った方が、総合的に見れば不安は小さくなるのです。

今日は断る勇気を持つこと、嫌われてもいいという勇気を持つことが不安の軽減につながるというお話をさせて頂きます。

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1.不安の強い方・心配性の方が陥る悪循環

不安で苦しんでいる方、心配が尽きない方のお話を聞いていると、自分から不安を高めてしまう行動をしてしまっている事が少なくありません。

本人は不安を軽減させるためにと思ってしている行動なのですが、実はそれは長い目でみると不安を増悪させているのです。

不安が強い方・心配性の方に共通する性格傾向として、

  • 頼み事を断れない
  • 不満があっても強く言えない

ということがあります。

これは相手の頼みを断ってしまったり、強い口調で相手を責めてしまうと、場の雰囲気を悪くしたり、相手に嫌われてしまったりするのではないかという考えがはたらいてしまうからです。

不安が強い方は争いを好まない優しい性格の方がほとんどです。そのため場を乱さないように、つい自分が耐えることでその場を収めようとしてしまうのですね。

もちろん頼み事を引き受けることは悪いことではありません。困っている人の助けになってあげる事は素晴らしいことです。何か頼まれ事をされて、それが自分にとって無理なく引き受けられそうなものであれば、それは引き受けることには何の問題もあります。

今日のお話は、頼み事はなんでも断ろうというお話ではありません。

自分にやれそうなものは引き受けていいのだけど、自分にとって困難な頼み事までも無理して引き受けないで下さい、ということです。そのような頼み事を断ることは悪いことではないし、断った方が不安を増悪させずに済みます。

不安の強い方のほとんどは、驚くほどこれが出来ていません。今の自分にとって困難そうな頼まれ事をされても、「断って雰囲気が悪くなったらどうしよう」「断って相手がイヤな思いをしたらどうしよう」という「不安」から、つい引き受けてしまうのです。

しかし今の自分のキャパシティを超えるような頼み事を引き受けてしまうとなると、その後の自分がどうなるかを考えてみてください。あまり余裕がない状況の中、大きな労力のかかる作業を頼まれたり、自分の能力を超えた業務を頼まれてしまえば、これ自体が大きな不安を生み出すことは明らかです。

確かに頼み事を引き受ければ、その場では「断ったら悪い雰囲気になってしまうかもしれない」「相手にイヤな思いをさせてしまうかもしれない」という不安からは逃れることが出来ます。だからこそ多くの方は、つい引き受けてしまうのでしょう。

しかし安易に引き受けてしまうと、その後は「この作業を期限内にやり切れるだろうか」「この仕事は自分に本当に出来るのだろうか」という不安が生まれます。これは結果としてより大きな不安を抱え込むことになってしまいます。

自分にとってあまりに負担が大きいことを頼まれたとき、実は長期的に見るとそれを断った方が不安は小さくなるのです。

日常から不安の強さに悩んでいる方は、この事に気付くと不安の悪循環から逃れることができるようになります。

2.頼み事を断ってしまうと悪い結果にならないのか

不安に潰されそうになっている方を診ていると、このように自ら不安を増悪させてしまっている方は少なくありません。

この事を指摘すると、多くの方は「確かにそうですね」と納得されます。

しかし「では、これからは無理そうな頼み事は、断るようにしましょう」と提案すると、「でも・・・・」となかなか受け入れられないようです。それは断る事で「相手に嫌われるのではないか」「雰囲気を悪くしてしまうのではないか」という「不安」がやはりぬぐえないからです。

実際、頼み事を断ってしまうと、そのような問題は生じるのでしょうか。

実際の経験としては、このような事を断ったところで、本人が恐れるような事態になる事は極めて稀です。

私は不安に押し潰されそうになっている多くの方にこういったアドバイスをし、実践していただいていますが、それで「友人がいなくなってしまった」とか、「みんなから嫌われてしまった」という結果になったことはありません。

そもそも無理な頼み事を断るというのは、今の自分にとって出来ないことを「出来ない」と正直に答えているだけで、何もおかしい事ではありません。頼む方もほとんどの人は、「もし出来そうであればやって欲しい」という意図で頼んでおり、「あなたの身体を壊してまでやって欲しいんだ」と思っていることはありません。

頼み事を引き受けられる余裕がある状態の中で断っているのとは違うのです。断る際も、ちゃんと「申し訳ないけど、今の自分にはそれを引き受けるだけの余裕がない」と理由を話せば、多くの方は理解してくれます。

「嫌われたらどうしよう」という不安から、困難な頼み事を引き受けてしまう事は、目の前の小さな不安を恐れるあまり、将来的により大きな不安を抱えることになってしまっているという状態なのです。

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3.自分には困難な頼み事を断るとなぜ不安が小さくなるのか

日常で不安をいたずらに増大させないためにも、自分にとって無理そうな頼み事を断るという選択肢はとても重要です。

なぜなばら不安というのは、自分がコントロールできないものであればあるほど増大するからです。

そのため、自分の能力で対応できる((コントロールできる)頼み事を引き受けることは何ら不安の増悪にはなりませんが、自分の能力で対応できない(コントロールできない)頼み事を引き受けてしまうと不安は大きく増大します。

例えば、いきなり目の前で急に人が倒れた時の事を考えてみます。周りにはあなた以外、誰もいません。あなたが助けるしかない状況です。

もしあなたがベテランの救急医であれば落ち着いて冷静に対処できるでしょう。しかしもしあなたが医療とは全く無関係の人であったならば「どうしよう・・・」「自分に助けられるわけがない・・・」とただただ大きな不安を抱えるだけになってしまうでしょう。

これはベテラン医師は急に状態が悪くなった人への対処能力があり、そうでない人にはその能力がないからです。

これと同じように、頼み事の内容が自分にとってあまりに自分の能力を超えたものであった場合、それを引き受けてしまうと、その後は大きな不安を抱え続けることになるという事は理解しておくべきでしょう。

その上でも何とかやれそうな精神的余裕があればもちろん引き受けることも良いでしょうが、そうでない場合は「断る」という選択肢を持つことも大切です。

難しそうな頼み事を依頼されたときは、「自分のこころを傷付けてまでやるべきことなのか」という事をよく考えて、慎重に引き受けるか断るかを考えるようにしましょう。

これが出来るようになると、日常生活でいたずらに不安を増悪させることが少なくなりますよ。

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